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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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271 リゲルくん勧誘活動 その2

 さて、現在"我が社"では第二拠点を中心にして、鉱山からの採掘に、金属の精錬・加工事業を行っている。

 その他には、デネブによる技術開発や、僕が植物を中心に研究をしているけど、こちらに関してはまだまだ技術研究の段階のものが多く、実用的なものはあまり出来上がっていなかった。


 そして今回、我が社は新たに事業を拡大し、農林業を行っていきたい。


 森から産出される豊かな物産の採集に、西の森(ウエストフォレスト)近隣に広がる農地として有望な肥えた土地の開発。

 森の木を切り倒しての林業だって、大事な産業だ。

 あと、将来的には牧畜もしたいねぇ~。



 しかし大変残念なことに、現在我が社の従業員は、ほぼ全てが不死者であるアンデット。

 こいつらは無機物に対しては優秀な労働力で、例えば人間だったら嫌がる鉱山労働なんて全く苦にしない。地底深くの一日中真っ暗闇で、呼吸ができない酸欠確実な空間で、肉体を酷使する重労働をこなし続けても、不平不満一つ言うことがない。

 まあ、環境に対しての不平を言わないけど、生者に対しての不平は多いかもしれないけど。


 ただそのせいか、生命の恵みに溢れる森で活動していくには、いささか以上に問題がありすぎる。

 不死者なので命との相性が悪すぎ、森を枯らし、畑を耕させても食物が育つ前に枯れさせてしまう連中だ。


 こんな奴らに、農林業をさせられるわけがない。



「だから君、うちの"会社"で働きなよ」

「えっ、会社?魔王軍じゃないんですか?」

「ノンノン、魔王軍じゃないよー」

「……」


 食事も終わって、再びリゲルくんの勧誘活動を再開。

 現在"我が社"で行っている事業内容と、将来への展望を説明したのだけど、リゲルくんが、うちの従業員を物騒な連中と勘違いしているようだ。

 けど、そんなこと全然ないよ。

 うちはただの企業だから。


 株式でも合弁でもない、家族経営から始めたちょっとした規模の私企業だから。

 従業員は自前で用意した、お手製アンデットがほんの8千体ほどしかいないよ。


「てかさー、君がうちで働いてもらわないと、森の開発事業が全然進まないんだよ。うちの社員になれ、僕の部下になれ。もちろん拒否したら……」

 そこで僕は、現在進行形でダークスケルトンたちに包囲させている、ゴブリンたちに視線を向ける。


「やっぱり魔王軍だ!村の仲間を人質にしている!」

「だから魔王軍じゃないって。まあ、フェアな交渉でないのは、理解してくれてるようで助かるけど。フフフッ」


 そう、世の中にある交渉事とは、公平な立場でなされる方が少ない。

 大抵は強者と弱者の関係によってなされている。


 歴史的には、大国による弱小国への不平等条約に始まり、現代でも大企業による中小企業への無茶な注文の数々がある。

 そのせいで仕事をすればするほど、赤字が拡大していって潰れていく中小企業が、日本ではどれほど多かったことか。

 挙句倒産した会社の社長が首を吊ったり、一家心中したり、社員が路頭に迷ってホームレスになってしまったりなどなど。


 今行っている交渉も、それと同じだよ。

 強者と弱者による交渉だから。


「クッ、頼む……いや、お願いします。どうか村の仲間たち、それに母ちゃんの命は助けてください。そのためだったら、俺はあなたの奴隷になってても、働かせてもらいます」

「OK。別に奴隷にはならなくていいから、これからは僕の部下として働いてくれたまえ、リゲルくん」

「は、はい……分かりました」


 若干納得できない様子のリゲルくんだけど、何も問題ないよね。

 普通に従業員として、働いてくれればいいんだから。



「ブラック企業の主レギュレギュめー!」

「ううっ、兄さんの交渉の仕方が、完全に恫喝と脅迫だ……」

 なお、一連の交渉がめでたくまとまったのに、なぜかミカちゃんとユウがそんなことを呟いていた。


 ノンノン、わが社はとてもクリーンで、最初から24時間労働と明記してるよ。

 日本の企業みたいに、契約段階では勤務時間は1日8時間とか謳っておきながら、実際には12時間以上労働がデフォルト。下手すれば18時間とかさせて、契約内容と実態が、かけ離れているなんてことは全くないよ。


 フフフッ、1日中仕事の事だけ考えて、他の事を考える余地がなくなるまで働いていればいいんだ。

 うまくいかない家庭や、これから先の生活の心配、老後の不安なんて、抱く隙間もないほど、頑張って働けばいいんだよ。


 フフフッ、とっても素敵じゃないか。

 少なくとも、僕にはとても理想的な労働環境だと思うよ。



 そしてリゲルくんには、我が社が今日から始めることになる、農林業部門の責任者についてもらうことになる。

 つまり、この西の森(ウエストフォレスト)全体が、リゲルくんが担当するエリアだ。


 ドナンが第二拠点の責任者なのと同じで、西の森(ウエストフォレスト)の責任者がリゲルくんだ。


「ああ、そうだ。リゲルくんが、この森の責任者になるから、部下もきちんと用意してあげないとね」

「ま、まさかここにいる、黒いスケルトンが……!?」

「いやいや、こいつらを使い続けると森が枯れていくから、この村のゴブリンたちでいいよ。ただゴブリンのままだとバカな上に弱すぎるから、全員進化させようか」

「はいっ!?」

「てことで、早速始めよう。まずはリゲルくん。せっかくなので、君の奥さんからだ」


 バカでひ弱なゴブリンを進化させて、まともな労働者に作り替えていこう。

 さすがに僕でも、この村のゴブリン全てを進化させるとなると、魔力量的に無理がある。

 けど、1日2日ですべてを解決しようというわけじゃない。

 何日もかけてやっていけば、問題ないね。



 ――ガシッ

 あ、もちろん僕から逃げるとか、拒否するなんて選択肢はないから。

 逆らったゴブリンは、今すぐ天国送り。

 そして問答無用で進化させていくよ。


「ギャー」

「かあちゃーん!」

 僕がリゲルくんの母兼妻の頭を掴んだら、なぜか2人とも悲壮な声を出した。


 が、そんなのはどうでもいい。

 魔力をガンガン注入して、強制的に進化させてやる。


 ほどなくして、魔力注入が完了。


「グギャ、ギャアアアー!」

「かあちゃーん!」

「ま、まるで断末魔の叫びだ……」


 ハハハッ、何言ってるんだろう。

 特にユウってば、断末魔はないだろう断末魔は。

 進化する際、少々痛いかもしれないけど、何も問題ないよ。



 ほどなくして、リゲルくんの時と同じように、リゲル妻は白い光の体となり、それが不定形に揺れ蠢いて姿を変えていく。

 光が収まった時、その姿はゴブリンからリゲルくんと同じ、西風(ゼフィル)オーガに進化していた。


「うっ、ああっ。あれっ?私の体が大きくなっている!?」

「か、母ちゃんなのか?」

「そうだよ。私だよ、リゲル」


 進化したことで体だけでなく、知能も向上。日本語まで話せるようになっていた。

 これで僕たちと会話が可能になった上に、ギャーギャーという耳障りな声を聞かなくてよくなるね。



「う、うへへっ。メスオーガのパイパイじゃ~」

「ギャー、化け物ー!」


 なお、これまでは垂れ乳をしていたリゲル妻だけど、ゴブリンからオーガに進化した影響で、乳が2つに減ったものの、かなり大きな胸になっていた。

 当然、それを我が家の変態おっさん幼女は見逃さない。

 顔がクリーチャー化して、涎をまき散らしながら突撃していた。


「うほほー、乳が減って栄養が分散しなくなった分、巨大になったんだなー」

「やめろー、オデの母ちゃんの乳に触っていいのはオデだけだー」

「やかましかー、黙っとれー!」

「ゴフッ!」

「リゲルー!」


 リゲル妻を巡る戦いが発生したけど、リゲルくんはミカちゃんの攻撃で即沈んでいた。

 オーガになっても、所詮ドラゴニュートの敵でないので仕方ない。

 でも、僕は関与しないよ。

 ミカちゃんには、何をしても無駄だと悟ってるから、関わるだけ無駄だ。


 とはいえ、言っておかないといけないことはある。

「ミカちゃん、リゲルくんを殺さないようにね」

「パイパイ~」

「ギャヒヒーン」


 ……ああ、聞いちゃいねえ。

 リゲルくんがピクピク痙攣して地面に倒れているけど、死んではないよね?

 あと、リゲル妻が物凄く感じてる様なんだけど……



 そしてこの一連の光景を、兄弟たちも見ていた。


「ワー、パイパイだー」

「クッ、ただの筋肉胸のどこがいいんですか。あんなのより、私の方が大きいのに……」

「ドラドも大きくなりたいなー」

「皆、あっちに行って遊ぼうね」


 こんな光景を、2歳児にはとても見せられない。

 ユウが兄弟たちを、この場から急いで連れだしてくれた。


 それにしてもカちゃんって、本当にどうにかならないかな。


 ――ガンッ

「ヒデブー」


 とりあえず、ミカちゃんが静かになる"おまじない(物理)"を施しておこう。



 この後僕は、この村にいるゴブリンたちに魔力を注いでいって、ゴブリンをホブゴブリンへ進化させていった。


 オーガにまで進化させるには多量の魔力がいるので、ゴブリンの上位種であるホブゴブリンでいいよね。

 ホブゴブリンになるだけでも、ゴブリンよりかなりマシな労働力になってくれるから。



「我が社のために働く、立派な労働者になれよー」

 魔力を注いでいきつつ、僕はこれからの労働者に期待の声をかけていった。


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