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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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257 武器の試行錯誤(リゲル視点)

 木こりに転職(ジョブチェンジ)しかけたオデだけど、あの後切り倒した木で、"石斧"と"石槍"を作ることに成功した。


「これがあれば、モンスターと戦えるはずだ」

 出来上がった武器にオデは満足。


 こうしてオデたちは再び狩りの旅になったのだけど、

「おお、この石槍は便利だぞ!高い所にある果物を取りやすい」

 旅の途中で見つけた果物を取るために、高枝切狭として活躍してくれた。


 ま、まあ、オデの作った道具が役に立ってくれるのは嬉しい。

 嬉しいのだが、それは武器であって、高枝切狭ではないのだが!


 そしてその後オオイノシシに遭遇して、

「ウワー、逃げろー」

 と、ゴブリンたちはいつものように蜘蛛の子を散らすように逃走。


「これでもくらえっ!」

 ただ、中には勇敢なゴブリンもいて、その1人がオオイノシシに向かって石斧をぶん投げていた。


 それ、投げるんじゃなくて、手にもって戦う武器なんだけど……


 ――ドシンッ


 それでもゴブリンがぶん投げた石斧は、見事オオイノシシの顔面に命中。

 オオイノシシの顔面から血が出て、武器としての効果があった。


 だけど、

 ――ブモオォォォォォーーー!!!


 致命傷には程遠かったようで、余計にオオイノシシを怒らせる結果になってしまった。

 オオイノシシが怒気を上げ、突進する速度も上がる。石斧を投げたゴブリンは、突進してきたオオイノシシの牙で胴体を突き刺されて即死した。


「……」

 オデは、仲間を死なせるために武器を作ったんじゃない。

 なのに、どうしてこうなってしまったんだ。


「オデのしたことは、無駄だったのか……」

 オデは後悔してしまった。


「何悩んでるんだ?俺たちは死んでもまた増えるから、全然問題ないぞ。むしろ、リゲルの作った石槍のおかげで、今回は果物を大量に取れてよかったな」

 オデを励ましてくれたのは、父ちゃんだった。


 人命軽視というかゴブリンの命って何なのって言いたくなるセリフを吐いてるけど、石槍は役に立ってくれたらしい。

 ……高枝切狭としてだけど。


 それでも作った物が全く何の役に立ちませんでした、という結果に比べれば、いいけどさぁ。


 それに石斧にしても、オオイノシシにダメージを与えていた。

 少なくとも、自分たちより手強い相手にダメージを与えることが出来る。

 それが分かったのだから、オデのしたことは完全に無駄だったわけじゃない。




 この狩りの後、オデは狩りの旅で偶然見つけたモンスターの死骸の骨を持ち帰った。


 ゲームとかだったら、モンスターの死骸からドロップしたアイテムで、武器や防具を作れる。


「いやいや、さすがに現実(リアル)でそれは無理だろう」

 と、オデのまともな理性は告げてくるけど、木1本切り倒すのにも何十日もかかる生活をしている。

 前世みたいに簡単に物が手に入る環境でないので、モンスターの骨でも貴重な資源だった。


 そしてものは試しと、この骨を使って武器作りを考える。


 まずは石斧や石槍の柄の部分を、木の代わりに骨にしてみた。


「……木を切り倒す時に、全然壊れない」

 刃の部分は相変わらずの石製なので壊れやすいが、骨製にした柄の部分が全く壊れない。

 今まで使っていた木製の柄より、耐久力が滅茶苦茶高いんだけど!


 これだけ頑丈ならと、試しに骨を折って、槍にしてみることにした。

 骨製の槍だから、"ボーンスピア"って名前でいいだろう。


 ただし物凄く頑丈な骨だったので、それを折るのに滅茶苦茶苦労した。


 自力では無理だったので、森に生えている蔦に石を括り付ける。

 蔦を高い位置にある木の枝に投げて、引っかける。


 これで蔦の片方を引っ張れば石が持ち上がり、蔦から手を離せば高い位置に持ち上げた石を落下させることが出来る。

 高い場所に持ち上げた石の力で、骨を折ることにした。


 ――ガーンッ

「よいしょ、よいしょ、よいしょ」


 ――ガーンッ

「よいしょ、よいしょ、よいしょ」


 ――ガーンッ

「よいしょ、よいしょ、よいしょ」


 ロープ代わりの蔦を引っ張って石を持ち上げ、それを落とす。また持ち上げて、落とす……

 その作業を延々10回以上続けた。


「ぜえっ、はあっ、ゼェゼェ。どれだけ頑丈なんだよ」


 何十回繰り返したのか分からない。

 ただ終わりがないように思える作業を延々と繰り返した結果、なんとかオデは骨を折ることに成功した。


 折れた骨の先端は鋭くなっていて、切れ味が凄そう。

 どれだけ鋭いのか試しに指で触ってみると、

「痛っ!」

 オデはとっさにボーンスピアから手を引っ込めた。

 それだけで、オデの指に赤い血の球が浮かび上がる。


 普通の刃物だと、手を置いただけでは切れない。

 必ず力を込めたり、引いたり押したりの動作があって、初めて刃物は切れるようなる。

 だけどボーンスピアは先端が鋭すぎたせいで、力を入れなくても、オデの指を簡単に切れた。


「これは鋭いなんてものじゃないだろう。でも、これだけの切れ切れ味なら、モンスター相手でも戦える」


 オデは、ボーンスピアの性能に満足した。




 このボーンスピアは狩りでも十分以上に活躍して、それまでオデたちをただの獲物扱いしていたオオイノシシを、突き刺して殺すことが出来るようになった。

 さらに、毒蛇も殺すことができた。


 これでオデたちには敵がいなくなった。

 なんてことは言えない。


「ギャー、オデの腕が腕がー!」

「おい、動けよ?動いてくれよ!」

「ゴフッ、ゲホッ、ゴホッ」


 武器のおかげでモンスターと戦えるようになったけど、それでもオデたちは弱い。

 オオイノシシとの戦いで、ある者は体当たりを受けて片腕を根元から持っていかれ、オオイノシシの牙に貫かれ、足で踏みつぶされ……

 またある者は、毒蛇の毒によって殺され、体に巻きつかれて絞め殺されたり……


 モンスターと戦えるようになっても、戦いの度にオデたちゴブリンにも相当な犠牲がでた。

 あくまでも戦えるようになっただけで、犠牲なしで勝てる程、モンスターは弱くなんてなかった。


 でも、おかげで倒したモンスターの肉を、オデたちは手に入れられるようになった。

 肉を食えば、力が湧いてくる。


 前世の世界みたいな贅沢はできないけど、肉が手に入るようになったことで、オデたちの村の食生活は、以前より格段に良くなった。

 前は食べ物が乏しすぎて全員が餓えていたのに、それがかなりマシになった。


 相変わらず腹は減るけど、でも飢餓というほどではなくなった。


「リゲルが作ってくれる道具は役に立つな」


 狩りでの実績から、オデは村でも武器を作る鍛冶師として、認められるようになった。


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