63 変態親父のレベルが上がった
「うおおおおっ、嫉妬の神がイケメンリア充どもを駆逐せよとおっしゃられる!
嫉妬神様、どうか俺にこの世のイケメン全てを根絶する力をお与えください!
死すべしイケメン、貴様らは塵芥の存在!人間としての存在価値などない!」
「グヘッ」
「ヘブシィー」
ミカちゃんがユウとレオンに、襲い掛かっていた。
手加減抜きの拳を振るっていて、ふっ飛ばされた哀れな弟2人は、岩場に体をめり込ませている。
僕が良くミカちゃん相手にしていることだけど、それを今度はミカちゃんが弟たちにやっている。
どうも脱皮してから僕たち兄弟は以前にもましてパワーが上がったようで、攻撃力が増加している。
ついでに防御力の面でも強くなっているものの、岩にめり込んだ2人は、そのまま気絶してしまったようだ。
まあミカちゃんなんて脱皮前から、あれをされていたから、2人の弟もそのうち意識を取り戻して、ケロリと復活するだろう。
そしてミカちゃんが、前世のゲームでやっていたという嫉妬教団の教祖様に返り咲いているけど、理由は単純。
脱皮したユウとレオンが、長身痩躯の明らかに美形の青年となってしまった。
まあ見た目だけで、ユウはともかく、レオンの中身なんて、まだまだ暢気なガキのままだ。
とはいえ、それがミカちゃんには許せない事らしい。
2人の弟に対して、ミカちゃんはあらん限りの暴力を振るうのだった。
僕としては、この件でミカちゃんを止めるつもりはない。
僕に火の粉が飛んできてないし、いい加減2人もミカちゃんに対抗できるよう、育ってくれないとね。
ただミカちゃんって、アホで本能丸出しだけど、無駄に強いんだよね。
「ヒャハハハハ、分身の術。どうだレギュレギュ、超高速で動く俺は一度に8人の残像を出せるのだー!」
なんて思ってたら、ミカちゃんが超高速で動いて、本当に8人分の残像を出していた。
自慢するだけならまだいいんだけど、
「8人に増えた俺様には、いくらレギュレギュと言え勝つことはできまい。積年の暴力の恨み、今こそ……ヒギャー」
鬱陶しさも8倍に増えていたので、僕は尻尾をミカちゃんの足にひっかけて転ばせた。
無駄に分身するぐらいなら、さっさと攻めればいいのに。
本当にアホの子だ。
「ど、どうして俺の分身が見破られたのだ!」
「はいはい、バカやって僕の作業の邪魔をしないでね」
「……クッ、このチート野郎め」
悔しそうにするミカちゃん。
でも、ドラゴニュートは攻守ともに人間離れした強さを持っている。
種族の能力だけで、僕らは人間から見たら既にチートな存在となってる。
まあ、僕はミカちゃんより人生長く生きまくってるので、チートと言われても、その実力分の人生は生きてきたつもりだ。
そんなアホな事はさておいて。
脱皮によって、僕たち兄弟は一気に体が成長した。
今まで着ていた服が着られなくなって、新しく服を作り直さなければならない。
今は以前作った狼のマントを着ているけど、その下は何も着てない状態だ。
また、生まれた時の全裸状態に戻るのは御免だ。
この資源が限られた状況の中でも何とか衣服を用意し、少しでも文明人に近づこうとしていたのに、それを今更無に戻すわけにはいかない。
幸い倉庫兼作業部屋には、鞣したモンスターの皮が残っているので、それを使って急いで服を仕立てていく事にした。
とはいえ、寸法も測り直さないといけないので、兄弟たちの身長なども測りながらだ。
「フレイアちゃんの3サイズは俺が測る」
「ア、アアン。ミカちゃん、そこは胸」
「……」
フレイアが大きくなって、変態親父の変態レベルが、以前より上がっている。
でも寸法を測ったり、服を仕立てたりで僕は忙しいので、この変態親父の事は放置することにした。
(もう、このおっさんは僕の手で矯正できるレベルを超えている。誰か、この変態を何とかしてくれ……)
そんな嫌すぎることがありつつも、僕はユウと一緒に服を仕立てていった。
数日後、何とか兄弟全員の衣服が完成した。
「ゲヘヘ、チチバンドをおじちゃんがつけてやるぞー」
あとミカちゃん提案の、フレイア用の下着も作っておいた。
「なあ、ユウ。あの変態親父を、目の前にある断崖絶壁から突き落としたいんだけど」
「兄さん、頼むからやめてください!目が笑ってないですよ。冗談じゃ済まなくなります!」
脱皮してからというもの、おっさんの変態レベルまで成長してしまった……。




