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232 番外編、魂のデブ友ミッチー死す! (シリウス視点)

 皆さんこんにちは、和名肥田木昴(ひだきすばる)改め、シリウス・アークトゥルスです。

 アメリカから帰ってきたら、いきなり妻に「離婚してくれ」と言われました。


「ハッ?訳分かんない!?」


 い、一体何がいけないと言うんだ?


 僕にはこの妻以外に、昔2人妻がいたけど、当時の僕は今のぽっちゃり体型とは無縁の、往年の美青年だった。

 フフフッ、僕は非モテじゃないのだよ!

 若かりし頃は、それはそれは女の子たちからキャーキャー言われてモテまくる男だった。


 結婚するまでにも、キャーキャー言われて付き合って、

「ゴメン、別れてくんない」

 と、直ぐに振られまくってもいたけど。


 ううむっ。昔から思うのだけど、パーフェクトフェイスを持っていた僕のどこが悪いんだろう?

 そして過去2人いた妻たちよ。なんで君たちは僕と結婚しておきながら、離婚という結論へ辿り着いてしまったのだ?

 訳が分からないよ。


(それは、もちろん仕事優先で家庭を顧みなければ、当然捨てられますね)


 えー、そうかなー?

 なんだかんだ言って、昔の妻たちってどっちも僕が知らないところで勝手に愛人を作って楽しんでたから、僕が家に帰らなくても全然問題なかった気がするしー。

 むしろ、僕の存在がお邪魔?


(離婚の原因分かってるじゃないですか)


 ハウチッ。

 僕の心の中に住んでいる妖精さんこと、スピカが的確な意見を口にしてくる。


 しかし悪いのは妻たちのはずなのに、どうして2人とも別れる時に僕の顔面にグーパンしてきたんだろう?

 特に2度目のの妻なんて、僕が結婚式の時にあげたダイヤモンド製指輪パンチだったから、僕の歯が1本折れてしまったんだけど。


 女って、マジで訳分かんない。


(……)


 まっ、そんな過去の女どものことはどうでもいい。

(そういう性格してるから、捨てられるんですよ)

 ホエッ!?僕は過去を振り返らない主義なんだよ。

 僕を捨て去った昔の女どもには、今更用なんてないさー。



 で、今の3人目の妻だけど、この妻と結婚したのは僕が中年に入ってから。

 その頃の僕は、既に往年の美青年フェイスなんて過去の遺物。

 昔は美形でした、現在は過去の栄光を一欠けらも留めていない、ただのデブでむさ苦しい脂肪男です。

 ……あ、ゴメン。"デブ"じゃなくて、"ぽっちゃり"ね。

 ここ重要だから、間違えないように。


(自分でもたまに間違えてるじゃないですか)

 ス、スピカ、それは黙っているんだ!


 ク、クソウ、妖精さんが僕を裏切る。

 どうしてこんなのが、僕のサブ人格なんだよ。

 ただしスピカがいないと僕のダメ人間レベルがさらに上昇してしまうので、サブ人格と言う名の"古女房"に見捨てられてしまっては、僕の存在意義ってなんなのってレベルになっちゃうけどさー。


(ウウウッ、私の(メイン)人格がこんなので、私の方が悲しい。シクシク)


 おー、よしよし。スピカ泣くんじゃない。

 人生生きていれば、きっといいことがあるはずさー。


(それを離婚調停の最中にある人に言われたくないです)


 テヘッ。

 いやー、スピカの突っ込みは相変わらず鋭いなー。



 3度目の妻は昔の女どもと違って、僕のイケメンフェイスに惚れて結婚した女ではない。だから、この僕が振られるなんてありえないはずだ!

 そして何より、僕はこの世界では海水から低コストで水素を取り出すことが出来る、特殊な薬剤を研究した偉大なる研究者。


 今や時代は石油なんて過去の産物、水素こそが時代の主役ですよ。

 発電所でも、車の燃料でも、どこでも水素を使ってるんだから。


 当然、特許のおかげでウハウハのガッポガッポで、お金がたくさんあるんだよねー。

 アハハー、このまま金にものを言わせて、ドバイにあるかつて世界一高かったタワーでも買い占めちゃおうかなー。


 もっともドバイは産油国だから、今じゃ治安の悪い、超ド貧乏国家に転落してるけどねー。

 今じゃ石油なんて、誰も見向きしないただの黒い水だよ。

 一応石油から作る化学製品には必要だけど、もう石油の時代は終わったも同然。


 中東なんて、今じゃどこもかしこも革命だクーデターだ、王族の血の粛清だで、とんでもないカオスっぷり。


「石油に依存しすぎるのって怖いね」

(混乱の原因を作り出したのは、全てシリウス(マスター)が原因ですけどね)

「エヘヘー、褒められると照れちゃうよー」

(……)


 アジアの反対側で何が起きてても、僕は特に気にしないからいいよー。



 それより問題は、3度目の妻からの離婚調停だ。

 おかしいなー、この妻って僕のイケメンフェイスでなく、僕が持っている財産目当てで結婚したはずなのに?

 今の僕は超お金持ちなのに、どうしてここで離婚なんて話になるんだろう?


(マスターが用済みになったので、慰謝料を取って関係を終わらせるつもりなんでしょう)

「えっ、マジで!?」

(マスター、過去の奥さんたちも、別れる時に慰謝料の請求があったの覚えてないんですか?)

「……」

(忘れてたんですね)

「だってー、水素で儲けだしたら、昔の女どもからの慰謝料なんて、ただの小銭になっちゃったんだもん。たかが月に10万とか100万取られても、全然財布が傷まないし」

(やっぱりマスターって、最低のクズ男ですね)

「アハハー、もうそんなに褒めないでよー」

(……ハアッ)


 あれ?なぜかスピカさんにため息つかれちゃったんだけど。

 しかし、離婚かー。

 今回の妻は僕の財産目当てで結婚したのは分かっていたけど、今の時代慰謝料なんて方法もあるんだねー。

 そのためなら、結婚生活をずっと続ける必要がないと。

 へー、はー、ほー。



 ……まずいな、このままだと僕の金を毟り取られて、離婚させられちまう。


「クッ、これだから女なんて信用できないんだ。世の中のアベックどもよ、所詮女とは、この程度の生き物なんだぞ!男どもよ、これが女の本性なんだ!ああ、道端を手をつないで歩くカップルどもが憎い!幸せオーラをまき散らすな、鬱陶しい奴らめ、滅び去っちまえー!」

(完全に逆恨みの僻みモードに入ってますね)

「僕以外の幸せが全て憎いー!」





 ……


 ふうっ、なんたる不幸だ。

 こんな僕の心を分かってくれるのは、我が心のデブ友……おっといけない。ぽっちゃり友のミッチーしかいない。


 ミッチーとはアメリカのカジノで大儲けして、その時に得たお金を楽しく分け合った仲田。

 けれど、なぜかその後ミッチーが絶交だって言ってきたんだよね?

 僕、意味が分からない。


(マフィアに追いかけられて尻を撃たれれば、マスターと関わり合いになりたくないと思うのは当然です)


 ……?

 スピカの言ってる意味が全然分かんないやー。アハハー。


(……また笑ってごまかしている。理解しているくせに、笑っておけばいいと思ってるんですね)



 ま、妖精さんの事なんて無視無視。

 普通の人間だったら、頭の中で別人の声が聞こえるなんてことになったら、それはきっとヤバい薬を決めてる人だからねー。

 僕、そんな薬には手を出してないからー。


(……もうヤダ、自分の都合100%で生きてる馬鹿って)



 で、ミッチーなんだけど、僕が日本に帰った後、アメリカの病院で入院してる。

 仕方ないよね。僕が応急処置をしたけれど、ケツの中に鉛玉を撃ち込まれたんだから、完治するまで入院だ。


 もっともミッチーは、カジノの儲けで小金持ちになった身。

 病院でそのことが知られて、いつの間にか美人看護婦さんといい仲になっていた。


 ムフフーッ、やっぱりお金の力って素晴らしいねー。

 ミッチーみたいな女からモテようのない姿をしたデブ。でも、お金さえあると分かれば、途端にモテモテになっちゃうんだからー。

 おまけにミッチーってば、それまで親戚から仲良くされていた訳でもないのに、カジノで儲けたことが知れ渡ると、あっという間に親戚知人たちが集まってきて、病院のベットでもみくちゃにされることに。

 いやー、本当に人気者だねー。

 お金の力さえあれば、とても幸せになることが出来るのだ~。


 ただ皆ミッチー本人でなく、ミッチーの持っている"金目当て"だけど、そこのところは些細な問題だよね。

 気にしなければ、何も問題はない!


 そして誰からも金の無心をされまくって……おっと、そうじゃない。誰からも、チヤホヤされて、一躍人気者になったミッチー。

 ケツの穴が塞がって病院を退院すれば、その後は美人看護師さんと結婚して、ラブラブハネムーンだよ。


 まさに、幸せの絶頂だねー。

 いやー、僕もぽっちゃり友として、実に嬉しいなー。



 そんなミッチーだったけど、ケツを撃たれたのが悪かったのか、いきなり鉛中毒で急死してしまった。

 銃弾って早く摘出しないと、鉛中毒になって死んでしまう危険があるんだよ。


「可愛そうなミッチー。どうしていきなり死んだのだろう。シクシク」


 おかしいーな。

 僕が早い段階で銃弾を抜いておいたから、鉛中毒になる危険はなかったはずなのにー。



 家族か親戚の誰か、それとも病院の先生まで加わったのか、ミッチーの財産目当てで、毒殺されちゃったぽいけどさー。

 その後は家族と親戚、さらに結婚予定だった美人看護婦さんまで巻き込んで、醜い骨肉の争いが展開されてるけどねー。

 だーれも、ミッチーの事なんて考えてなくて、金しか目に入ってないんだよねー。


 あーあ、ミッチーてばいきなりカジノで小金持ちになるから、そのせいで身近な人に殺されちゃうんだよ。


 ううっ、僕はミッチーが幸せになれるようにと思って、カジノの儲けを半分あげたのに、よもやこんなことになってしまうなんて。


 ……やっぱり、僕の不幸を理解してくれるのは、ぽっちゃり友のミッチーしかいよね。


 僕はグッと拳を握って、魂からの友ミッチーに、哀悼の祈りをささげた。

 ミッチー、どうか僕と一緒に不幸になっておくれー。

 もっとも死んじゃったので、これ以上不幸にはなれないだろうけどさー。

 アハハハー。


(ああ、この人ってこれなんですよ。自覚無自覚に問わず、関わった人間の9割が不幸になるんですよ……)



 さーて、ミッチーが幸運の絶頂から不幸のドン族に落ちてしまったことだし、世の中の幸せアベックどもも地獄に落ちちまえ!

 僕は自分一人では、決して不幸にならんぞ!

 周りを巻き込んでやる。

 アハハハハー。


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