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60 ピキピキピキ、鱗にひびが……

 僕たち兄弟がこの世界に転生してから、かれこれ365日が経過した。

 地球の暦で言えばこれで1年だけど、この世界での1年が何日かは今のところ不明だ。


 そして僕たちの住んでいる場所は気候が温暖で、熱すぎず寒すぎないという、住むには非常に快適な環境だった。

 なので雪が降らないし、夏の激しい暑さとも無縁。


 もしもこの星の1年が、1000日とかかかるなら、僕らはまだ春の季節しか経験してない……なんてことになるかもしれない。

 とりあえず、今のところは非常に住みやすい環境だった。




 なお、ただいま僕は動けなくなってる。


 僕だけでなく、兄弟の全員がグッタリと床に寝転がっていて、おまけに滅茶苦茶気分が悪い。

 体がだるすぎて、動けないんだよ。


「ゲ、ゲハハ、横暴なレギュレギュを倒して、今こそ俺が兄弟のチャンピオンとして君臨する時だー」

 約1名、こんな時でも動ける馬鹿がいた。


 いつも僕に殴られたりしているからか、日頃の鬱憤を込めて、僕の前に立ちはだかるミカちゃん。

 僕はその相手をする気にならない。


「ドウラッシャー」

 変な叫び声を上げて、ミカちゃんが僕を足蹴りしてきた。


「クハハ、どうだレギュレギュよ。俺様の強さにひれ伏して、もう威張り散らして俺をボコボコにするんじゃねえぞー」

 面倒臭い子だね。


 もっとも動けてはいるものの、それでもミカちゃんも相当に体がだるいようで、かなり息が上がっている。


 足蹴りにされても痛くもかゆくもないけど、鬱陶しいので僕は尻尾を動かして、ミカちゃんの足を払っておいた。


「フギャン」

「ゲフッ!」

 足を払った結果、僕の体の上にミカちゃんが転がってきた。


「重い、ドケー」

「嫌じゃー、もう動きたくない。ここからは一歩も動かんぞー。ウヘヘヘヘー」

 いつもならこんなドジはやらかさないのに、体調不良のせいでミカちゃんに乗っかられてしまった。


 というか、ミカちゃんも体調不良のせいで、笑いがいつも以上におかしくなってるぞ。



 なんてことがあったけど、その後僕たちは何をしていたんだろう?

 僕の記憶は、そこから先がなくなっていた。







 ――ピキッ、ピキピキピキッ

 次に気が付いたとき、僕の体から、そんな音が聞こえていた。


(え、なにこれ?ヤバくない?)

 体中から聞こえる奇妙な音。


 自分の肌に、鱗にひびが入り、次々に体から剥落していく。



(ちょっ、冗談抜きで、いきなり死ぬとかないよね?まさか、僕ら兄弟そろって変な病気に感染したとか……)


 今までの転生人生でも経験したことがない事態に、僕は思い切り焦った。


 そして、

「おんぎゃー」

 なんて声が、僕の上からした。


 よく聞き慣れてるミカちゃんの声だ。

 でも、『おんぎゃー』ってなんだ?


 まさか僕とミカちゃんは、別の生き物に転生して、また生まれ変わったとかじゃないよね?



 なんて思ってたら、僕の上に乗っかっていたミカちゃんがいなくなったので、僕も立ち上がることができた。


「えーと、おんぎゃー……かな?」

 とりあえずノリでミカちゃんに合せておく。



 立ち上がってみる。

 それと同時に、僕の肌がメキメキと音を立てて、一気に剥がれ落ちた。


 えっ、なにこれ。

 ものすごく怖いんだけど。



 なんて思ってたら、僕の目線が以前より高くなっていた。


 なにこれ?

 えーと、今剥がれ落ちたのって、僕の鱗?

 あ、これ脱皮だ!



 ドラゴニュートは、半分が人間で半分がドラゴンだ。

 ドラゴンって爬虫類なのかな?

 爬虫類は、たしか脱皮したよね。



 体調が悪いと思っていたけど、どうやら原因は脱皮にあったようだ。


 僕は脱皮を果たすと、以前より背が高くなっているのを感じた。

 でも、そんなことはどうでもいい。


 なんか、物凄く太陽に当たっていたい。

 脱皮したばかりで、肌が必要以上に水を含んでいて、柔らかくなっている。

 本能的にそう感じて、とにかく太陽の光が当たる場所で、その後しばらくグタリと休ませてもらった。



「レギュレギュ、なんか前よりでかくなってるぞ」

「……ミカちゃんも背が伸びてるね」


 太陽に当たりながら横になっていると、目の前にはミカちゃんがいた。



 この1年間(365日)、僕の兄弟たちは学力の面で成長が著しかったけど、身体的には背が全く伸びていなかった。

 てことは僕らは爬虫類よろしく、脱皮することで体が大きくなるようだ。



 その後、僕とミカちゃんだけでなく、ユウ、フレイア、レオン、リズ、ドラドも脱皮を果たした。



 ただ、皆脱皮後は、太陽の下で横になる。


 脱皮したてのせいか、僕たちの肌にはドラゴンの鱗が浮かび上がっていた。


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