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73 豪邸の象徴プール

「イヤッホーイ、蛇ゲッチュー」

 初めての飛行訓練から3日。


 たった3日間空を飛ぶ練習をしただけで、僕も兄弟たちも、かなり自由に飛べるようになった。


 おまけに当初は高所恐怖症を発症していたミカちゃんだけど、今では空から獲物を狙う鷹のように、空から急降下して、地上にいた蛇を捕まえていた。


 なんで蛇なんか捕まえたかって?

 それは決まってるでしょう。


「おやつー」

 そのまま、ガブリと齧りつく。


 信じられないよね、あのウネウネと動き回る気色悪い生物を平気で食べられるんだから。それも生で。

 1年以上ドラゴニュート生活をしているせいで、すっかり野生児と化してしまった。

 もはや蛇ごときを食うことに転生組の僕たち3人は、誰1人抵抗を覚えないほどに……。


 もっともミカちゃんは生まれた段階で、日本人でなく野生のターザンだったけど。



「いいなー、僕も欲しい」

「これは俺が捕まえた蛇だ、誰にもやらんぞ。あ、そうだ、フレイアちゃーん、お胸の為に栄養をつけまちょうねー」

 レオンの事など無視、かわりにフレイアにすり寄っていくミカちゃん。


 完全におっさんだ。

 食べ物で女の子の興味関心を釣ってるよ。


 ここは文明と関係ない野生社会だけど、仮に現代日本だったら、食べ物でなく金銭で若い女の子の関心を買うのと同じだ。


 ……もしかしてミカちゃんの前世ってそういうことして、逆におやじ狩りとかにあってなよね?


「ありそうで怖い……」

「兄さん、何を考えてるのか知りませんが、凄い顔してますよ」


 傍にいるユウに、なぜか呆れられてしまった。





 さて、僕たちが自由に空を飛び回れるようになったので、今まで自宅に籠りきりだった生活が一変した。


 今では断崖絶壁にある自宅の崖下100メートルの地上へ行くことができれば、逆に崖上に飛んでいく事も出来る。

 崖の高さは大体150メートルほど。


 この高さを難なく飛べるのだから、僕たちの飛行能力も大したものだ。



 なお崖下では、ミカちゃんがフレイアにすり寄っていた。

 昔ならミカちゃんが、ここから変態行動に移っていたが、

「ミカちゃん、それはダメですよ」

 胸を揉もうとしても、フレイアがミカちゃんの手の甲をつねりながら断っていた。


(よしよしいいぞ。そのおっさんを甘やかすんじゃない、フレイア)

 妹の成長に僕は心の中でほくそ笑む。


 だが変態親父は、やはり変態親父だった。


「ク、クウッ。お預けプレーを覚えるとは、フレイアも隅に置けない奴だな。ヌフフフフ」

 落ち込むどころか、なんか逆に燃え上っていた。

 つねられた手をいとおし気に撫でていて……キモすぎる。


「ユウ、助けてくれ。あの変態親父をどうやったら矯正できる?」

「……残念ですが、不可能でしょう」

 僕だけでなくユウにも、ミカちゃんの変態行動を抑える方法が思いつかないとは……。


 マジで、シャレにならん。




 そんな崖下の光景が展開する一方で、崖の上ではドラゴン形態のドラドが、のんびり鼻歌を歌っている。


「GYAO、GYAOー、GYAOOOーー」

 当人はあれで、『ゾウさん、ゾウさん、お鼻が長いのねー』と歌っている。


 何とも暢気な光景だけど、その傍ではリズが尻尾を振って、音頭に合わせていた。


 なお2人は泥沼の中でバシャバシャと泳ぎ回って、泥まみれになっている。



 崖の周囲は草木がはえてなくて、荒野が広がっている。

 周囲には僕ら以外には小さな生物しかいないので、土地はあまりまくっていた。

 そこにドラドが土魔法を使って地面を陥没させ、レオンが大量の水を入れて作り上げた泥沼だった。


 リズとドラドは、土の属性竜の性質を持っている。

 だからか、2人は本能的に泥沼で遊んで楽しんでいた。



 ついでに、崖の上に作ったのは泥沼だけじゃない。


「とりゃーっ」

 先ほど蛇を食べさせてもらえなかったレオンが空を飛んで移動し、崖上にあるプールに飛び込む。

 水がバシャリと飛び上がった。


 泥沼も作ったけど、それとは別に、泥のない綺麗な水の入ったプールも作った。


 プールと言えば金持ちの家にある必需品。

 狭い日本ではともかく、アメリカなら豪邸の象徴みたいな存在だ。


 このプールはドラドの土魔法で地面を陥没させた後、その周囲の土が泥にならないよう、僕とリズが協力して、周囲を劣化黒曜石に作り替えた。

 これで陥没させた地面に水を満たしても、濁ることがなくなった。

 屋外プールの完成だ。



 水の属性竜の性質を持つこともあり、レオンはこのプールをすごく気に入っている。


 水を入れっぱなしだと汚れてくるけれど、レオンは水魔法が使えるので、プールの水を空中に浮かばせて簡単に捨てることができる。さらにアクア・ブレスを使えば、水の入れ替えもすぐにできた。


『一家に1台。

 水道代いらずのレオン君をよろしく』

 なんて宣伝をしたくなるね。



 昔、自宅の中に作ったお風呂部屋をレオンは気に入っていたけど、今ではプールの方がお気に入りになっていた。




 そしてそのプールの傍に、先ほどのフレイアとミカちゃんがやってくる。


「プールサイドに寝っ転がって肌を焼くか。フレイア、小麦色の健康的な色をした乳も捨てがたいぞー」

「それはいいですわ。これでレギュラスお兄様を、フフフッ」

「ククク、小麦色の乳。小麦色の巨大山脈。グフ、グヘヘヘッ」


 ……なんかあの2人、話が微妙にかみ合ってないけど、息はピッタリだな。




 この後、泥沼で遊び回ったリズとドラドが、プールに盛大に飛び込んだ。


「GYAOー!」

「うひゃー、水が流れ出すー」


 人間サイズのリズはともかく、ドラドがプールに飛び込むと、それだけで水の大半が外へ飛び出す。

 もっともレオンは、キャッキャとはしゃぎながら喜んでいた。


 相変わらず、子供だ。

 まあ転生組の2人を除けば、あとは皆1歳児だからこんなものだ。


 ――えっ、転生組は3人だろうって?

 ミカちゃんは精神年齢が1歳児だから、気にしなくていいって。


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