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58 同姓同名の大叔父さん

「……以上が、俺の知っている嫉妬神改め、シリウス師匠だ」


 前世のゲーム内での出来事とはいえ、ミカちゃんのとんでもない過去話を聞かされた僕たち。


「あー、師匠って金貨を集めて、目の色を変える事があったからなー。

 ……多分、そのシリウスは僕の師匠と同一人物だと思う」

「なんてこった、あのお方がレギュレギュの師匠と同一人物だったとは。

 ……てか、核爆弾よりやばい魔法使える奴が、なんでゲームの中で暴利貪って遊んでるんだよ!」

「さあっ?」

「「……」」


 ミカちゃんとユウが僕を白い目で見てくる。



「いや、僕だって師匠の人間性を理解できてるわけじゃないんだよ。あの人って、存在的には超越者だけど、性格はただの……バカ?」

「……お、おうっ。そう言えば確かに、抜けてるところもあったな」

 ゲーム内でシリウス師匠との付き合いがあったためか、僕の言葉に思わず納得するミカちゃん。


「いや、それで納得していいんですか!」

「事実だもん」

 ユウが叫ぶけど、ミカちゃんはあっさりと受け流してしまった。



「てかさー、あの人ってマジでヤバいんだけど。

 リアルで大金持ちな上に、老後の暇つぶしとか抜かして、リアルマネーつぎ込みまくって、ゲーム内トップの課金してたんだけど」

「うわー、師匠本当にろくなことしないなー」


 魔王の支配地域を領土ごと消し飛ばす一方で、ゲームで廃課金プレーして遊ぶとか、本当にろくでもない人だよ。

 まあ、そのろくでもない人に弟子入りしちゃったのが、僕だけどね。


 あの頃の僕には他に選択肢がない状況だったとはいえ、そんな人についていったってことは、若い頃の僕は切羽詰まって、周りが見えなくなっていたようだ。

 もしもあの頃の自分に合えたら、「落ち着いて考え直せ」って言って、ぶん殴ってやりたいかも。


 まあ、その場合師匠についていかなければ、僕は毒なり賊なりに襲われて、謀殺されていただろうけど……。




「ところでミカちゃん。ゲームでシリウス師匠を知ってたなら、リアルの名前も知らない?」

「日本名で肥田木昴(ひだきすばる)。おねだりしたら、リアルで別荘に連れて行ってくれたこともあるぞー」


 ゲーム内だけでなく、リアルでも付き合いがあったんだね。


 それにしても別荘とか、師匠は本当に金持ちだね。

 まあ、僕も日本にいた時は別荘を何件か持ってたけど。




「ちょっと待ってください、肥田木昴ですか!」

 なんて話してたら、今度はユウが驚いた顔をした。



「もしかしてユウの知り合いに、同姓同名の人がいた?」

「ククク、これで俺たち3人の共通点が見えてきたな」


「知り合いというか、母方の大叔父の名前が肥田木昴です」



 僕とミカちゃんは互いの顔を見合わせた。

「ミカちゃん、驚いたことにユウは、師匠と血縁関係にあるみたいだよ」

「うわー、あの人の血縁関係かー。へー、ほー、はー……そりゃ、大変そうだ」

 シリウス師匠のトンデモぶりを知っているので、互いにユウに対して同情的になる。

 なぜ同情的になるのかだって?


 だって、師匠は歩く天災。

 おまけにボケ老人並の物忘れの激しさと、うっかり属性を保有している。


 不老不死の薬なんて物を自力で作り上げられるほどの天才だが、研究馬鹿でいろいろと抜けまくっている。


 超越者?

 なにそれ、オイシイノー?



「ぼ、僕の大叔父は、そんな変な人じゃないですよ。ガンとエイズに有効な治療薬を開発した人で、前世の僕の親戚の中では、一番立派で尊敬できる人だったんです」

 ハッキリと断言するユウ。


「なあ、レギュレギュ。師匠が異世界転生を何度もしてるってことは、当然他の世界の知識も持ってるよな」

「当たり前だよ。異世界で仕入れた知識を使って、ユウの世界でチートして金を稼いだんだろうね」

 ユウの尊敬する大叔父を、早速扱き下ろす僕とミカちゃん。


 異世界転生物の小説では、日本の知識を使って異世界でチートするなんてのがあるけど、シリウス師匠の場合はその逆だ。




「そ、そんな馬鹿な。僕は大叔父さんの事を尊敬してたのに」

「とはいえ、自力で不老不死の薬なんて作れた人だから、本人が物凄く優秀なことに変わりはないよ。まあ優秀なんだけど、性格にいろいろ難があるけど……」

「あの、大叔父さんの事を褒めるか貶すか、どっちかにしてくれませんか?」


 若干涙目のユウ。


 でも、そんなユウの前で僕とミカちゃんは、

「「だってねー、シリウス師匠だよ」」

 と、見事に声をはもらせた。



「で、でも偶然名前が同じだけで、本当は別人って可能性も……」

 ユウが最後の抵抗をするように言う。


 どうやら、そこまでしてシリウス師匠と自分の大叔父を、同一人物と認めたくないらしい。



「ククク、嫉妬神様は金集めが趣味だった。ユウの世界でも、治療薬の特許で滅茶苦茶暴利をむさぼって、金持ちになってただろう」

「そ、それは……」

 ミカちゃんの言葉に、ユウがたじろぐ。

 これは図星だね。


「あと、その大叔父さんの家に、『ザ・中二病』って感じで、魔方陣とか訳の分からない言葉で書かれた書物が、山のようにあったでしょう」

「どうしてそれを!」

 僕の言葉に、驚くユウ。


「師匠って僕と同じで不死だけど、頭のスペックは元の人間のままだからね。

 長く生きまくってると、昔の記憶が片っ端から抜け落ちていくから、備忘録的な意味で、異世界の魔法や薬のレシピなんかを、本に書きだしてボケ防止に使ってるんだ。

 僕の世界でも、師匠が備忘録のために執筆した本で、図書館ができたくらいだから」


 僕の言葉も思い当たる節があったらしい。ユウの視線が地面を向き、ガクリと項垂れる。


「大叔父さんが死んだ後に、遺品の整理で母と一緒に家に行った事があるんです。そこで兄さんの言うように、魔方陣とかが描かれた奇妙な本がたくさんありました」

「それは間違いなく、シリウス師匠だ!」


 なんと、ユウの世界でのシリウス師匠は、既に亡くなってしまったとは。

 と言っても、体が死んでも、僕と同じでまた別の世界で転生するだけだけど。


 しかしこれで、僕とミカちゃんとユウ。

 僕たち3人に共通しているのが、シリウス師匠だと判明した。



 でも、師匠はなんで僕たち3人を、この世界に兄弟として転生させたんだろうね。


 まあ、あの人の事だから大した理由もないだろうし、本人に会えて聞けたとしても、「忘れた、さあ?」でお終いだろうけど。




「大叔父さん、凄い人だと思ってたのに……」

 なんだかユウがガックリ項垂れているけど、

「まあ、凄い人なのは確かだから。……いろんな意味で」

 落ち込むユウに、僕はそう言っておいた。


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