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231 発展には犠牲が付きもの

 悲しいことだけど、文明の発展には犠牲が付きものなんだよ。



「な、な、な、な、な、な、な、な……」

「ミカちゃん、何を言いたいのが全然分からないって」

 ミカちゃんがこれまでで最大級の驚きを浮かべ、意味ある言葉を話せていない。

 いや、ミカちゃんの場合、素面の時でも変態言語を話していて、意味不明なことが多いけどさ。


「なんじゃこりゃぁあ!!!」

 昭和の時代なら、今のセリフを言った後に死んでしまいそう。


 ただ死んでしまいそうなのは、ミカちゃん1人に限った話でなく、僕の兄弟全員が口をパカリと開け、目もこれ以上ないほど大きく見開いていた。


 なぜこうなっているかだけど……


「ま、魔王じゃ、きっと魔王がしたに違いない!」

「……まあ、当たりかな?」

「マ、マジで魔王なのか!この世界には本物の魔王がいるんだな!」

「うん、そうだね」


 僕はそこで、適当に頷いておいた。



 さて、僕たちは第二拠点での滞在を終えて、再び狩りの旅に戻った。

 今回第二拠点の滞在時間がいつもより長かった気がするけど、あれは全部1日で起きた出来事に過ぎない。

 そして今回の狩りの旅は、またしても第二拠点の北へ。


 僕個人は、北に行けば何があるのか分かっているので、

「北に行っても何もないから、今回は西にしよう。スケルトンたちが西で森を見つけたから、運がよければ木の実とか果物が見つかるかもしれないよ」

「それもいいけど、ベヒモスを食いたい。この辺で狩れるゴブリンとかは、不味いからなー」

「でもさ、北に行っても何もないんだよ」

「何もないって、ベヒモスがこの前いたじゃん?」

「……」


 このままミカちゃんと旅の方角を言い争っても無駄。

 北へ行けば何もないという言葉の意味が分かるだろうと思い、今回の僕たちの旅は第二拠点の北へ向かった。



 その結果だけど、以前ベヒモスがいた荒れ地は、完全に消滅していた。

 かわりにあるのは巨大な穴。

 穴の大きさはただただデカいというしかなく、穴の端から端までが、視界の中に収まりきらない。穴の深さも同じで、底の見えない闇がいずことも知れない地下へと続いていた。


「どこまで広がってるんだよ、これって確実に10キロはあるよな」

「以前上から見た感じだけど、10キロどころか、確実に数十キロは広がってるけどね……」

 僕はちょっと気まずくなって、頬をポリポリ指でかく。


「数十キロだと!まさかここに"隕石(メテオ)"が撃ち込まれて、巨大クレーターが残ったのか!だったら恐竜の絶滅みたいに、隕石が原因で俺たちまで死んじまうとか!?」

 ミカちゃんの脳内で、勝手にメテオ設定が作られて行く。


 地球の恐竜が絶滅した原因は実のところ未だにはっきりしていないけれど、原因の一つは大質量隕石が複数地球に落下して、それによって大量の土砂が空中に巻き上げられたことで太陽の光が遮られ、地球が寒冷化したから……という説がある。

 なので隕石が落ちたのが原因で、絶滅したというのは間違ってないね。


 割と有名なこともあって、ミカちゃんもその説を知っているようで、脳内ではメテオイコール地表の生物絶滅という考えに至っているみたいだ。


 でもねー、

「いや、隕石(メテオ)なんて打ち込んでないから」

「打ち込んでないからって、なんでレギュレギュに分かるんだよ。こんなデカい穴、普通にできるわけがないだろう!」

「そうだねー」


 間違いなく、普通の現象で直径数十キロの大穴なんてできるわけがないよね。

 核爆弾でも不可能だ。


「あの、兄さん。こんな大穴が突然できてるのに、どうして冷静なんですか?」

 そこで驚きから思考停止状態になっていたユウが、我に返った。


「……いやね、文明の発展には犠牲が付きものだから」

「意味が分からないんですけど?」

「ほら、魔王級アンデットと13魔将を作っただろう。あいつらのおかげで、第二拠点がすごく発達し出しただろう」

「……」

 ユウの視線が、なぜか細く鋭くなって、僕を責めるようになった。


「……レギュレギュ?」

「兄さん?」

 ユウだけでなく、ミカちゃんまで僕を疑うような目で見てきた。



「……魔王クラスのアンデットなんて、簡単に作れないんだよ。だからちょっとばかし、世界を削って……ネ」

 この大穴作った犯人は、魔王は魔王でも、前世の姿に戻った僕だからね。

 前世の僕は、マジ物の魔王だったから。


「世界を削った?」

「そういえばこの前家にいたのに、北から魔王レギュレギュのとてつもない気配がしたよな」

 ユウとミカちゃんに、責められるように見つめられ続ける僕。

 正直居心地がよくないね。


「だから、あいつらを作るために、僕がこれをしたんだよ」

 気まずくはあるけど、回りくどく話していても仕方ないので、僕は正直に答えた。


「ほーへー、レギュレギュがこれをしたんだ」

「そうだよ、ミカちゃん」

「兄さん、本当に本当ですか?」

「本当だよ、ユウ」

 なんとなく、2人とも信じてないって感じがする。


 そりゃそうだよね。こんな大穴作れる人間(ドラゴニュート)なんていたら、それは驚きなんてレベルじゃない。世界滅亡レベルの驚きだね。

 とはいえ、これくらいの穴ならマザーならあっさり作れそうだけど、それをここで言っても無駄なので、口にしないでおこう。


「魔王だー!レギュレギュがこの世界を滅ぼすつもりだー!」

「兄さん、頼むから僕たちの命は助けてください。お願いですから、僕たちを世界征服だか破壊だか知りませんが、そんな物騒なことに巻き込まないでください!」

「はいっ!?」


 さっきまでの疑うような態度が一転、ミカちゃんが叫び声を上げ、ユウが涙目になっていた。


「いや、僕は現代文明目指しているだけで、世界征服も破壊も考えてなんか……」

「勇者は、勇者はどこかにいるんだ!このままだと世界が滅びる!」

「うううっ、兄さんが昔から暴力主義なのは分かっていたけれど、僕の認識が甘かった。暴君どころじゃない……」


「お前ら、いい加減に黙らないと絞めるぞ?」


 聞いていたら、2人とも大変失礼なことを言い出したので、僕はドスを聞かせた声を出した。


「……フレイア、そっくり」

「というか、絶対にフレイアがああなったのって、兄さんが原因ですよね」

「……」


 あっれー、おかしいなー?

 脅しを掛けたら、なぜかフレイアがああなった原因扱いされたぞ。

 なぜだー?


「いやいや、僕のせいじゃないから」

「絶対レギュレギュのせいだ!」

「兄さんのせいです!」


 なんでだろうね、ミカちゃんとユウは僕の言葉をちっとも信じてくれない。




 ところで、大穴作ったのが僕と発覚した結果、他の兄弟たちの反応だけど、

「ウフフッ、さすがはレギュラスお兄様。やっぱりあんな澄まし顔の出来損ないアンデットとはレベルが違いますわ」

 フレイアは、なぜか嬉しそうにしている。


 ……フレイア、13魔将のことが嫌いなんだな。

 自分より強い奴は許さない。って訳じゃないだろうけど、相性が悪いのだろか?



「兄さんがしたんだー……もしかして、僕たちでもこういうの出来るかな?」

「レオン、さすがにこれはレギュラス兄上じゃないとできませんよ」

『そうだよね。レギュ兄って、やっぱりスゴイや。ドラド、憧れちゃう。いつかドラドも、こんなことできるようになりたいなー』

 一方レオン、リズ、ドラドはこんな感じ。


 話の塩梅からして、もしかして君たちもこんな大穴作れるようになりたいのかね?

 いやいや、さすがに無理だからやめときなさい。


 ここまでやると、魔王レベルの実力になっちゃうから。



 ……ただあと千年くらい生きれるなら、この兄弟たちでも出来るようになるかもしれない。

 そこまで僕らの寿命があるかは知らないけどさ。


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