78 マザー同伴の狩りは……
ドラゴンマザー同伴の狩りだけど、草原を3日間歩き回っても、獲物1匹出くわさなかった。
そして3日間何も食べずでは、僕たちの腹が持たない。
仕方がないのでマザーともども、僕たちは一度自宅へと戻った。
そしてマザーは、いつものように遠くまで狩へと出かけた。
しかし、マザーが帰ってくるまでは御飯なしの状態だ。
「お腹空いた……」
ユウが地面にグッタリと寝転んでいる。
「ひもじい」
レオンもグッタリ。
「ああ、お腹がすきましたわ」
フレイアもフラフラ。
「……」
リズは無言だが、目が獲物を狙うリザードマンの瞳になっている。
その視線の先にあるのは、ドラドの姿。
『マザー、お腹空いたー』
ドラドも悲しげな鳴き声を上げていた。
「ハグハグ、ハム」
そんな中、1人だけ口をモゴモゴ動かして、何かを食べているミカちゃん。
「ミカちゃん。何それ?」
「蛇を見つけた。ククク、お前らにはやらん……フゲバアッ!」
「皆ー、少ないけれどこれでも食べて、マザーが帰ってくるのを待ってようか」
腹を満たすには小さすぎるけど、目ざといミカちゃんが獲物をしとめていたので、それをみんなで分けることにした。
この野生児、暴れまわるだけでなく、食べ物を見つける勘も鋭いな。
やはり野生の勘なのか、食い意地が張ってるから、食べ物の場所が本能で分かるのか。
そんなことがありつつ、ほどなくしてマザーが獲物を持って帰ってきた。
僕たちはなんとか餓死せずに済んだ。
やっぱり僕らのマザーは偉大だね。
ところで食事をしながら思ったんだけど、
「思ったんだけど、マザーがいたらモンスターも含めて、大抵の生き物が逃げ出すよね」
狩りでは3日間歩き回って、兎サイズの生物にすら出会わなかった。
どこで見つけたのか知らないが、ミカちゃんが蛇を1匹確保したのが、唯一の成果だ。
「確かにマザーがいたら、どんな生き物でも逃げるのが普通ですね……」
ユウも食べながら、すぐ傍にいるマザーを見る。
身長120メートル。
そんな巨大怪物を前にして、近づいていこうとする生き物はいないはずだ。
地球だったら、スマホ片手に写メを撮りたがる人間がいるかもしれないが、踏み潰されたりする危険に気づけない、危機感の抜けてる人だけだろう。
そして僕たちに見つめられたマザーは、
『……あ、あらやーね。お母さんいつも空から獲物に襲い掛かっていたから、全然気づかなかったわ』
と、のたまった。
偉大なマザーだけど、暢気で抜けてるかもしれない。
「なら、次は僕たちだけで狩りに行ってみようか」
「えっ、本気ですか!」
『ええっ、レギュちゃん!それは危なくないかしら、お母さんも一緒じゃないと心配よ』
日本語ではないけど、意思疎通はできている僕たち。
マザーがいると獲物が出てこない。これでは狩りにならないと思ったから提案したのだけど、なぜにユウとマザーは反対するかな?
「狩りの仕方を覚えるためだから、狩る前に肝心の獲物に逃げられるのは困るでしょう」
『それは、そうだけれど……』
「……」
その後、僕とマザーの間で会話を続ける。
そしてユウはそんな僕たちを黙って見つめていた。
マザーと僕はしばらく話し合ったけど、
「おうううっ、メシじゃー。飯を狩るのじゃー」
「狩りー」
僕たちの会話を聞きつけたミカちゃんが変なテンションになり、レオンがそれに調子を合わせる。
「ウフフ、大丈夫ですわお母さま。レギュラスお兄様が一緒なんですから」
とは、フレイア。
リズは無言で槍を構えて、それを振り回していた。
殺る気満々のようだ。
「GYAOOOー!」
ドラドもマザー抜きで大丈夫だと吠える。
『……いい事、危ない場所に行っちゃだめよ。もしあなたたちを襲うような奴がいたら、私を呼ぶのよ。すぐに飛んで行って、そいつを潰してあげるから』
見た目のでかさに比べて、子煩悩で心配性なマザー。
子供たちの熱意に負けて、僕たちだけでの狩りを認めるのだった。
こんなわけで、僕たちはマザー抜きで再度狩りへ向かうことにした。




