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221 第二拠点の管理人(後編) (ドナン視点)

 偉大なるお方より木版で、

「炭、ちょうだい」

 との(ふみ)を賜った。


 それを運んできたのは"13魔将"のお一人。


 13魔将の方々は、誰もがワシなどとは桁違いの力を有しておられる。

 全身からあふれ出る魔力の波動は膨大で、ワシごときしがないリッチなど、視線の一睨みでそのまま魂ごと砕かれ、消滅させられてしまうと錯覚する威圧感がある。


 おそらくはシャドウ様とて、ワシと同じ思いじゃろう。


 レギュラス様はこのようなお方をお作りになられたというのじゃから、ほとほと恐ろしいお方じゃ。

 恐ろしいという次元を超えて、もはやワシなどがおよびつかぬ領域におられる方なのだと感じさせられる。


 このようなお方に、ただの文を運ばせるなど、あまりにも恐れ多き事。

「よろしければ、文を運ぶのは、スケルトンどもに任せ……」

「……」

「い、いや、なんでもございません」


 お、恐ろしい。

 13魔将様は何もおっしゃらなかった。


 じゃがその体に纏う魔力が変質し、ワシに「余計なことを言うな!」と命令されたかのよう。


 ワシ如きが口出ししてはならぬことなのじゃろう。


 そもそも真に恐ろしきは目の前にいる13魔将様でなく、玉座の間での一瞥以来お見掛けしておらぬ、"あのお方"。

 あのお方の名をワシは知らぬ。そしてレギュラス様も、その名を知ってはならぬと言明された。


 その際レギュラス様が、

「あのポンコツ、自分の名前を他人に知られるのも嫌とか、どこまでポンコツなんだ」

 と、小声でおっしゃられていた気がするが、あれはきっとワシの聞き間違いに違いない。


 いずれにしても、あのお方のことは、名すら知ってはならない。

 その名を知ろうものならば、ワシはその時に殺されてしまうじゃろう。


 偉大なるお方のなされることには、小人が口をはさんでよいことではないのじゃ。



 そして指示を受けることがあれば、ワシはそれに全力で答えるだけ。


「直ちに炭を用意させます」

 ワシは文に従って、スケルトンに早速炭を持ってこさせた。


 スケルトンが炭を持ってきた後、13魔将様はそれを黙って受け取って、この場を後にした。


「ふ、ふーっ。なんと恐ろしい気配。目を合わせただけで、魂を吸い出されるかと思うた」

 13魔将様が去った後、ワシはそれまで感じていた緊張感が抜けていくのを感じ、執務室の椅子に深く体を預けた。


 正直、あれほどのお方の相手などしたくない。

 アンデットになれば感情の多くが生者のそれと変わる。

 ほとんどの感情が摩滅し、感情の起伏が減るはずじゃが、あのような方々を前にしては、そんなアンデットの感情ですら、激しく揺さぶられずにおられん。





 ところで、"あのお方"と13魔将の方々がこの拠点に加わってから数日。


 今までろくに機能しておらなんだ採石場や木材の切り出し、鉱石の採掘が、驚くべき速度で進みだした。


 理由は単純で、拠点にいるすべてのアンデットが"特殊化"したからじゃ。


 魔物も生物である以上、当然同じ種族内で男女が交尾することで繁殖する性質を持つ。

 が、古来より強大な力を持つ魔物や魔族は、"魔力だまり"と呼ばれる、濃密な魔力がある場所より出現することが知られておる。


 現在この拠点には、驚くべき魔力を持たれる方々が常駐されており、その体から溢れた魔力が拠点内に渦巻いておる。

 それによって拠点の全てのアンデットたちが特殊化した。


 白かったスケルトンたちの骨が、濃密な魔力によって黒く染まった。

 このワシドナンも、リッチとはいえ、ローブを纏っている以外は見た目はスケルトンと大差なく、やはり骨が白い。

 じゃが、そんなワシらが強大な魔力の中で共に生活していたために、その体が特殊化したわけじゃ。


 レギュラス様によって、レイスよりリッチへと生み返られた経験のあるワシじゃが、特殊化というのは初めて経験する。

 リッチになった際、ワシの魔力量はそれまでと比べて増加したのをハッキリと感じたが、今回特殊化したことによって、またもワシの魔力が増加した。


 それは拠点のスケルトンたちも同じで、以前に比べて体が頑丈になり、力が強くなり、さらには、

「ド、ド、ナ、ナ、ナ、ン、様」

 たどたどしいとはいえ、スケルトンがワシの名を呼ぶようになった。


 これは明らかに以前までのスケルトンと違う。

 言葉を介するようになったということは、以前にもまして知能が向上したということ。


 現にその変化は顕著で、今までろくに鉱石の見分けがつかなければ、石切場でもシャドウ様が切り出した石を運ぶ以外まるで役に立たなんだスケルトンどもが、知恵をつけたことで生まれ変わった。


 鉱石の見分けがつくようになり、石切の作業を自分たちでできるようになった。


「シ、シゴト、シゴト、タノシイ。シゴト……」


 知能が向上し、学習することを覚えたことで、技術を自ら身につけるようになった。

 それによってスケルトンたちは以前と違い、有能な労働力へ生まれ変わっていった。



 今まで大して役に立たなかったスケルトンどもが生まれ変わったことで、拠点での作業は見違えるように進んでいくようになった。


「特殊化とはなんと凄まじいことか。このようなことまで見越して、あのお方と13魔将様方を拠点に配置された我が偉大なる主は、なんと叡智に優れたお方であろう」


 ワシはこれほどの奇跡を用意してくだされたレギュラス様に、心の底より深く感謝した。



 ワシの忠誠の全ては、レギュラス様へ。

 この生まれ変わったスケルトンたちとともに、ワシは偉大なる主にさらに忠誠を尽くしていくことを誓った。


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