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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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247 モンスターをリアルで仲間(手下)にする方法

 ――ギ、ギャーァ………………


 こんにちはレギュラス・アークトゥルスです。

 本日僕は転位魔法陣を使って、第二拠点へやってきています。

 今回の目的は、自宅で作った薬一式の効果を確かめるため、動物実験を行うこと。


 なーに、全然怖くないよー。

 一種類だけある毒薬以外は、生死にかかわらない薬だから心配する必要ないよー。

 お薬(じっけん)の時間なので、実験動物(モルモット)は大人しくしてようねー。


 というかさ、

「こいつ、どう見ても死にかけてるな」

「……ギャー……」


 第二拠点に来た段階で拘束されているゴブリンがいたので、それをモルモットにすることにした。

 だけど薬を投与する前から、既に鳴き声が弱々しい。

 おまけに白目を剥いていて、口から白い泡までブクブク出している。


 死にかけというか、今まさに三途の川でご先祖様に対面中って感じかな?


「どうしてこうなるんだ?」

「分かりかねます」


 僕だけでなく、ドナンにも理解不能。

 こんな死にかけでは、薬の実験台にする前に事きれてお終いだ。


 ……よし、少し冷静になって考えてみよう。

 この第二拠点の周囲なんだけど、もともとろくな草も生えてない荒れ地だった。

 それでも全く草がなかったわけじゃない。

 でも、最近その草が全滅したんだよね。


 あと、この前西の森(ウエストフォレスト)から帰るときに第二拠点に寄ろうとしたら、採取した薬草や果物などの植物がいきなりシワシワと萎れだしたので、拠点に植物類は入れないように注意した。


 なぜ、そんなことが起きるのかだって?

 それはこの第二拠点が、アンデットたちの巣窟だからだ。


 それもダークエルダーリッチとなったドナンに、そのドナンより強い3体のシャドウたち。

 極めつけは最高位アンデットである、デネブアンデットと13魔将の連中。


 こいつら全員アンデットだから、生者との相性は最悪。

 ただそこにいるだけで死の気配を振りまき、生き物の生命を奪い、植物だって枯らしてしまう。


 僕たちドラゴニュート兄弟にはそこまで害悪にならないけど、もしここに普通の人間がきたら、死の気配にやられてぶっ倒れるか、最悪死ぬね。

 まして人間よりひ弱なゴブリンでは、その命がどうなるかなんて考えるまでもない。


 ……そう、考えるまでもないんだよ。


「ああ、そうか。そりゃあ、この拠点の中にいたら、ゴブリンなんて普通に死ぬな」


 最高位の死霊(アンデット)が住まう第二拠点とあって、ゴブリンの命なんて、その気配だけであっさり刈り取られてしまう。


「これじゃあ、第二拠点で薬の実験は無理だな」


 生死の危機にたたされる場所で、薬の回復効果を確かめるなんて全く無意味。

 回復以前に、死んでしまう。


「せっかく作った薬なのに、実験はまた機会があるときにするか」

 動物実験が出来なくて残念だけど、今回は仕方がないと諦めることにした。


「ところでこのゴブリンですが、いかがいたしましょうか?」

「使い道がないからどうでもいいぞ」

「では、このまま放置しておきましょうか。どうせこの場所で死ねば、そのままアンデットになるでしょうから」

「だな」


 第二拠点は死者の都。

 この場所に溢れる濃密な死の気配をもってすれば、ここで死んだ者は即座にアンデットとして蘇ることになる。


 ……なんというか、第二拠点がマジ物の"不死者(アンデット)の城"、"暗黒神殿"、"魔王城"と化してしまってる。

 作り物とはいえ、本物の魔王クラスの実力者(アンデット)が複数いる場所だから仕方ないね。


 そしてアンデットは便利なので、今後も第二拠点はアンデットメインで利用していくつもりだ。






「しかしアンデットが便利とはいえ、あいつらだと畑仕事や畜産業をさせられないからな」

 第二拠点から転位魔法陣を使って、自宅へ戻った。


 相変わらず魔法陣に吸い取られる魔力量の多さに辟易しつつも、僕はこれからの事を考える。


 アンデットは疲れることがなく、不眠不休で活動し続けられる。おまけに水も食料もなしで活動できるので、まさに労働の黄金律を満たした存在だ。

 奴らは働くために存在していると言っても過言でない。スーパー労働力だ。


 なんだけど、残念なことに死の気配を周囲に放つので、自然と生物への相性が最悪だ。


 この前試しに、ダークスケルトンにウエストフォレスト近くの肥えた土地で畑仕事をさせてみたけど、食物が育つことなくすべて枯れてしまった。

 アンデットの放つ気が、植物の生命力を奪ってしまったのが原因だ。


 そして炭焼き小屋や木材の伐採をダークスケルトンたちにさせているけど、将来的にはこれをアンデット以外の者にさせた方がいい。


 今は木が持っている生命力が大きいから、ダークスケルトンの死の気配に対抗できているけど、長期間さらされれば木が枯れる危険がある。

 ましてや13魔将なんて連れて行こう日には、森全体の木が死に絶える危険すらあった。


「うーん、アンデット以外か。と言っても今までにこの世界で会ったのって、ろくな知能のないモンスターだからなー」

 その中で知能が一番あると言えば、ゴブリンだ。

 それ以外のモンスターに関しては、野生生物と何ら変わらない脳みそしかない。


 そしてゴブリンにしても、人間の子供以下の頭脳なので、労働力として役に立たない。


「僕たちが働ければましなんだけど……」

 ドラゴニュートの力と頭脳をもってすれば、木の伐採も畑仕事もできる。


 とはいえ僕たちはまだ子供で、マザーの元から逃げ出すわけにいかない。

 というか逃げ出すと、マザーに連れ戻される。

 それもマザーの口の中に入れられて、自宅まで強制送還。


「ヴッ、蜘蛛兄弟に喰われた時のトラウマが……」

 身内に喰われるのはイヤダー!

 思い出したくない過去の転生人生とダブってしまい、僕はその場でよろめいてしまった。


「ああ、どこかにドワーフか人間でもいないものかねー。というか、まともな文明に出会いたいなー」

 考えてもいい案なんて出てこない。

 結局目の前の課題を解決できないと分かり、僕はそんな埒のないことを呟くのだった。






「偉大なるドナン様ー!」

 翌日、再び第二拠点に来たら、ドナン相手に黒いゴブリンが跪いて崇拝していた。


 うん、表現としてはまるで神を目の前にしているような仰々しさで、ゴブリンが地面に跪いていた。


「おいドナン、"それ"はなんだ?」

「レギュラス様、これは……」

「おい貴様、偉大なるドナン様に向かって、その口の利き方は……ゲホラーッ」


 黒いゴブリンが生意気な口をきいてきたので、とりあえず風魔法で突風を起こして壁に叩きつけた。


「ガ、カホッ」

 数十メートル吹き飛ばして壁に叩きつけたので、衝撃の強さに口から涎を垂らすゴブリン。

 汚いねー。


「く、このクソ野郎が!」

 ダメージは入っているものの、まだ口をきけるだけの元気さがある。

 とはいえ入ったダメージが大きいようで、立つのがやっとでふらついている。これでは満足に歩くこともできないだろう。


「ゴブリンにしては、かなり頑丈だな」

「実はあのゴブリンですが、昨日死にかけていたゴブリンが特殊化して、あのような姿になりました。その際我らの死の気配に適応したようでして」

「ふーん、あの死にかけがなー」


 ドナンの説明で、黒いゴブリンの正体は分かった。


「お前、ドナン様にそんな態度をとるな!」

「……」


 ところで特殊化して黒くなったゴブリンだけど、どうも僕がドナンに対する態度が気に入らない様子。


「君さ、僕のドナンに対する態度が気に入らないようだけど、ならばどうすればいいのかな?」

「ドナン様は"神"なのだ!だから、お前ごときがドナン様に対して……」

「"頭痛が痛い"」


 ちょっと待て、ゴブリンは生まれながらに馬鹿だけど、今なんて言った!

 ドナンが"神"?

 神っていっても、頭に生えてる"髪"じゃないよね!?


 それとも"(ペーパー)"の方か?

 と言ってもここは文明のない野生世界。当然、紙なんてないけどさ。



「レギュラス様、あのゴブリンは自分が特殊化して、以前より力を得まして。……その際偶然その場にいたワシのことを、勘違いしてしまったのです」

「へー」

 自分がパワーアップした場所にたまたまドナンがいたので、それでドナンを崇拝するようになったと。

 こういうのって、一種の刷り込みなのかな?


「おい、ゴブリン。このお方は我らの偉大なる主であられるレギュラス様だ。ワシなどより、レギュラス様を敬う態度をとるのが……」

「ドナン様がそんな奴にヘイコラする必要ない!ドリャー」

 ドナンが説得していたけれど、ゴブリンの低能はそんなこと聞いてない。さっきまでふらついていたのに、早くも元気になって僕に突進してきた。


 ――バコーンッ

 面倒くさいので、顔面に拳を入れて吹っ飛ばした。


――パラパラ

 今度は壁にゴブリンの体がめり込み、壁の一部が砕け散る。


 ドラゴニュートパワー舐めたらいかんよー。



「あ、壁を壊すとドラドに叱られる」

「ご安心を。この程度の壁、我らの方で即座に修理いたしますので」

「それは分かってるんだけどね」

 以前第二拠点の壁だったか床だったかを壊してしまったことがある。あの時はドラドに怒られてしまったので、僕としてはもう二度とやりたくない。

 我が家で一番可愛いのはドラドだからね。兄としては、ドラドのお叱りをちゃん聞き届けてあげないと。



 まあ、それはそれとして、壁にめり込んだゴブリンの方だけど、今度の一撃はさすがに堪えたようで、白目を剥いてピクピク痙攣していた。


 意識が完全に飛んでるね。

 とはいえ、このゴブリンは随分と生意気だ。


「よし、調教するか」

「調教ですか?」

「そう、調教だよ。大人しくなるまで、こいつを潰し続ける」

「……」

 ドナンが押し黙ったぞ?


 ま、それはどうでもいい。

 なーに、これからやるのはいつもミカちゃんにやっているのと、ほぼ同じだ。


「"回復(ヒール)"」

 まずは回復魔法を使って、痙攣していたゴブリンを回復してやる。


「グッ、ゴゴッ、お前……」

 意識を取り戻したゴブリンが、早速僕に口答えしてきた。

 その頭を問答無用で掴んで、めり込んでいた壁からはがす。


 ――ドンッ

 そして床に叩きつけた。


「……また、やってしまった」

 床にたたきつけたことで、ゴブリンの顔面がちょっと凹んだ。と同時に、劣化黒曜石の床に罅を入れてしまった。


「あ、あとで直しておきます」

「うん、それは任せた」

 施設の被害に関しては、全てドナンに任せてしまおう。


 それよりもだ。

「"回復(ヒール)"」

 僕は再び気絶したゴブリンに回復魔法をかけて、意識を取り戻させる。


「ゲッ、ゴハッ、ゴホッ」

 ゴブリンの奴は咳き込んでるね。


 ――ドンドンゴンッ

 壁や床に叩きつけると問題なので、今度は吹き飛ばないように注意しながら、ゴブリンをボロ雑巾に変えた。


 全身骨折して、腕や足ががあらぬ方向に曲がっているけど、

「"回復(ヒール)"」

 また回復してあげた。


「ギャ、ギャ!お前、こんなことをして……」

「まだ逆らう元気があるか」


 ――ドカ、バキッ

 今度は半死半生にする。


「"回復(ヒール)"」

「うっ、ガアアッ。や、やめろ……」

「"やめてください"だろう?」

 ――ドゴ、ドガッ、ドゴンッ

「"回復(ヒール)"」

「やめてください……このままでは死んでしまう」

「別に死んでもいいんじゃないか、お前弱いし」

 ――ボカ、ゴン、ボキッ


 ……

 ……

 ……


 なーに、簡単な作業だ。

 反逆する意思がなくなって、僕に尻尾を振るようになるまで、何度も痛めつけて、回復魔法で強制的に元に戻してやり、また痛めつける。

 これを繰り返していけば、生意気な奴でも大人しくなるからね。


 ただミカちゃんの場合、僕にボコられまくっているのに、いまだに学習しないけどね。


 そんな作業を10回と少し繰り返したところで、ゴブリンの奴は死んだ目をして、地面に突っ伏したままになった。

 回復魔法をかけたので、体に問題ない。

 まあ体が大丈夫なだけで、心の方は真逆だろうけど。


 そろそろいいかな?


「さあ、お前のご主人様は誰だ?」

「ヒィ!い、偉大なるレギュラス様、我らの王よー」

「別に王って言わなくていいけど?」

「し、失礼しました。神よー!」

「だから神でもないって」

「で、ではどのようにお呼びすれば。うっ、あああっ、ぶ、打たないで殴らないで、殺さないでー」

 両手で頭を庇い、怯えまくるゴブリン。


「レギュラス様とだけお呼びするのだ。そうでなければ、また……」

 一連の調教作業を黙って見ていたドナンが、ここで初めてゴブリンに言葉を掛けた。

 なんか、ゴブリンに同情的になってないか?



「レ、レギュラス様。偉大なるレギュラス様ー!」

「で、僕とドナンはどっちが偉いのかな?」

「……」

「ふう、残念だ。まだ頭が悪いようだ」

「ギャアアアーッ」


 調教作業を再開。

 なーに、僕とドナン、どっちが偉いか理解できるようにするだけだ。

 理解できれば、すぐに作業を止めてあげるよ。


 この後調教作業を何回か交えつつ、僕は特殊化したゴブリンを手下にした。


「レギュラス様は偉大なるお方、レギュラス様は絶対、レギュラス様は至高、レギュラス様以外は塵芥……」


 ちょっと調教しすぎたせいで、ゴブリンが変なセリフをうわ言のように繰り返すようになった。

 けど、これくらいしておけば、僕とドナン、どっちが上か確実に理解できるだろう。


 モンスター相手には、力で話し合うのが一番だからね。


 ところでモンスターを仲間にするゲームってよくあるけど、あれを現実(リアル)でやると、こんな風になるから。

 モンスター相手ではこうだけど、間違っても人間相手にしないように。犯罪になるから。


後書き



「さすがレギュちゃん、グッジョプな仕事よ」

 そう言いいながら、マザーは親指をたてて僕を褒めるのだった。

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