76 ミカちゃんの丸焼き
「ノンノンノンー、ノンノン日和ー」
「GYAOOー」
フレイアが即興の歌を歌って、それに合わせてドラドが音頭をとる。
リズは歌に合わせて、尻尾をフリフリしていた。
「あー、何もねぇ。退屈だ。つまらねえー」
一方ミカちゃんは、ドラドの上に寝っ転がりながら乗っかっている。
ドラドが歩くたびに、体が上下に揺れているけど、その上から落ちることなく、器用にゴロゴロ転がっている。
動くドラドの上でゴロゴロできるとか、相変わらずこの子は何でもありだ。
さて、自宅を出てから結構たった。
地平線の彼方に太陽が沈み始めていたので、この日は狩りと言っても、野生生物にもモンスターにも遭遇することがなかった。
さすがに夜になってまで移動するつもりはマザーにもなかったようで、その日は平原の中でキャンプをすることになった。
適当な枯草を集めて、それにフレイアがファイア・ブレスで着火。
本当は木があればいいけど、残念ながら平原には草はあっても木がはえてなかった。
「ミカちゃん、夜の照明よろしく」
「俺は蛍光灯でも、電球でもねぇー」
「テイッ」
抗議するミカちゃんの頭をペシリ。
――ピカッ、ピカカ、ピカンッ
切れかけの蛍光灯みたいに点滅を繰り返した後、ミカちゃんのライト・ブレス(笑)で、周囲が明るく照らし出された。
相変わらず、口以外の顔にあるすべての穴から光を出しているミカちゃん。
オプションで、額とエンジェル・ハイロウも光り輝いていた。
蛍光灯のような白い光が煌々と輝いて眩しい。
真昼のようにとはいかないまでも、焚火で灯す明かりよりも遥かに明るい光が、周囲を照らし出した。
「さすがは蛍光灯ミカちゃん。暗い場所だと便利だね」
「だから俺は蛍光灯じゃねー!」
抗議してくるけど、どう見ても蛍光灯だ。
『キャンプのおともに、ぜひ蛍光灯ミカちゃんを。
今ならレンタル料は無料。ただしミカちゃんの食費は、自腹でお願いします』
なんて宣伝文が、僕の脳内を駆け巡る。
もっともレンタル料はタダでも、腹ペコミカちゃんの食費は凄いことになるだろうね。
あと、本人が物凄く鬱陶しい。
「さすがミカちゃん、明るいですね。でも私だって負けません」
ところで蛍光灯ミカちゃんの明るさに対抗意識を燃えして、フレイアが口からファイア・ブレスを吐きだす。
――ゴオオォォォ
けたたましい音を出して、吐き出される炎。
これ、明らかに火炎放射器だ。
どこの軍隊の武器ですかって勢いがある。
「フレイア、周りの草に燃え移ると大変だから、ほどほどにね」
「分かっていますわ、ユウお兄様」
ユウに注意されたけれど、それでもフレイアは元気よくブレスを吐き続ける。
「ミカちゃん、このままだとフレイアに負けちゃうよ」
「フ、フンガガガー」
フレイアが勢いよくブレスを吐くものだら、ミカちゃんのライト・ブレスの明るさが負け始めてしまう。
ミカちゃんは幼女に似つかわしくない、トイレで踏ん張るような顔と声を出し始める。
でもミカちゃんの場合、そんなふうに気張っても、大して明るくはならないんだよね。
――ブッ
というか気張りすぎて、ガスがでた。
――ブワッ
おまけにそのガスが、フレイアの炎へ引火。
「キャー、ミカちゃん大変!」
「う、うわわわっ、炎が、俺のケツが燃えるー」
炎が盛大に燃え上り、ミカちゃんが着てるズボンに引火してしまった。
「何やってるんだろうねー。まあ、ミカちゃんらしいけどー」
「兄さん、冷静にしてる場合じゃないですって!」
ユウや他の兄弟たちが慌て始めるけど、僕はのんびりとそんな光景を見ている。
だって、ドラゴニュートの僕たちって、あれぐらいの炎なら火傷しないもの。
とはいえ、服が燃えるのはまずいね。
というわけで、
「レオーン」
チョイチョイと手招きして、慌てているレオンを近くに呼ぶ。
「レギュ兄さん、このままだとミカちゃんが丸焼きになっちゃうよ!」
「分かっているよ。だからこうする」
――ベシッ
僕はレオンの頭を叩いた。
直後、レオンの口からウォーター・ブレスが発射される。
水鉄砲……というか大砲ぐらいの勢いがある水弾が発射され、それが燃え上るミカちゃんに激突した。
「ヒベシッ!」
水弾はかなり大きかく、それがぶつかって女の子らしくない悲鳴を上げるミカちゃん。
でもそのおかげで、燃え上っていたミカちゃんの炎は鎮火された。
これで事件は解決。
「ミカちゃん、フレイア。2人とも遊ぶのはいいけど、限度はわきまえるようにね」
「はい、申し訳ありません、レギュラスお兄様」
「俺は悪くねー」
フレイアは素直に反省したけれど、ミカちゃんは相変わらずだ。
まあ、ミカちゃんだからね。
――ギュウーッ
だから肉体言語で教えるため、僕はミカちゃんのほっぺたを思い切りつねっておいた。
「ヒャ、ヒャメロ、レキュレキュー(訳:や、やめろ、レギュレギュー)」
顔をつねられて、そんなことを言うミカちゃんは、見ていてなんだか面白かった。
うむ、実に素晴らしいおもちゃだ。
なお、そんな僕たちを見ているドラゴンマザーは、
『まあまあ、皆仲がいいのね』
と、微笑ましくしていた。
マザーにとって、ミカちゃんが炎で丸焼きになる程度は、微笑ましいのレベルで済むようだ。
さすが超巨大ドラゴン。
微笑ましいで済ませるとは、半端ない。




