25 岩を掘っても、石炭も鉄鉱石もダイヤも出ない……
自宅の拡張工事をした結果、岩場にできた大穴の横に、もう一つ大きな部屋を作った。
新しい部屋は、採光を取るため、崖に面した位置に部屋を作らなければならない。
僕たちの住んでいる環境には、照明として電気がなければランタンも蝋燭もないので、部屋に太陽の光が入ってこないと、真っ暗になってしまう。
真っ暗闇でも見通すことができる暗視スキルなんてないので、採光を取ることが必要だ。
なので新しく作った部屋は、位置的には崖に面している。
そして新しい部屋には、最初明かり取りの窓代わりの穴をいくつか空けていたけけど、それでは暗すぎたので、窓の大きさを広げているうちに、いつの間にか崖側の壁を全てぶち抜いてしまった。
家の内側と外までの空間が一体になった、見晴らし抜群の抜き抜け部屋だ。
吹き抜けと言っても上方向でなく、横方向の拭き抜けだけどね。
このままだといつも走り回って遊び回っている兄弟たちが、外に落ちかねないので、安全対策として劣化黒曜石で柵を作っておいた。
僕らドラゴニュートの体は頑丈だけど、さすがに100メートルの高さから落ちたら、ただじゃ済まないだろう。
それに羽があってもまだ飛ぶことができないので、落ちて無事だったとしても、家に戻ってこれなくなる。
それでも、なんだかんだで自宅の拡張はできた。
最初からある木造の巣に、その奥にいつの間にか出来上がってしまった岩場の大部屋。そして新しく作った大部屋がひとつ。
今回作った大部屋は、今までに作った道具類をしまっておく倉庫や、道具製作時の作業場として使っていく予定だ。
巣とその奥にある洞窟が、僕らのメインの生活スペースになっている。
と、こうして自宅の拡張をしたわけだけど、
「兄さん、僕たちってドワーフだっけ?」
「……」
ユウの意見だ。
僕らは、岩場を掘り抜いて自宅を拡張したんだよね。
これって間違ってもドラゴニュートのすることじゃないよね。今は未発育なせいで飾り状態だけど、空を飛ぶための翼があるのに、どうして岩場なんて掘ってるんだろう。
そんなことを思っていると、隣にミカちゃんがやってくる。
「そういえば俺のいた地球だと、洋ゲーで、ドワーフたちが穴を掘ってそこを自宅に改造していくシミュレーションがあったな。Craft The Wor○dってタイトルのゲーム。
それとも、似たようなので、Gnomori○とかStoneheart○かな?」
「僕のいた地球でも、そんなゲームあったなー。地面を掘って自宅を作って、そこに家具や内装を置いてくゲームでしょう」
「そうそう、それだよ」
蛮族で野生児のミカちゃんだけど、実際前世は日本人だったので色々ゲームをしている。
そういう話をしてたら、なんだか地球にいた頃が懐かしいなー。
僕にとっては、前々世の出来事なので、もう2000年以上前のことだけど、いまだにそんなことを覚えてる。
なお、ユウは洋ゲーに詳しくないようで、傍で「へー」って、適当に相槌を打っているだけだ。
「あとは有名なスティーブクラフトってゲームだな。あれは地面を掘ってブランチマイニングして鉱石集めるよな。
俺、あのゲームでは地面の下を掘って、そこを自宅にしてたなー」
「ああ、スティーブクラフトね。僕のいた日本でもあったよ、あのゲーム」
「あ、僕もプレーしてました」
「おお、マジか!」
なんだかんだで、僕らは地球でのゲーム話にいつの間にか話題が転化していた。
ちなみにスティーブクラフトと言うゲームでは、主人公のマインという名前のおっさんを操作する、サンドボックス型のものづくりゲームだ。
全てが四角いキューブの世界を舞台にして、畑を耕して作物を育てたり、地下洞窟の探索をして鉱石ほ集めたり、モンスターと戦ったり……。
僕がいた地球では、あのゲームは累計で一億本以上の販売数を誇っていた。
赤い服を着た配管工のおっさん操作する、世界的な超大ヒットゲーム以来の販売数を誇るゲームだ。
「ならさ、直下掘りしてダイヤ堀りに行こうぜ」
「そのまま溶岩ダイブするんだね」
直下掘りしたがるミカちゃんに南無南無と手を合わせて拝んでおく僕。
スティーブクラフトでは、地面を真下に掘って行って、地下に眠るダイヤを発掘するロマンプレーがある。そしてロマンに失敗すると、地中深くにある溶岩の池に落ちて、そのまま焼死だ。
「このまま岩を掘っていけば、石炭とか鉄鉱石が出てこないですかね?」
「だよねー。鉄があればもっと壊れにくい道具を作れるのに。劣化黒曜石製の道具は耐久が低くて、すぐに壊れるんだもの」
「てかさ、あのゲームだと黒曜石を掘るには、ダイヤのピッケルじゃなきゃ掘れないだろ。なのに、なんでレギュレギュの作る劣化黒曜石の道具はすぐに壊れてばっかりなんだよ。ダイヤより黒曜石の方が硬いはずなのにさー」
「ああ、ここがゲームの世界だったら、黒曜石製のツールってチートだったのに」
「でもあのゲームはmodを入れないと、黒曜石製のツールは存在しなかったですよね」
そのあとゲームの話で、ワイワイ盛り上がる僕たち3人。
元日本人の男三人が集まると、共通のゲームの話になっても仕方がない。
とはいえ、地球での話を他の兄弟たちは理解できない。
「兄さんたちなんだか楽しそうだね」とは、三男のレオン。
「レギュ兄さんの話はいつも難しい」これは、三女のリズ。
「GYOOー」
末っ子で四女のドラドは、日本語が喋れないので鳴くだけ。
そんなドラドの頭を、次女のフレイアが撫でていた。
あとがき
作中に登場したゲームは、マインさんが主人公のスティーブクラフトです。
間違ってもスティーブさんが主人公の、マインクラフトなんてゲームではないですw
(マイクラがだめなら、テラリアでも……ゲフンゲフン~)




