227 兄弟と13魔将
第二拠点では僕たち以外の兄弟も、それぞれ活動している。
「さすがは8号の叔父上、私よりも凄いです」
――ギギッ
そんなことを言っているのは、リズ。
現在リズは拠点の建材として利用している、劣化黒曜石を作っている。その傍では13魔将の1人、8号も同じ作業をしていた。
ただリズが作る速度に対して、8号の製作速度はそれを上回る。
「出来上がった劣化黒曜石は透き通っていて、とても綺麗です。これはもしかするとレギュラス兄上より上かもしれませんね」
――ギギッ
魔力で僕たち兄弟を圧倒していることもあり、8号の作る劣化黒曜石は透明で綺麗。
これはもう劣化と言う文字を取った、本物の黒曜石そのものだった。
そんな黒曜石を生み出す8号のことを、リズは叔父上とまで呼んで尊敬していた。
そして8号もさっきからリズに返事をしているのだけど。
悲しいかな。喋ることができない8号の声は、ただの骨の擦れあう音にしか聞こえない。
リズはの音を、8号の声だと理解していなかった。
また拠点の別の一角では、ドラドが13魔将の1体をじーっと黙って見つめていた。
『おいしそう』
――ギギッ
ぽつりとこぼすドラド
尻尾がフリフリと動いたかと思うと、急停止。
でも、堪えきれなくてまたしてもピクピクと動き、それからゆっくりフリフリ動き出す。
それがドラドの内心での葛藤を表している。
『でも、食べたら駄目だよね』
――ギギッ
そんなドラドのつぶやきに、13魔将はただ沈黙しているだけ。
実際には声を出しているけど、13魔将の声は、やはり骨のこすれる音でしかない。
最上位アンデットとは言っても、所詮骨。
ドラゴニュート兄弟から見れば骨はおやつ扱いなので、ドラドは自分の食欲と戦っていた。
自分より強い相手を食べ物とみる辺り、ドラドもかなりいい性格をしている。
――ギギッ
一方おやつ扱いされている13魔将が何を言っているのか。それを理解できる者のは、この拠点にはユウしかいなかった。
そして幸か不幸か、この場にユウはいないのだった。
こんな13魔性たちであるが、こいつらは肉体がアンデットである上、魂が上級魔族の魂を元にした"疑魂"で出来ている。
魂の中に入っている情報はほとんど空な上に、そこ入っている情報は、僕が書きこんだものだった。
13魔将は、魔王から準魔王級の絶大な力を持った存在だ。
こんなものが自由意思をもって行動をしようものなら、ろくでもない結果になるのが目に見えている。大体自分の力に溺れてヒャッハーして暴れまわり、質が悪ければ作った僕にだって襲い掛かってくるだろう。
だから、僕は13魔将がそんな風にならないように"作った"。
こいつらはロボットのような存在で、与えられた命令をこなすための人形になっている。
主である僕とデネブに逆らうことがなく、与えられた命令に従って行動する。
とはいえ脳みそが空っぽでは何もできないので(アンデットなので既に物理的な脳みそがないけど)、思考力は有してはいるが、それでも普通の人間並みの知能があるかと言われれば、あるとはいえない。
ただ高度な魔法を使用可能で、部分的には人間のレベルを超えている部分もあった。
こいつらは自然な存在でなく、あくまでも"人工物"というわけだ。
ロボットであれば、計算能力は人間を超えた速度でできるだろうか、一方で感情と呼べるものは人間ほどに存在できない。
それと同じで13魔将の魂と思考力も、つぎはぎの様に偏っている。
ロボットは人のために生み出される存在。それと同じ事を13魔将でもしているわけだ。
(ヒドイ、アンデット相手とはいえなんて非道な!)
(お前だって、便利な道具代わりに使ってるだろ)
(いえ、なんとなく言っておかないといけない気がしたんですよ。お約束的に)
お約束って、一体どんなお約束だよ?
それに非道だなんだって言われても、僕って善人じゃないし。
はあっ、なんとなくだけど、ミカちゃんとデネブって似てるんだよね。
オタクなところや、たまにネタに走るところが。
まったく、僕の身近にはどうしてこんなのばかりなんだ。
後書き
話の配分がうまくいかず、いつもより短くなってしまった悲しみ><
本編に入れるほどの話ではなかったのですが、13魔将の事情を多少は書いておいてあげようかなーと思って、本編に入れました。




