26 見た目は幼女、中身は27歳の変態エロ親父
前書き
変態エロ親父に注意。
(R18ではないよね、多分?)
「アッ、アヒー。フッ、フヒー、フハハーン」
我が家のドラブルメーカーというか、トラブルそのものであるミカちゃんが喘ぎ声を出している。
顔は真っ赤に染まって、物凄くだらしない顔。あまりに酷くて、口の端から涎が垂れてるほどだ。
ただし、いつもの顔面崩壊したエロ親父のにやけ顔ではない。
幼女なのに、感じちゃって真っ赤になってる顔だった。
「こ、このクソガキがー!」
そして大激怒したかと思うと、ミカちゃんはたった今までミカちゃんの胸を揉んでいたレオンを拳で殴りつけた。
「フギャー」
ミカちゃんの放ったアッパーが、レオンの顎を見事にとらえ、体が空中に浮かぶ。
人間相手のボクシングだったら完全に決まってる。
あまりに決まりすぎてて、顎の骨が大丈夫か?命に別状はないか?ってくらいの決まり方だ。
相変わらず蛮族野生児なので、ミカちゃんは無駄にパワーがある。
そしてレオンの体は空中に吹っ飛んだあと、数回弧を描いて地面に激突した。
「ハギャー」
と情けない声を出した後、地面の上でしばらく目を回していた。
今頃頭の中で、お星さまが回ってるだろう。
もっともこの程度の攻撃では、ダメージは入っても、すぐに回復してしまうのが僕たちドラゴニュートだ。
なお、さっきまで胸を揉まれていたミカちゃんは、両目にうっすらと涙まで浮かべていた。
いつも好き勝手しまくりのミカちゃんが、涙を浮かべるなんて珍しすぎる。
「ハーハー、このド変態の弟め!貴様は一体何をしでかしてるんじゃ!」
そしていつも迷惑ばかりかけて、怒られているミカちゃんが、珍しく逆に怒ってる。
ただ、いつもミカちゃんを怒ってるのは、僕だけどね。
他の兄弟なら、ミカちゃんが問答無用で鉄拳制裁を加えて黙らせてしまうので、ミカちゃんを怒れる兄弟は僕しかいない。
僕ならミカちゃんの攻撃に対して、カウンターとかあっさり決められるから。
「相変わらずミカちゃんって暴力的だよね。力さえあればなんでも自分の思い通りになるって思ってない?」
「兄さんがそれを言うの……」
あれ?
なぜかユウが僕を白い目で見てきた。
どうしてだろう?
まっ、それはさておき。
今回の事件はミカちゃんがレオンに胸を揉まれて、変に感じちゃって、そして大激怒した。
それがこの事件の全てだ。
そしてレオンをぶっ倒したミカちゃんは、柄にもなくまったいらな胸を両手で隠しながら、涙目のままレオンに向かって言った。
「いいか、男ってのは女の胸を揉むから、楽しいんだ、嬉しいんだ、最高なんだ!
なのに、逆に揉まれて喜ぶ男なんて、ただのド変態なんだよ。最低なんだよ!頭がおかしいんだよ!」
「で、でもミカちゃんは女の子じゃない」
「黙れ!俺は男だ!」
兄弟たちに対して、たまに巨乳の素晴らしさを力説し、聖職者が説法を垂れるように、滔々とその素晴らしさを語っているミカちゃん。
前世のおっさん趣味全開の教育を兄弟たちにしているミカちゃんは、将来巨乳に成長するようにと、次女フレイアの胸をよく揉んでいる。
なお、巨乳好きであって、ロリ趣味は断じてなしとの事だ。
しかし今世では、まだ生まれて数カ月。人間にしたら4、5歳児の幼女の姿だというのに、妹に対してセクハラを日々しているおっさんだ。
今世でのミカちゃんは一応幼女なので、同じ幼女のフレイアの胸を揉んでも……犯罪ではない……と思う。
犯罪ではないかもしれないが、やっぱりミカちゃんの中身は前世のままおっさんだった。
そして見た目が幼女でも、中身がおっさんのままなので、
「いいか、男なら巨乳を揉んで楽しむんだ!揉まれて楽しむ男は、男じゃねえ!」
と、力説した。
「「……」」
いや、僕もユウもドン引きだよ。
ミカちゃんの頭がいかれてるのは知っていたけど、もう手の施しようがない末期症状だ。
「ってことで、傷心のお姉ちゃんの心を癒しておくれ、フレイアー」
その後勝手に立ち直って、ミカちゃんはおっさんのだらしないにやけきったたエロ顔になって、次女のフレイアへ突撃していった。
「あ、あひん。ああん。ミ、ミカちゃん……」
そして両手で胸を揉まれて、喘ぎ声を出し始めるフレイア。
「グヘヘヘヘヘッ、フレイア。お前のお胸が、将来絶対に巨乳になるようにしてやるからなー」
またしても口から涎を垂らしだす、おっさん。
見ているだけなら、幼女同士が胸を揉んでいるので犯罪ではない光景だと思う。
ただ片方が喘ぎ声をあげ、もう片方は物凄く欲情している。
見た目が幼女でも、中身が27歳のおっさんがヤバすぎる。
僕はエロおっさんの蛮行を止めるため、背後からその頭をガシリと拳で握った。
「あっ、こら、レギュレギュ。今いいところなんだから邪魔するなー!」
「やかましい、変態親父」
「ヒエッ、ウギャギャギャギャー」
そのままおっさんの頭が砕ける勢いで手に力を籠める。
「ギブギブ。ちょっ、マジで死ぬ。頭がはじけ飛ぶ。ヒエー、レギュ様やめてー」
手加減抜きでマジで力を入れたので、ミカちゃんはかなり悲痛な声を上げていた。
ただどうせ数分でこの痛みを忘れて、ケロッとしているのがミカちゃんだけどね……。
「実は俺、昔神殺しをしでかしてしまったんだ」
変態親父が無垢な妹に襲い掛かる蛮行を懲らしめ終えた後、事件の犯人が滔々と話し始めた。
何やら神妙な顔をしているミカちゃん。
「神殺しってなんだろう?」
「どうせミカちゃんの事だから、ろくでもない事だろう」
意味不明な言葉に、ユウは首を傾げている。
僕はミカちゃんを白い目で見るだけだ。
そんな僕たちの前で、ミカちゃんの独白が続いていく。
「俺の前世の日本には、VRゲームがあったって話しただろう。あるVRゲームで、操作キャラを相当自由に作れるゲームがあったんだけどさ、そこで俺好みの超爆乳で、馬鹿っぽい顔したお姉さんを作ったんだ」
「つかぬことを聞くけど、ミカちゃんは馬鹿な女が好みなのか?」
一応、ミカちゃんの中のエロスイッチが、どういう時に入ってしまうのかを確認しておくため、尋ねておく。
「フッ、レギュレギュそれは違う。俺は巨乳であれば、見た目は問わない。美人でも、非美人でも、中年のおばちゃんでも、人妻でも全く無問題だ!
いや、むしろ人妻の方が背徳感があって余計に燃えて……。
だけど、巨乳の馬鹿っぽい女って超最高!」
ギュッと両手の拳を握り締めるエロ親父。
聞いた僕が悪いんだけど、頭痛がしてくる。
それとミカちゃんの今世の姿は、変な顔してさえなければ天使のように愛らしい顔立ちをした幼女だ。
頼むから、そのにやけて元の顔が完全に崩れた、エロ親父顔にならんでくれ。
「……」
そしてユウが完全にドン引きしている。
「年増ー?」
「人妻って何?」
「オッパイ、オッパイ」
「GYOー」
あ、いかん。
教育上大変よろしくないミカちゃんの言葉が、純真無垢な兄弟たちにまで聞こえている。
「ユウ、兄弟たちとあっちで遊んできてくれ」
「わ、分かった。皆ー、あっちに行って遊ぼうねー」
ユウが兄弟たちを遠ざけてくれる。
そして兄弟たちが遠くへ行った後も、ミカちゃんの話は続く。
「でさ、俺好みのキャラ作って、早速ゲームの中で乳を揉んだんだ」
「お、おうっ」
ミカちゃんの中の人こと、前世のエロ親父鈴木次郎氏は、ろくなことをしないな。
「でもさ、でもさ。揉んだ瞬間に俺はとんでもない過ちを犯したって理解させられたんだ。揉んだら、その……なんだ。感じちゃったんだよ。揉んで感じる喜びじゃなくて、揉まれて感じちゃう喜びを。いくらVRでの仮想の感覚とはいえ、あれは酷い。酷すぎた……」
「……」
そこで泣き始めるミカちゃん。
「うううっ、あれは男が知っていい感覚ではなかった。胸を揉まれて喜ぶなんて、男の知っていい事じゃない!あれは、世界の心理に対する冒涜、神殺しの大罪だった!」
「……」
項垂れてしまい、地面に膝を付いてグスグスと鼻水まで垂らして泣きだすミカちゃん。
「さーてと、僕も弟妹達と一緒に遊ぶかー」
なんかミカちゃんにとっては深刻な事らしいけど、このおっさんには付き合いきれないので、僕は無視することにした。
「レ、レギュレギュ。どうして逃げようとする!お前には、男として俺が犯した大罪が理解できないのか。この、胸を揉まれ……」
「訳が分からんよ、エロ親父」
ああもう!
ミカちゃんに真面目に付き合うんじゃなかった。
要はVRゲームで、女キャラ作って胸を揉んだら、感じちゃったってことでしょう。
それが神殺しだなんだとか、マジでどうでもいい。
「こっちに組んな、変態野郎!」
「ヘブシッ」
ミカちゃんが気持ち悪い顔して、涙を流しながら近づいてきたので、僕は足で蹴り倒しておいた。




