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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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236 気分は王様(マハラジャ)の旅

 第二拠点を出発して、西にある森を目指して狩りの旅に出た僕たち。


 今回僕たちはダーク・スケルトンベヒモスの背中に取り付けられた荷台に乗っかって、旅をしている。

 ベヒモスは走らせれば速度も出るけど、たまにはのんびりとした旅もいいね。

 浮遊魔導車(フロートカー)も便利だけど、たまには牧歌的な移動手段と言うのも風情がある。

 ベヒモスの巨体もあって、インド旅行で象に乗っかってマハラジャ気分。なんて雰囲気だった。


「ぞーうさん、ぞーうさん、おはながながいのね。そうよ、かあさんも、なーがいのよー」

「だがしかし、これは象でなくベヒモスだ!」

 ドラドが楽しそうに動揺を歌っていたけど、それを邪魔するのはミカちゃん。


「ムーッ、そんなの分かってるもん!」

「いいか、象の鼻は長くて、ベヒモスとは全然違うんだぞ」

「知ってるもん!」


 ドラドが頬を膨らませて、不機嫌になる。そんなドラドを、ミカちゃんは年下の女の子をいじめる、悪ガキの様にからかっている。

 精神年齢がお子ちゃまだから、仕方ない。



 ちなみにドラドは、この前あげた"魔法式スピーカー"を早くも使いこなして、スピーカーから流暢な日本語を話せるようになっていた。

 これで今までの、ギャオギャオ言っていた言葉が、年相応の女の子の声にかわったので、以前にも増して女の子らしい可愛さが増していた。


 ああ、ドラドは穢れがなくていいね。

 うちの兄弟の中で、ドラドが一番見ていて心洗われる。


 とはいえ、ドラドは"変身(メタモルフォーゼ)"の魔法を、無意識レベルで継続して維持している。その魔法制御能力は、僕たち兄弟の中で随一といってよかった。

 正直、2歳のレベルを超えた魔法制御能力だ。


 一方ミカちゃんは、いまだに"魔法(笑)"しか使えない。

 超初級の光魔法"光球(ライト)"に、用途皆無の"虫眼鏡光線"。

 光の属性竜とは一体何だというほど、魔法音痴ぶりがひどかった。




「レギュラスお兄様、どうでしょう似合ってますか?」

 そして牧歌的な旅の中、フレイアがルビーやトパーズと言った、宝石で飾り付けられた髪飾りをさして、僕に見せてきた。

 使っている宝石は豪華だけど、元日本人で、元魔王である僕から見ると、そこまで出来の言い髪飾りに見えない。


「フレイア、どこでそんなものを手に入れたんだい?」

「……ドナンに作らせましたの。そんなことより、似合いますか?」


 ドナン、あいつってかなり多才だな。

 ドワーフの寿命は200年から300年あるので、それだけ生きていれば手に様々な職を付けられる。

 しかしこれだけいろいろなことが出来るなら、生前死霊術になんかのめり込まず、まっとうな職人として生きればよかったのに。


 それはさておき、

「フレイアは元のまま、飾らずにいた方がいいよ」

「……」


 フレイアが何を言って欲しいのかは分かっている。

 しかし、そんなものに興味を抱くのは早すぎる。これで2歳児だ。精神年齢がドラドと全く同じとは、とても信じられなかった。


「フレイア、とてもよく似合ってるよ」

 そして僕の態度がつれないと思ったのか、かわりにユウがお追従をとる。


「ありがとうございます、ユウお兄様」

 ユウにお礼を言うものの、フレイアの表情は不満げで、そんな表情のまま僕の方をチラチラ見てくる。


 何、この露骨な態度。

 僕、こんな妹イヤダ。


「いいなー、僕も欲しいなー」

「光物は素晴らしいです」


 一方、光物好きなドラゴニュートの血は兄弟共通というわけか、レオンは尻尾をフリフリと羨ましそうにし、リズも蜥蜴顔で表情は読めないものの、レオンより早く尻尾を振っていた。

 ドラゴニュートの尻尾って、やっぱり犬の尻尾と同じなんじゃないか?

 ここに顔以上の感情が出てるんだけど。



「マザーは何を身につけられても素晴らしいです」

「マザー、お美しいです」

「いやいや、マザーのお美しさの前では、どのような宝石でも輝きを失ってしまいます」

 あと、今回の旅では西の方に僕たちが行くのは初めてなので、シャドウ3体が道案内役としてついてきた。


 だが君たち。


「お前らがそんな態度とってると、ますますフレイアの態度がデカくなっていくだろ!」

 フレイアにお追従するのは、やめてもらいたい。

 ただでさえ女王様気質まっしぐらに成長しているフレイア。こいつがセットでついていくと、余計にフレイアの将来が心配になってしまう。


「も、申し訳ありません、ファザー」

「でも、こう言うとマザーが喜ぶんですよ」

「ファザーは、女心が分かっていませんね」


 ……フレイアよりさらに精神年齢が低いはずのシャドウたちに、こんな風に言われてしまった。

 女心っていうか、お前らは単にフレイアのご機嫌取りしてるだけだろうが!




「まったく、僕の周囲はどうしてこんなのばっかりなんだか」

 そう呟きながらも、ダークベヒモススケルトンで行くマハラジャ気分の旅は続いていくのだった。




 なお、マハラジャ気分ついでに、今回僕たちは魔物(モンスター)相手に戦闘をしていない。


 大抵のモンスターは、巨大なベヒモスの姿を見ると逃げ出すけど、中には馬鹿なモンスターがいて、何を狂ったのかベヒモス相手に戦いを挑んでくるものがいる。


 もっともそんなモンスターたちは、ダークスケルトンベヒモスが足で蹴飛ばしただけで吹っ飛ばされてお終い。


「ここは我々の実力もお見せしましょう。ハアアァァァッ」

 あと、フレイア相手にいいところを見せたいのか、シャドウたちもモンスター相手に戦って無双し始めた。


 腕が4本ある、地球外生命体にしか見えないシャドウたち。

 そんなのが黒いオーラを全身から迸らせて、ゴブリンの群れに突っ込んでいくと、当たるを幸いに次々にゴブリンを撲殺していく。

 鎧袖一触という言葉そのままに、触れた途端にゴブリンの首がへし折れ、体に大穴が開き、体が宙を舞い……。


 おかげで僕らが何もしなくても、ご飯を獲得できた。


 いやー、王様(マハラジャ)気分の旅もたまにはいいね。

 いつもは雑魚モンスター相手に戦闘しなきゃいけないけど、今日はおつきの連中に任せておけばいい。


「モンスターが全滅したし、ここらでいったん休憩にして食事をとろうか」

 モンスターが全滅したら食事タイム。

 モンスターは僕たちの大切な食糧だからね。


 この後は、ベヒモスの荷台に乗せていた鉄板を取り出し、それを使ってバーベキュー大会だ。

 この前までは鉄がなかったので、石の板で焼いていたけれど、今回からはついに"鉄板"だ!


 石の板でバーベキューをするのも情緒があっていいけど、鉄板があると、なんだか以前より文明が進歩した気がしてうれしいなー。

 ああ、脱石器時代素晴らしい。

 少なくとも今の僕たちは青銅器時代をスキップして、鉄器時代に確実に入っている。


「どうぞマザー」

「こちらのお肉がちょうどいいです」

「ファザーもどうぞ」


 シャドウたちがゴブリンを解体し、肉を焼いて料理してくれる。

 ナニコレ、何もしなくても全てやってくれるとか、こいつらマジで有能。超便利。

 シャドウを作っておいて、よかったなー。


「モグモグ、おいしいねー」

 そしてドラドも、ご満悦なようで何より。

 心がほっこりするね。


「モガガガー、いちいち焼いて食ってられるか。とにかく量を出せ、量をー!」

 ミカちゃんの方は、相変わらず文明とは無縁だった。

 焼くことすら拒否して、ただひたすら生のゴブリン肉を食っていく。

 ちょっとこの人、マジで訳が分からない。


「ミカちゃんって、本当に前世日本人ですよね……」

 ユウにまでそんなこと言われてるよ。


「バリバリ、モガモガ、モゴモゴー」

 だけど僕やユウの生暖かい視線に気づかず、食欲魔獣ミカちゃんは、ひたすら口の中にゴブリンを突っ込んで、食べ続けていった。

 もはや肉と骨を別ける事すらしていない。


 この人、ひょっとすると原始人以下なんじゃないか?




「ゲプー、食った食ったー」

 そして食事が終わると、その場でゴロリと横になるミカちゃん。

 見た目は金髪碧眼幼女なのに、可愛らしさ皆無で、オッサン臭さしかしない。


「ゲプー、食った食ったー」

「レオン、ミカちゃんの真似をしちゃダメだよ」

「ええーっ、食べた後横になると気持ちいいよ、レギュ兄さん」

 そんなミカちゃんの行動が伝染して、レオンまで真似を始めた。


 本当、このオッサンは子供の教育によくないね。




 この食事のあと、僕たちは再びダークベヒモススケルトンの荷台に乗って、移動を再開した。

 けれど、食事の後にユラユラと揺れる荷台に乗っていると、自然と眠気が襲ってくるね。

 気温も昼寝するのに、ちょうどいい暖かさ。


「ふああーっ」

 と、僕の口からつい欠伸が出てきてしまう。


「ガー、ゴー、おっぱいおっぱい」

「パイパイ」

 ミカちゃんは既に大イビキをかいて爆睡。

 そしてレオンも夢の世界に突入していた。


 だけど、2人して同じ夢見てないか?

 ミカちゃん菌が、確実にレオンに感染している。


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