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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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263 ゴブリン村の反乱 (リゲル視点)

前書き



 前回書いてから、4、5ヵ月ぶりに書いたので、少し文章とか変わってるかもしれません。

 オデは果実酒を作った。


 と言っても、前世の地球にあった果実酒とは全くの別物。

 腐りかけた果物は発酵が進んでいて、度数がかなり低いがアルコール分をもっている。

 それを絞って作ったのが、今回の果実酒だ。


 アルコールを作るなら穀物を発酵させるのが一番だけど、あいにくこの世界に転生してから、穀物を目にしたことがない。

 度数を上げるなら蒸留という手もあるが、ゴブリン村でそこまでの設備を用意するのはさすがに無理だった。


 なので、なんちゃって果実酒。フルーツドリンクと大差ない代物だ。


 ただ、こんな物でもゴブリンが飲むと普通に酔っぱらう。

 気分がちょっと良くなる程度の変化だけど、酔うには酔うのだ。


 酒に慣れてない体なので、低度のアルコールでも、そうなってしまうのだろう。




 そしてある日、オデと虐げられているゴブリンたちはついに決起することを決めた。

 そのためにリガルの目を盗んで、以前からゴブリンたちに武器を横流ししていた。

 とはいえ、リガルたちと正面から戦ったら、オデたちの負けは目に見えている。


「狩りから帰ってきたぞー」

「今日も大量だったぞー」

「おい、俺の女房。飯を持って帰ったぞ」

 だから俺は、狩りに出ていたゴブリンファイター(ファイター)たちが村に帰ってきた日を狙った。


 狩りから帰ってきたリガルに、ファイターたち。

 ゴブリン村では狩りが成功すれば、ちょっとしたお祭り気分になって皆気が緩くなる。


 そこで俺が、

「試しに作ってみた酒だ。うまいぞ、皆もこれを飲んでみろ」

 そう言って、リガルと手下のファイターたちに、祝い酒を用意した。


「んっ?変な味だな。でも気分がとてもよくなるぞ」

「たくさん作ったから、どんどん飲んでくれ」

「おおっ、こいつは気分がよくなるなー」


 リガルだけでなく、ファイターたちも酒を飲んで皆気分を良くする。

 そこに狩りで得た獲物を料理して出していくことで、リガルの一派は宴会気分で酒を飲む速度が上がり、上機嫌になっていった。


 リガルが連れてきたトロールにも、酒を飲ませていく。


「ゴクゴクゴクゴクゴクゴク」

 だけど、見た目がまるで巨大な豚。腹が丸々と突き出たトロールには、いくら飲ませても、まるで酔う気配がない。

 まるでザルだが、それでもオデはトロールにも大量の酒を飲ませ続けた。



 やがて、宴会気分でいたリガルたちが酒の力に負けて、すっかり泥酔してしまう。


「ムニャムニャ」

「もう食えねぇー、ゲプッ」

「グヘヘッ、俺の女なんだから黙って抱かれてろよー」


 ファイターのある者は酔い潰れて眠ってしまい、ある者は食べ過ぎでトロールみたいに腹を突き出して寝転ぶ。ある者はメスゴブリンを連れ込んで、ろれつの回らない口調で卑猥なことを始めようとしていた。


 だが、これでリガルたちは完全に酒にやられた。


「皆今だ、リガルたちをやっちまえ!」

「「「オオオオーーーッ!!!」」」

 この時を待っていた。


 リガルたちが酔い潰れたのを見て、オデとこれまで虐げられてきたゴブリンたちが武器を取って一斉に蜂起した。


 ここでリガルたちに勝って、村を取り戻さなければならない。


「なんだ、奴隷どものくせして、ヒック。俺たちに逆らうナー!」

 酔ってはいても、リガルの奴は反応が早かった。


「おい、お前ら起きろ、ヒック」

「ううっ、頭がイデー」

「大声を出すな、ズキズキする」

 だがリガルが迎撃の指示を出すけれど、酔っぱらったゴブリンファイターたちの動きはかなり鈍い。


「チッ、役立たずどもが。おい、トロール、お前も黙ってないで働け!奴隷どもをぶちのめして大人しくさせろ!」


 ――GUOOOーー!!!

 あれだけ酒を飲ませ続けたのに、ファイターと違って、トロールの奴はリガルの命令を受けて動き出していた。


「クッ、不味いな。だけどここで負けたらオデたちはお終いだ。皆、なんとしてもリガルを倒して、この村を取り戻すんだ!」

「オオーッ!」


 オデは今まで虐げられていたゴブリンたちを鼓舞して、リガル一派との戦いに臨んだ。



「ギャー」

「ヒギャー」

 虐げられてきたゴブリンには、俺が横流しして渡した武器が握られている。

 酒に負けて眠り込んでいるファイターは、戦闘に参加することもなく、あっさり倒していけた。


「おらおら、弱いなー。お前らただのゴブリンとは、俺様たちは違うんだよ!うう、頭がイデェー」


 だけど未だに酔っていても、意識が残っている奴がいる。

 そんな奴ら相手でも、虐げられてきたゴブリンたちでは、ファイターに勝てなかった。

 虐げられ続けたゴブリンは、ろくなものを食べることが出来ず、餓え続けてきた。


 棒切れの様に細い体のせいで体力がなく、ファイターが振る剣を受け止めようとすれば、力で押し負けてしまう。

 相手が酔っぱらって本来の力を発揮できなくても、この有様だ。


「畜生、とにかく数だ。一斉に襲い掛かれば、いくらファイター相手でも負けないはずだ!」

 そんな弱いゴブリンでも、複数でファイター1体を相手にすれば、なんとか勝つことが出来た。


「クソ!俺がただのゴブリン如きに!」

「ギャー」

「グワー」


 だけどファイター1体に勝つのと引き換えに、オデの仲間であるゴブリンが何体も剣で斬られ、槍で刺殺されて行った。


 とてもではないが、まともな戦いになっていない。

 ファイターが酔っていても、ただのゴブリンはこれほどまでに弱い。


 それでもオデたちは数を頼んで、リガル一派をなんとしても倒そうと奮闘した。


 ――GUOOONN!

「フギャー」

「グワー」


 だけどそんな中、オデたちの戦いをあざ笑うかのように、トロールの奴が暴れ出しやがった。

 奴はオデたちゴブリンの体よりもっと巨大な丸太を振るい、ただの一振りでゴブリンを4、5体まとめて吹き飛ばしていく。


 吹き飛ばされたゴブリンは、口から血を吐き出し、首がおかしな方向に曲がる。そのままピクリとも動かなくなって、地面に横たわってしまった。


「あんなのに勝てるわけがねぇ」

「ヒ、ヒエエエーッ」


 ファイター相手ですら苦戦していたオデたちだが、トロールの強さに圧倒され、ゴブリンの一部が恐慌状態に陥って逃げ出してしまった。


「ま、待て。逃げずに戦わないと!」

「馬鹿言え、やっぱり俺たちがリガルと戦うなんて無理なんだ。トロールだけじゃねえ、他にもたくさん仲間が死んでいって……」


 ゴブリンに指摘されてオデが周囲を見回してみれば、トロール相手に殺されたゴブリンだけでなく、ファイターと戦い、それで多くの仲間が死んでいる光景があちこちに広がっていた。


「逃げろー!」

「うあああーっ!」

「た、助けてくれぇー」


 この惨状に一部のゴブリンは逃げ出し、一部のゴブリンは恐慌に陥って、我を忘れて訳の分からない行動を取り出す。

 ファイターの前で跪いて、命乞いをする者もいた。


 ゴブリンたちは、既にリガル一派と戦うのでなく、負けを認めてしまっていた。

 もともとオデたちゴブリンは、臆病で弱い生き物だ。

 狩りに出た時も、モンスターと戦うのでなく、逃げてばかりだったのがオデたち。

 リガル一派に虐げられ続けて決起したものの、その性が出てしまい、オデたちの抵抗はあっさり挫けてしまった。


「そんな、ダメだ。みんなここで逃げたら駄目だ!リガルの横暴をこのままに……」

 オデは負けを認めていくゴブリンたちに、なんとか踏みとどまるよう声を掛けようとした。


「この野郎、今までいい目に合わせてやったのに、俺を裏切りやがったな!」

 そんなオデの耳にリガルの怒声が聞こえたと思った瞬間、オデは頭に鈍い衝撃を受けて気を失ってしまった。


 こうしてオデたちの戦いは、あまりにあっけなく負けてしまった。




 次にオデが目覚めた時、オデの前にはリガルの奴いがいた。


「いいか、リゲル。お前は鍛冶師として代わりが利かないから生かしてやる。だが、お前は自分の仕出かしたことの報いを受けろ!」

「あ、あああっ、なんでオデの子供たちが……ウ、ウアアアーッ」


 リガルの奴は、オデが二度と反旗を翻さないようにと、オデの子供たちを次々に殺していった。

 10人以上に増えていた子供たちが、オデの目の前で次々に殺されて行く。


「ギャアアー!」

「とうちゃーん!」


 こんな、こんな事のために、オデは戦ったわけじゃなかったのに……



「いいか、次に俺を裏切れば、お前の女房も無事じゃすまないからな」

「なっ、母ちゃんを人質にするつもりか!」

「当たり前だ!お前はそれだけのことを仕出かしてくれたんだからな!」

「グハッ!」

 オデはリガルに腹を蹴られ、胃の中の物を吐き出して、その場で蹲ってしまった。


 それでも、リガルはオデを殺すつもりがなく、生かされた。

 リガルが天下を取ったゴブリン村で、奴の一派のために、武器と防具を作り続けるために生かされのだ。


 子どもたちを殺され、母ちゃんを人質に取られてしまったオデには、もうリガルに逆らうなんてできなかった。

 ただ奴の言われるがままに、鍛冶師として武器防具を作るしかなかった。



 オデだけでなく、反乱に失敗したゴブリンたちも、リガルに逆らうなんて勇気はもはや微塵もない。


 オデたちゴブリンの反乱は、こうしてあっけなく幕を閉じてしまった。


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