6 三女と末っ子の四女
何度も転生を繰り返してきた長男の僕。
中身がおっさん確実の転生者の長女。
おそらく転生者だろう黒髪の次男。
赤い髪の次女。
青い髪の三男坊。
で、そんな僕たちドラゴニュート兄弟が生まれた巣の中で、さらに新たな卵が孵った。
茶色の鱗に覆われた妹が……。
ただ今まで生まれてきた兄弟は、僕を含めて全員人間の肌をしていたが、ここにきて毛色の違う兄弟が生まれてしまった。
新しく生まれた妹は姿形こそ二足歩行できて人間っぽいけれど、全身の肌が茶色の鱗に覆われている。あと頭は蜥蜴顔をしている。
竜人というより、蜥蜴人間って呼んだ方がいい外見だ。
ただ、背中からは僕たちと同じように翼がはえていて、尻尾もちゃんとはえていた。
「ギャー」
生まれてきて産声を上げる、リザードマンの妹。
なお、なぜ妹だと分かるかと言えば、全裸の姿を見れば一目瞭然だからだ。
男だったらあるはずのものがついてないのだ。
「お、おう。お前は三女になるな」
とりあえず、兄弟の長兄として、僕は少し毛色の違う妹に挨拶しておいた。
「「……」」
なお、転生者確実である長女と、そう思われる次男の奴は、ポカンとした顔をしている。
驚きで言葉が出ないって感じだ。
そりゃ、いきなりリザードマンな妹が出てくれば、無理もないことだよね。
でも、それ以外の兄弟は特に気にすることなく、新たに生まれてきた三女の体を撫で回していた。
生まれたばかりの子供同士、親愛の表現みたいなものかな?
「チィ」
で、そんなことを兄弟たちがしていると、例の長女が舌打ちした。
(チクショウ、どうして人間の姿をした女じゃないんだ!将来を楽しみにできないだろう!)
……気のせいか、一瞬長女の心の声が聞こえた気がした。
いやいや、まさかそんな馬鹿なことがあるはずない。
僕は頭を振って、長女の心の声を無視することにした。
――バリバリバリッ
そして、三女が誕生した後、巣の中に残されていた最後の卵が孵った。
今度も茶色の鱗に全身が包まれている子だ。
ただし姿形は、ドラゴニュートでも、リザードマンでもない。
それどころか二足歩行ですらなく、四足歩行。
足の先からは小さいながらも爪が伸びていて、マジもののドラゴンの姿をしていた。
「ドニャゴン!」
「ゴンッ」
長女と次男が、驚いた声を上げている。
どっちもドラゴンって言いたいみたいだ。
生まれてきた子の正体を理解しているので、長女だけでなく、次男も確実に転生者だろう。
それはともかく、
「よっ、兄弟」
とりあえず僕は長兄として、生まれてきたドラゴンに挨拶。
巣の中にあった卵はこれで全部孵ったので、このドラゴンが僕たち兄弟の末っ子になるだろう。
性別は……とりあえず股に隠れているものがないか確認したけど、物がないので、女の子。
つまり、僕たち兄弟の四女ということになる。
人の姿をしている僕たちとは全く違う姿の四女の登場に、長女と次男以外の兄弟たちは物凄く物珍しがり、寄ってたかって生まれてきた四女の体をペタペタと撫でまわし始める。
「ガオオー」
そしてドラゴンの姿をした四女は、本物のドラゴンのように、口から鳴き声を上げた。
中途半端にドラゴンの要素を持つ僕たちと違って、この四女は完全にドラゴンだ。
ハハハ。
なんだか、凄い兄弟ができたな。