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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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245 森の産物

 僕が作業兼倉庫部屋で薬作りを続けていたら、いつものようにユウが手伝ってくれる。

 この世界に転生してから、ユウは何かと僕の作業を手伝ってくれる優秀な助手なので助かるね。


 それとレオンも薬を作るのに興味があるよう。


「クンクン。これっておいしいのかな?パクリ」

「レオン、それは毒草だぞ」

「毒草って、食べたら死んじゃうんでしょう?」

 毒草と聞かされても、かなりマイペースなレオン。

 いまだに毒草を口の中でモグモグさせている。


「人間やゴブリンならね。もっとも僕らの場合、大抵の毒が効かないから、いくら食べても死なないけど」

「そうなんだー」

「ただし僕らは植物を消化できないから、草を食べ過ぎると下痢になるぞ」

「……苦くておいしくない」


 マイペース極まれり。

 毒が効かないのが分かっているので、レオンもここまでマイペースなのだろうけど、それでも草の味には参ったようで、緑色に染まった舌を出していた。


「兄さん、いくら毒が効かないからって、さすがにそれを家に置いておくのは問題じゃないですか?」

「なら、毒草は研究部屋の方に移しておくか」

「捨てた方がいいですよ」

「毒薬作るつもりななんだけど」

「ど、どうして!?」


 ユウが引いてるんだけど、毒薬作ることの何がおかしいのかな?


「なぜって、それはせっかく見つけた毒草なんだから、それで毒薬作るのは普通だろう」

「いやいや、普通じゃないですって!毒薬作るなんて、普通の人がすることじゃないですよ!」

「そうか?」

「そうですよ!」

 やたらユウが切迫した顔で迫ってくるんだけど。


 おかしいな?

 師匠なんて薬の効果は二の次で、とにかく作れるなら何でも作ってみるって感じだったんだけど。


 もっとも、あの人は薬の研究者ではあっても、それで不治の病を治すなどの善意とは、全く無縁だった。

 薬を作って何かしたいのではなく、ただ薬の研究をする。それだけが師匠の目的だった。


「まっ、作ってもゴブリンで試すくらいだから」

「それで群れごと毒薬で殺すつもりですか?」

「いいや、この毒草から取れる毒は、そこまで強力じゃないから群れごとは無理だよ。それに遅効性だから、効果が出るまでに1日はかかるし」

「毒で、ゴブリンを根絶やしにするつもりはないですよね?」

「……」


 なんか、ユウが僕をものすごく疑った目で見てるんだけど。

 どうしてだ?


 うーん、もしかしてアレが原因か?

 僕がデネブアンデットと13魔将を作って、前世の魔王の鱗片を見せたものがいけないのか?

 僕が魔王だったから、ゴブリンを根絶やしにするようなことを考える人間と思っているのか?


 いやいや、僕はそんな小さなことはしないから。


 でもゴブリンは嫌いなので、この世から絶滅してくれれば、清々するって思いはあるけどね。

 でも、やらないから。

 さすがに種の根絶はダメでしょう。


「ユウが何を考えているのかなんとなく分かったけど、種の根絶なんて僕はやらないから」


 だけど、その後しばらくユウに無言でジーと睨まれ続けた。


「だから、やらないって言ってるだろ!」

 ――ゴンッ

「イダッ!」


 ふうっ。

 よもやミカちゃんだけでなく、物分かりのいいユウにまで肉体言語を使う日がこようとは。


「僕はそんなことを考える人間じゃないから」

「すぐに拳が出るのに、全然信用できませんよ!」

「……もう一発いく?」


 ――ブンブンブンッ

 全力で首を左右に振るユウ。


 OK。

 肉体言語効果によって、ユウは僕の説得に素直に応じてくれた。


 やっぱり持つべきは、物分かりのいい弟だね。



「ねえ兄さん、この草は何に効くの?」

「それは眼精疲労に効くから、目薬にできるぞ。と言っても、複数の成分を合成する必要があるから、かなり手間がかかって……」

「んー、難しすぎるや。もっと簡単な薬の作り方を知りたいな」

「じゃあ、昨日も作ったが、まずは傷薬用のポーションと塗り薬から作るか」

「はーい」


 薬の作成は、何となく学校でやる理科の実験のようなもの。

 鍋でお湯を煮立てて、そこにきざんだ草を入れて煮込んでいく。


 そういう作業を、レオンは面白く感じるようだ。




「なんだと!ポーションだと。うおおおっ、これでHPを即座に回復できる!」

 自由人ミカちゃんが、今のセリフを聞きつけてやってきた。

 ポーションイコールRPGと、脳内変換されてしまったらしい。


「ミカちゃん、ポーションって言っても、たいした効果はないよ」

「でも、HPが回復するんだろ」

「ここはゲームじゃなくて現実だから、そもそもHPがないよ。それともHPのことが気になるなら、今からミカちゃんのHPとやらを減らしてあげようか?」


 拳を握り握り。

 ぶん殴れば、ミカちゃんのHPを減らせるね。


 ――スタタタタッ

 だけどミカちゃんは危険を察知して、その場から逃げ出していった。


 何なら殴った後で、ポーションかけてあげてもよかったけど。

 もっとも効果は傷口に対してなので、拳骨で痛む頭には全く効果がないけど。






 こうして数日にわたって作業部屋で薬の作成を続けたけど、それ以外にも作業をしている。


 ウエストフォレストで木の実を見つけたけど、実はほかにもいくつかの種類を見つけていて、中には巨大なレモンや甘い香りのする果物もあった。あと、オレンジもだ。


 レモンは巨大で、なんとミカちゃんの頭と同じ大きさだ。

 名前は見たまま、"ジャンボレモン"ってつけていいね。

 ドラゴニュートだから気にならないけど、見た目通りかなりの重さがあるレモンだ。

 そして口にすると、当然酸っぱい。


 もともと植物が食べられない僕たちなので、レモンを口に入れるのはダメだけど、しぼり汁を肉にかければ、味付けと風味に使えるね。


 あとはハチミツに漬けて、ハチミツレモンも作れるか?

 ただハチミツは森でたいした量が取れなかったので、本格的な養蜂でもしないと、満足な量を確保できないだろう。



 次に甘い香りのする果物は、見た目が赤くてリンゴそっくりだったので、"リンゴ"と名付けた。

 ただ、触感はモモに近い。

 味に関しては、不味かった。


 野生に生えていた果物なので、品種改良が進んだ日本の果物と違って不味いのだろう。

 匂いは甘いのに、味の酷さにガッカリだ。


 まあ僕たちの場合、味が良くても食べるのは無理だけどね。


 それでも果汁を絞り出して、ジュースにしてみた。

 それを瓶に入れて密封しておけば、直ぐに酸化することはないだろう。


 それに自宅には使っていない冷蔵庫部屋があるので、レオンに氷を作ってもらって室温を下げ、そこで保存しておくことにした。

 冷蔵庫部屋は分厚い土に覆われた場所にあるので、氷を入れておけば(むろ)と同じで、数か月にわたって低温を維持し続けることが出来る。


 もっともジュースにしても不味い物は不味いので、作ったはいいけど誰も飲まないかもしれない。



 そして"オレンジ"。

 これは見た目も果肉も、地球のオレンジそのものだった。


 皮が固いので、"みかん"という感じがしないので、"オレンジ"と名付けたい。


 甘さもあって美味しそうな果物だけど、これも植物なので僕たちは食べられない。

 そしておいしそうな見た目に反して、食べると不味かった。

 食べ物じゃないね。

 品種改良されてない原種なんて、所詮こんなものだよ。


 いや、原種にしては不自然なほど果肉があって、匂いもいいのだけど。

 ……それでも不味いことに変わりない。


 これもジュースにして、冷蔵庫部屋に保管しておいた。


 あと果肉はダメでも、皮を潰すとオレンジのいい香りがするので、これも肉の風味づけに使える。


 それと柚子風呂みたいに、お風呂に入れてオレンジ風呂にしてもいいね。


 果肉が付いたままだと痛むのが速くなってしまうから、皮をむいで天日で乾燥させておこう。


 一種の入浴剤だね。


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