69 ドラゴニュートドラドとマザー
「ギャオー、ガオー」
ドラゴニュート形態になっているドラドが、トテトテと走り回っている。
他の兄弟たちと仲良く追いかけっこをしているけど、周りにいる皆の背丈が大きいので、まるでお兄さんお姉さんに遊んでもらってる、小さな子供のようだ。
ドラドは変身でドラゴニュート形態になっても、言葉をしゃべることができない。
けれど、可愛い奴だ。
ミカちゃんと違って、ドラドは変なおっさん顔をしないし、エロ思考もない。
「きゃあ、捕まっちゃいましたわ」
追いかけっこで、フレイアを捕まえるドラド。
仲のいい姉妹の触れ合いは、見ているととても心地いいね。
「さてはレギュレギュ、貴様は幼女趣味……グベフォワッ!」
変態おっさんが戯言を抜かしたので、とりあえず腹パンをかましておいた。
「ず、図星だからって、腹パンは……グベラファッベー!」
「そう言えばミカちゃんは、以前三途の川でグランパに合ったんだよね。もう一度会いたい?」
「や、やめてー。もう、俺のHPは0.1よー」
業界初、小数点以下しかないHPを達成したミカちゃん。
まあ、アホな会話はいつもの事だからしかたない。
「ミカちゃん、本当の事を兄さんの前で行っちゃだめですよ」
「お、おう。あいつ、本当に暴力魔人だからな」
この後、ミカちゃんとユウが小声で何かしゃべり合っていたけど、そんな小さなことを僕は気にしないよ。
――GYAOOOOOOOOOOO!
さて、遊び回っていた兄弟たちだけど、そこに響くのは我らが偉大なドラゴンマザーの鳴き声。
『子供たち御飯よー』
と、マザーが鳴くので、僕たちは木造の巣へ移動して、その日のご飯を食べることにした。
木造の巣には、黒い肌をした魔物の肉が転がっている。
この黒い魔物は、肌が固くて噛み応えが凄くある。
不味くはないけれど、僕はあまり好きな味じゃないな。
とはいえ腹ペコなので、好き嫌いなんて言わず、今日もご飯を食べるとしよう。
「いたたぎます」
リズは日本式の挨拶をしてから食事。
「ギャオー」
ドラゴニュート形態のドラドも、元気よく挨拶。
日本語はしゃべれないけれど、尻尾を振りながら『ご飯ご飯ー』と嬉しそうにしている。
――GYAOOOOOOOOOOO?
しかしそんなドラドを見て、マザーが首を微かに傾げた。
『なにこれ?変なのがいるわね』
と、マザーは言っている。
なお、マザーの言う変なのとは、ドラゴニュート形態になっているドラドの事だ。
『潰しちゃおうかしら』
マザー問答無用である。
僕たち兄弟以外の姿を見つけたマザーは、手加減を知らない。
前足を上に振り上げて、それから……
「ギャウッ」
マザーの前足に恐怖したドラド。
その拍子に変身の魔法が解けて、ドラドの姿が煙と共に元のドラゴン姿に戻る。
「のうっ」
「うひゃあっ」
ドラゴニュートから元のドラゴン姿に戻ると、体が一気に巨大化するので、周囲にいる兄弟たちが、全員押しのけられてしまう。
「GYAO、GYAOOOー!」
そしてマザーに潰されそうになったドラドは、元の姿になると涙目でマザーに『助けて』と叫んでいた
『あら、ドラドだったの。うちの子供たちは器用なことができるのねー。今度から気を付けておくわ』
実の娘を潰そうとしたのに、マザーは割とのほほんとした声でそう言った。
うちの兄弟たちはかなり暢気だけど、どうやらそれはマザーから遺伝した性格のようだ。




