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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第6章 (仮題)ドラゴニュート兄弟とゴブリン村
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234 ドラゴニュート用サンドバック

 ――スパーン、スパーン、ドゴンッ



「ドラド、お土産だよー」

 転位魔法陣を使って第二拠点から自宅へ帰ってきた僕。早速ドラドにお土産の魔法式スピーカーを渡す。


『なにこれ、レギュ兄?』

 ドラドがつぶらな瞳で僕にたづねてきたので、僕は魔法式スピーカーについて説明をした後、それを実際に使ってスピーカーから声を出してみせた。


「この魔道具を使えば、ドラドも声を出せるようになるぞ」

『本当、これでドラドも皆みたいに声を出せるようになるんだね』

 嬉しそうに魔法式スピーカーを手に取るドラドだった。


 もっとも魔法式スピーカーは、1日2日で使いこなせるものではない。

 マイクがあって、その前で声を出せばスピーカーから声が出てくる。なんて構造はしてないからだ。


「ギャー、ギャーアラルロー」


『……レギュ兄、変な音しか出ない』


 スピーカーから出てきた声の酷さに、嬉しそうにしていたドラドの態度が一転。尻尾をペタリと地面に落として気落ちしてしまう。

 しかしミカちゃんと違って、落ち込んでいる姿のドラドも可愛いものだね。


「魔力を込めるだけでなく、細かい操作が出来るようにならないといけないから、まずはそこから練習だね」

『ん、んーっ』

 僕のアドバイスを受けて、ドラドはスピーカーを手に持ったまま、なんとか声を出そうと頑張り始めた。


 微笑ましい努力と言うものだ。

 もっともドラドは、変身(メタモルフォーゼ)の魔法を、寝ている間も常時維持できるようになっていて、魔法の扱いに関しては兄弟の中で一番うまい。

 魔法式スピーカーの扱いも、ドラドならばあっという間に覚えるだろう。


 子供って大人と違って成長が速いけど、中でもドラドは魔法の扱いに関する成長が早かった。




「また壊れてしまいました、ユウお兄様」

「……フレイア、またなの」

「はい」


 ところで、僕とドラドが話し合ってる一方で、ユウとフレイアも何か話してる。

 そういえば家に帰ってきた時変な音がしたけど、壊れた物はそれと関係しているのかな?


「これで一体何個目だろう。フレイアはパンチングする必要ないだろ」

「……あの澄まし顔が憎たらしいので、あの顔を思い浮かべて殴ってます」

「そ、そうなんだ……」


「2人とも、何をしてるのかな?」

 ユウが顔を引きつらせ、フレイアは鼻息をフンと鳴らして、不機嫌にしていた。


「レギュラスお兄様、なんでもありませんわ。ちょっとした淑女の嗜みでして」

「淑女の嗜みが、パンチング?」

「……ホ、ホホホッ。きっとお兄様の聞き間違いですわ」


 いやさ、僕だってさっきの話が聞こえていたから、フレイアが何をしていたのか大体分ったよ。

 しかし、どうして淑女の嗜みがパンチングになる?


「パンチングってことは、今度はボクシングでも始めたのかな?」

「ボクシングと言うか、ミカちゃんのおねだりでサンドバックを作ったんですよ」

 とは、ユウの言葉。


「ふーん、サンドバックね。とりあえず見せてくれる」


 僕がいない間にそんなものを作っていたのか。

 というか、ここ最近の僕は研究部屋に籠っているか、第二拠点にいるかで、自宅にまともにいないことが多い。

 狩りの時以外、兄弟と接する時間をろくに取っていない気がする。


(フフフッ、そうして家に帰らないでいるから、実の娘から「おじちゃん誰」って言われ……)

(黙ってろ!)


 ちょっと心の中で毒電波が何か言ってきやがった。

 だが、無視無視。



「ホホ、お兄様がご覧になるようなものじゃなりませんわ。ホホホホホッ」

 一方フレイアだけど、なぜかサンドバックを僕に見せたくないようだ。

 やけに、露骨な態度だな。


「ユウ?」

「僕からはノーコメントで」

「?」


 ありゃ、ユウからも視線を逸らされてしまった。なぜだろう?

 と思っていると、フレイアが笑顔のままユウをじっと見ていた。表情は笑っているんだけど、目が全く笑ってない。


 ああ、そういうことか。


 兄弟カーストの順位が変わったんだな。

 今までなら、サル山のボスサルみたいな感じでミカちゃんが君臨していて、次にユウがいた。けどユウの上に、フレイアが躍り出てきたわけか。

 兄弟と言えど、上下関係があってシビアだね。



「グヌヌヌッ、俺もフレイアたんのあの目で睨まれた……ゲヒッ」

「ミカちゃん、部屋の隅っこで変態顔しながら覗かないでくれるかな?」

「ウルセー、俺は男にいたぶられて喜ぶ趣味なんてないぞー!」


 ……"頭痛が痛い"。

 あ、ダメだ。

 ミカちゃんの相手していると、僕の正気度が削られてしまう。


「ミカちゃん、少し黙ってましょうね」

「はい。ウヘヘヘェー」

 フレイアに言われて、だらしない笑みを浮かべるミカちゃん。


 訂正。

 我が家の兄弟カーストだけど、フレイアがミカちゃんまで降して、頂点に立ったようだ。


 フレイアが、じょぅ王様路線を突っ走ってるんだけど。




 その後は兄弟そろって適当に談笑したり、ダラダラしたり、作業部屋で作業をしたり……。

 自宅でこういう時間をとるのが、なんだか久しぶりな気がする。


(相変わらず仕事漬けで、家族を顧みない仕事中毒生活を……)

(お前は家族以前に、他人がいるだけでダメだろう)

(……)


 せっかく家族団欒しているところに、デネブの毒電波が飛んできたので、反撃して黙らせておいた。




 ところで、作業部屋は基本的に僕とユウが作業するのがメインだけど、

「もしかして、これが例のサンドバックか?」

「はい。フレイアが殴ると、2、3発で大穴が開くんです。あと、拳が貫通したり……」

 今この部屋にフレイアはいない。


 ズタボロニされたモンスター皮製のサンドバックがある。

 それもサンドバックの皮が複数あり、そのどれもが穴を塞いだと思われる個所に、別の皮でツギハギがされていた。


「兄さん、助けてください。フレイアが殴ると、サンドバックが簡単に壊れるんです。たまに腕が貫通することもあって……」


 そう言い、ユウがワナワナと震え出す。

 この子って、相変わらずだねー。


 ゴブリンとかモンスターを狩れるようになっても、争いごとや暴力が、相変わらずダメな性格のままだ。


「まあ、ドラゴニュートだから仕方ないよねぇ。サンドバック程度簡単に壊れるでしょう。それにドラドがやれば、そもそも原型が残らないだろうし」

「……それ、本当ですか?」

「最近ドラゴニュート形態でいるのが当たり前になってるけど、ドラドは元々ドラゴン体型だからね。人間の姿に近い僕らより、ドラドの方がパワーは圧倒的に上だよ」

「そ、そういえばドラドはドラゴンだったな……」


 おいおい、ユウくん。

 君、(ドラド)の本来の姿を完全に忘れてただろ。

 いや、他の兄弟たちが忘れてしまうほど、ドラドがドラゴニュート形態でいるのが当たり前になっているんだけどさぁ。



「しかしサンドバックねぇ。僕ら兄弟用に作るなら、もっと頑丈な……上級魔族の皮を使うといいか」


 以前マザーによって大量に上級魔族が狩られたわけで、あの時の骨はデネブアンデットと13魔将となって活躍している。

 そして骨だけでなく、皮の方も素材として利用できるので、倉庫部屋に保管している分があった。


「上級魔族って貴重なんですよね。その皮を使っていいんですか?」

「使い道がなくて、しまい込んでおくくらいなら、サンドバックにして役に立ってもらおう」

「それもそうですね」


 いくら貴重なものでも、使わなければ宝の持ち腐れ。

 というわけで、僕とユウは上級魔族の皮を使ってサンドバックを作った。

 普通のモンスター側に比べて、上級魔族の皮は圧倒的な強度を持っている。この強度であれば、フレイアのパンチにも耐えられる。


「あと、中に入れるのが砂だと軽すぎるから、鉄粉を入れるか。第二拠点にあるだろうし」

「鉄粉入りのサンドバック……そんなの殴って大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。下手に殴ると人間なら骨が折れるけど、僕ら人間じゃないから」


 人間には人間用のサンドバックを。

 そして僕たちドラゴニュートには、ドラゴニュート用のサンドバックを用意するのが当たり前。


 こうして無事、サンドバックは完成した。




 ただ、サンドバックが出来上がった後で気づいたけど、

「フレイアが毎日パンチングするってことは、更に強くなるんだろうねぇ」

「……僕、絶対にフレイアを怒らせないでおこう。ミカちゃんより危ない」

 ユウがドン引きしていた。


「ヌフフッ、俺はサンドバッグになって、フレイアたんに殴られたい」

 一方オッサンの方は、とんでもない性癖をぶちまけたので、僕とユウはそれにもドン引きさせられた。


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