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50 ミカちゃん、おねだりをする

 カニパーティーをしたのと同じ日。

 30メートルはあった巨大ガニは、僕ら兄弟によって肉の全てを平らげられた。


 ただ、肉は食べても甲羅は固すぎてどうにもならなかった。

 モンスターの骨ならおやつにしたけど、さすがに今回のカニは硬すぎてダメだ。


「なんとか砕いて、スープの素にならないかな」

 残された甲羅の量は膨大。


 粉末状にすればスープの材料になりそう。ただ砕くにしても、その方法がないから困る。


 マザーはすでに次の獲物を求めて飛び立ってしまった。

 僕らドラゴニュートの力では甲羅は傷つけられないし、劣化黒曜石製の道具類など問題外。

 甲羅にぶつけた瞬間、劣化黒曜石が砕け散ってしまう。


 甲羅の利用法について頭をひねっていた僕だけど、

「レギュレギュ、これで防具作ろうぜ。防具をー!」

 なんてミカちゃんが言ってきた。


 ただしカニを食べて満腹になっているので、地面に寝転がった姿勢でだ。


「ゲプッ」

「ミカちゃん、おっさんみたいなゲップしないで、女の子らしくできないの?」

「やかましかー。生まれ変わったところで、俺の中身は永遠の男だー」

「男と言うか、ただのエロおっさんだよね」


 外見が可愛いのに、中身が残念すぎる女がミカちゃんだ。

 まあ、ミカちゃんが女の子っぽくしたところで、「オホホホホ。お兄様、お願いがございますのー」なんて言って、気持ち悪い笑いを浮かべて、すり寄ってくるんだけど。



 でも、防具か。

 マザーは僕たちをいずれ本物の狩りに連れていくだろうから、防具があっても確かにいいだろう。


「俺、兜が欲しい。あと鎧もいいなー。でも盾はいらないからなー」

「まだ作るって言ってないけど?」

「欲しい、欲しい、防具が欲しい。俺の為に作ってよ、お兄たまー」


 ――ゲシッ


 気色悪い声を出しておねだりしてきたので、地面に寝転がったままのミカちゃんを、とりあえず足で踏みつけておいた。


「ひどい。私はただの幼気な幼女なのに」

「黙れおっさん。背筋に悪寒が走る!」

「女の子らしくしてるのにー。エグエグ」

「……」


 ヤバイ。

 ウソ泣きしている姿を見てたら、なぜか本物の殺意が沸いてきそうになる。

 滅茶苦茶ムカつくんだけど……。


「あっ、ちょっと待った、レギュレギュ。殺気はやめて、マジで止めて。俺、死にたくない!」

「じゃあ、いつも通りにしようね。気色悪い女言葉聞いてると、僕の心の底から得体のしれない殺気が沸いて来るから」


 ――コクコクコク


 一度僕に半殺しにされたことがあるミカちゃんは、全速力で首を縦に振りまくって同意した。


 よし、なんとか殺気を抑えることができたぞ。

 あまりに気色悪すぎて、僕が僕でなくなりそうで本当に危なかった。



「でもさ、防具は作ってよー」

 女言葉ではなくなったけど、それでも地面の上でゴロゴロしながらおねだりしてくるミカちゃん。



「前に作ったミノ吉兜があるでしょう?」

 ミノ吉兜こと、ミノタウロスの角を取り付けた兜を、以前ミカちゃんに作ってあげた。

 あれも立派な防具だ。


 もっとも兜の防御力よりも、ドラゴニュートの頭の方が遥かに頑丈だけど。



「なくした!」

「をぃ、あれ作るの苦労したんだぞ!」


 どうせなくすとは思っていたけど、やっぱりなくしたのか。


 ミカちゃんは前世がおっさんでも、精神年齢が幼児だからしかたない。

 子供はなんでも物をなくすから……。



「だからさ、今度はカニ吉兜を作ってくれ」

 ミノ吉兜をなくしたことを悪びれもせず、ミカちゃんは次の兜を要求してきた。


 それにしてもカニ吉って名前を、もう付けたのかよ。

 まあ、ミノ吉の名前をそのままパクってきただけだけどさ。



「防具を作るのは考えておくよ。ただ、このカニの甲羅を加工できたらだけどね」

「よっしゃー」


 どっちにしろ、防具は必要になるから、作るのは確定だ。

 とはいえドラゴニュートの力でも壊せない甲羅を、どうやって加工しようか。


「ミカちゃん、あくまでもこの甲羅を加工できたらの話だからね」

 ミカちゃんは浮かれているけど、僕はこれからいろいろ考えないといけない。


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