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48 冷蔵庫部屋

 前回作った冷蔵庫部屋は、暗室になっていて太陽の光が入り込まない。

 そして分厚い岩が断熱材代わりになっているので、内部は年間を通して気温の変化が少なかった。


 ここにレオンが水を作り、僕が氷魔法で凍らせると氷ができる。

 部屋の中に大きな氷を置いておくと、それだけで冷蔵庫部屋は冷却され、気温が氷点下近くにまで下がった。


 つまり、作ったのは氷室だ。


 簡単な作りだけど、氷の溶ける速度が遅いので、1回氷を作ればひと月ぐらいはそのままでも持ちそうだ。

 さすがに冷凍庫とはいかないものの、この氷室なら魚介類や生の肉でも、数日保管するなら問題ないだろう。



 というわけで、念願の冷蔵庫を作ったのだが、その役目は開始1日目にして終わった。


 マザーが運んできてくれた肉の一部を非常食として保管してみたけど、僕とユウが作業部屋で仕事をしている間に、ミカちゃんが他の兄弟たちを焚きつけて冷蔵庫部屋に侵入。

 保存してあった肉は、全て平らげられ、胃袋へと消え去ってしまった。



 なお、その時の犯人捜しは、以下のようにして行われた。

「ミカちゃん?」

「俺は悪くねー」

 この家で起こるトラブルの99.9%はミカちゃんが原因。

 僕が問い詰めると、ミカちゃんはそっとドラドの方へ視線を逸らした。


「GYAOー!」

 ドラドはフレイアの方を見る。


「え、えーっと」

 フレイアはリズを。


「……」

 リズは静かにレオンを見る。


「ミカちゃんが全員で行けば、怒られないって……」

「馬鹿野郎!俺はそんなこと言ってねえぞ!」

 レオンが白状するのを、ミカちゃんが慌てて遮るが、時すでに遅しだ。




 どうやら腹ペコドラゴニュート兄弟たちに、非常食という概念を植え付けるのは無理そうだ。

 特に前世の記憶がありながら、ミカちゃんはとことん本能のままに生きてるし。





 というわけで、冷蔵庫部屋は食料の保存庫としての使命を果たすことなく、短い使命を終えた。


 そして後日、冷蔵庫部屋の床一面には、氷が張られた。

 レオンが部屋の床全体を水で覆い、さらに氷魔法を使って凍らせたものだ。


 レオンは水の属性竜として水魔法を自在に使えるが、僕が氷魔法を少し教えたら、触れている水を凍らせることができるようになった。

 水だけでなく、氷に対しても相性がいいようで、水の属性竜の性能さまさまだ。



 ただし、

「あれ、指が引っ付いちゃった。……抜けない」

 水に触れていないと氷にできないので、氷を作ると、自分の指が氷の中に囚われてしまう。


「抜けないー」

「フレイア、炎を軽く頼む」

「はい、レギュラスお兄様」

 しょうがないので、フレイアの炎のブレスを使って、レオンの指を氷から救出した。


 なお僕らの防御力なら、フレイアのファイア・ブレスを受けてもダメージはない。

 相変わらず出鱈目なドラゴニュートの防御力だけど、おかげでレオンは火傷もなく指を氷から取り出すことができた。

 


「ヒャッホーイ、アイススケートだぜー」

 そしてミカちゃんは、氷った床の上を滑りながら歓声を上げる。


「GYAAAAAー」

「ドラド、危な……ヒャッ!」

 その後ミカちゃんを真似しようとしたドラドが氷の上で滑り、さらにそれを助けようとしたリズが氷の上でこけてしまった。


 ドラドは壁際にまで滑って行き激突。

「GAO」

 顔面をぶつけてしまう。


 リズはお尻を打ち付けただけで済んだものの、

「あれ、キャン。立てな……ヒエッ」

 氷の上でバランスをとれなくて、立ち上がろうとするたびに何度もこけていた。


「リズ、僕に捕まって」

「ユウ兄上、助かります」

 見かねたユウの手によって、リズは何とか立ち上がることが……

「あわっ」

「キャアッ」

 できなかった。


 バランスの取れないリズに引っ張られて、ユウまで巻き込まれて氷の上で転んでしまう。



「……リア充め」

 その光景を見ていたミカちゃんが、ぼそりと暗い声で呟いていた。


 いや、あれを見てリア充とか、ミカちゃんの目は曇りすぎじゃないか?


 ユウとリズは男女の違いはあれど、この世界では兄弟だ。

 おまけにリズの外見は人間から離れていて、リザードマンっぽい。

 それでリア充だとか、ミカちゃんはどんだけ心が歪んでるんだ?



 なんて思ってる間に、ミカちゃんが悪だくみを思いついた顔になっていた。


 この子は一体何をしでかす気だろうと見ていると、

「フヒョー、滑る。アーレー、お助けをー」

 わざとらしい声を出しながら、フレイアの方へ突っ込んでいった。


「ウヒャヒャヒャ、今お姉ちゃんがフレイアちゃんのお胸を大きくするために、突撃するからねー」

 心の声を思い切り叫びつつ、両手をワキワキ動かしながらフレイアに向けて突撃していくミカちゃん。


 なお、その顔は深刻な顔面崩壊を起こしていて、ただのエロ親父の下卑た顔と化している。

 そこに元の天使のように愛らしい顔は、1ミリグラムも存在しなかった。



「ウワー、ミカちゃんどいてー」

「ぎゃー、邪魔をするなレオン!」

 直後ミカちゃんの野望は、横から滑ってきたレオンに激突されて阻止された。


「重い、どけー。俺は男なんかに圧し掛かられても、全然嬉しくねー」

「ギャヒィ」

 叫ぶミカちゃんは、上に圧し掛かってきたレオンを蹴り上げた。


 レオンの体が空中に飛んで、そして落下、

「ヘブシッ!」

 再びミカちゃんの上に、レオンが落ちた。


 自分で跳ね飛ばしておいて、また元の場所に落とすとは酷い有様だ。




 僕は冷蔵庫部屋が欲しかったんだけど、なぜかスケートリンク部屋になってしまった。

 まあ、なんだかんだで皆楽しんでいるので、これはこれでいいか。


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