61 成長した!
脱皮をした僕たち。
その後太陽の光の下で干される干物のように、グッタリしながら干されてたら、だんだん表面の肌が乾いてきた。
浮かび上がっていたドラゴンの鱗が消えていき(ただしリズとドラドは除く)、人間の肌へ戻っていく。
「あー、気持ち悪かったー」
脱皮が終わるまで空腹を感じたり、思い切り体調不良を感じていたけど、それが一気になくなった。
僕は立ち上がってみると、やはり以前より身長が高くなっている。
以前が4、5歳児のサイズだったのが、今は7、8歳児の大きさに成長だ。
「メシー」
そしてミカちゃんも、僕と同じ高さに育っていた。
なお、胸は相変わらずのぺちゃんこ。
まな板だ。
ただ脱皮して肌が渇くと、すぐにいつもの腹ペコモードへ突入だ。
またレオンに齧り付いてるのか?
なんて思ってミカちゃんの方を見たら、木造の巣の中に物凄い量のモンスターの死骸――つまり御飯――が、てんこ盛りになっていた。
「えっ?」
どうやら僕らが脱皮で動けなくなっていたのは、数日に及ぶらしい。
その間もせっせとドラゴンマザーが、ご飯を運んで来てくれてたようだ。
それを見ていたら、僕も激しい空腹を感じた。
ミカちゃんじゃないけど、本当に「メシー」と言って、食べまくりたい。
腹ペコをかなりヤバイレベルで感じたので、僕もミカちゃんにならって、ご飯の山へ突入した。
「ハグハグハグハグ」
「モリモリモリ」
「バクバクバクバク」
「バリボバリボ」
僕と脱皮を終えた兄弟たちは、山のように積まれている御飯を、ただ黙々と食べ続けた。
脱皮が数日に及んだ影響だろう。僕らの今の状態は飢餓に近いレベルにあるようで、とにかく食べずにいられない。
ドラドなんて骨も肉もお構いなしで、とにかく片っ端からモンスターを口の中へ放り込んでいっていた。
それからも僕たちはご飯を食べ続け、気が付いたときには巣に大量に積まれていた全ての御飯が、きれいさっぱりなくなっていた。
量的には、僕ら兄弟の体の100倍どころじゃない量があったはずなのに、その全てが僕らのブラックホールのような胃袋へ入ってしまった。
まあ、昔から自分たちの体より巨大な肉を、毎日平気でペロリと食べていたので、これくらいは今さらだ。
「ふー、食った食ったー」
大量の食事を終えて、ミカちゃんが腹を擦る。
もっともあれだけの量を食べたのに、腹が出っ張ってないのがドラゴニュートの凄いところ。
「全員整列!」
ところで気になったことがあるので、僕は号令をかけて兄弟たちを横一列に並ばせた。
軍隊の如く反応して、ビシッと横一列に整列する兄弟たち。
よろしい。
ユウが日本式の教育を施しているおかげで、運動会でやる整列・行進すら、兄弟たちはできるレベルだ。
で、僕の前に生まれた順で兄弟たちは並んだのだけど。
明らかにおかしい……。
「お、おおおっ、おおおおっ。フレイア、フレイアちゃん。俺の願望が届いたのか。そんなにふっくらとした胸に育って。俺は、俺は、嬉しすぎて、フレイアちゃーん」
――ドゴンッ
なんかうるさいのがいたので、とりあえず踵落としを頭にしておいた。
力加減が狂って、ミカちゃんの頭が床にめり込んだけど、頑丈だから別にいいよね。
そのうち自力で復活するだろうし。
で、おかしなことなのだけど……
魔が僕とミカちゃんは、7、8歳児の大きさ。
脱皮して成長したのは、実にいい事だ。
だけど、ユウ、フレイア、レオン、リズの4人の顔を見ようとしたら、僕は顔を上に向けないと、見ることができなかった。
明らかに、10歳児どころじゃない。
14、5歳か?
もう半分以上大人の身長になっていた。
ついでにフレイアは、ミカちゃんがさっきうるさくしていたように、胸が大きくなっていた。
脱皮前はただのツルペタ胸の幼女だったのに、今では僕の顔の半分はある大きさ。
そしてドラドに至っては、僕らの4倍ぐらいのでかさになっていた。
――なにこれ、理不尽じゃない?
脱皮をしたら、僕とミカちゃん以外の兄弟が、めちゃでかくなっていた。




