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209 ドラゴニュート兄弟対ベヒモス

 ――GUOOOONNNーーー!!!


 ベヒモスも狩ったことだし、今回の狩りの旅は終了。

 ということで、第二拠点に帰ろうとしていた僕たちだけど、そんな僕たちの前に再びベヒモスが現れた。


「今度こそ、俺が"飯"にしてくれるー」

 飯じゃなくて、"倒して見せる"の間違いじゃないのかな?

 ま、ミカちゃんだから仕方ないけど。


 現れたベヒモスに向かって早速ミカちゃんが剣を片手に突進していく。と言っても、手にしている武器は相変わらず刃のついていない、ブルーメタルタートルソード。

 この剣って実際鈍器にしかならないんだよね。

 ただ物凄く頑丈で、ドラゴニュートの力で思い切り岩に叩きつけても全く壊れないほど頑丈。逆に岩の方が割れる有様だ。



「せっかくだから皆で戦ってごらん。ただしフレイアは観戦で」

 そんなミカちゃんに続けと、僕は他の兄弟たちに言った。



「はーい」

 早速行動を開始したのは、氷魔法"氷の(アイス・カッター)"を放ったレオン。魔法は走るミカちゃんを追い越して、バシバシとベヒモスの体に命中する。

 だけど、ダメージは全くなし。

 見た目が巨大なだけでなく、皮もかなり頑丈なので、初歩的な攻撃魔法ではびくともしないベヒモスだ。


「もっと攻撃力を上げないとダメだね」

「うーん。それじゃあ、"氷の(アイス・ランス)"」

 僕のダメ出しを受けて、レオンは次なる魔法を放つ。


 "氷の(アイス・ランス)"はその名前のまま、氷の槍を放つ魔法。

 基本的に大きさが1メートルほどの、氷でできた槍を飛ばす魔法だ。ただし魔力を多く注ぎ込めば、それだけ槍を大きくすることができる。


 レオンは3メートルの大きさにして、それをベヒモスの前脚へ投げつけた。



 ――GUOONーーー!!!


 レオンが投擲したアイス・ランスは見事ベヒモスの脚に命中。

 氷の槍がベヒモスの脚を貫通し、脚を地面を縫いつける。


 ベヒモスが氷の槍を何とかしようと足を動かそうとしても、氷の槍はビクともしない。

 この攻撃にはさすがのベヒモスも堪えたようで、悲鳴に似た雄叫びを上げる。


「うおっしゃー、よくやったレオン!」

 そして地面に足を縫いつけられたベヒモスに向かって、ミカちゃんが飛び上がって攻撃を仕掛けた。


 でも、あの剣ではベヒモスにダメージは入らないんだよね。


 ただミカちゃんは頭が気の毒な子でも、剣に関しては馬鹿じゃない。


 ミカちゃんは剣を皮膚でなく、ベヒモスの目へ突き刺した。


 ――GGGUUUOOOONNNNーーー!!!


 体の革と違って、目は頑丈でない。

 あらゆる生物にとって目は、防御することのできない弱点である為、そこに剣を突っ込まれると、ベヒモスにもどうしようもなかった。


 ミカちゃんが剣を突き刺した眼球から、ドロリと濁った液体が飛び散る。

 片目を貫かれ、視力の半分を喪失したベヒモスが怯えるように泣き叫ぶ。


「行きます!」

 この弱ったベヒモスへ、リズがハルバートを構えながら突撃。


 レオンが前足の一つを地面に縫い付けたように、もう片方の前足へリズはハルバートの刃を叩きつけた。


 刃がベヒモスの脚に命中した瞬間、重い音がする。かと思うと、ベヒモスの脚があらぬ方向へ折れ曲がった。

 ハルバートの一撃は、ベヒモスの防御力を無視して、体中にある骨をへし折っていた。


 これでは刃でなく、ハンマーで殴りつけたよう。

 ドラゴニュートの力もあるけれど、攻撃の瞬間リズが手にするハルバートには、重力魔法"加重(ウェイデン)"の力が加わっていた。

 "加重(ウェイデン)"は物体にかかっている重力を増すことで、重くする魔法。

 ウェイデンによって重量が増したことで、ハルバートは見た目以上の重量を持った武器となり、その強烈な一撃が、ベヒモスの脚の骨をへし折った。



 ――GUONーーー!


 両前足が破壊されてしまい、ベヒモスは地面へ頭を横たえてしまう。

 足に大きな怪我を負ったことで、ベヒモスも先ほどまでの大きな声を上げることができなくなっていた。



「ユウ、お前もボケッとしてないで戦え!」

「ええっ、どうして僕が……」

「ビビってんじゃねえ!俺に食われたいのかー!」

「うっ、うわああああっ!!!」


 続けてミカちゃんの説得と言う名の脅迫を受けて、ベヒモス相手に及び腰なユウが攻撃に加わった。

 ミカちゃんはユウの剣の師匠で、今でも扱かれてるからね。おまけに野生の弱肉強食を体現していることもあって、ユウはミカちゃんに逆らえなかった。


 とはいえ、ユウはミカちゃんの弟子なのは確か。

 ミカちゃんがベヒモスの片目を剣で貫いたように、ユウもベヒモスの前まで行くと大きくジャンプ。残ったもう片方の目を剣で貫く。


「うっ、うわっ、ゴブリンなんかと全然感触が違う!」


 剣の突きは素早く、惚れ惚れする速さ。

 ミカちゃんに鍛えられることでユウの剣術はかなり高いレベルになっている。けど、それに反してメンタル面は相変わらずだった。

 ユウは性格面では、戦闘にとことん向いてないからね。


 この後、兄弟たちがベヒモスをタコ殴りにして弱らせ、弱り切って抵抗できなくさせた。

 ただベヒモスが巨大すぎるせいで、とても致命傷を与えることができない。


 いくら小さい攻撃を加えても、とどめを刺せないのでは意味がない。


 そこでレオンが水魔法で巨大な"水球(アクア・ボール)"を作り、それでベヒモスの顔を覆って息ができないようにした。

 弱り切ったペスモスでは、アクア・ボールの中から抜け出すこともできず、そのまま窒息して倒された。



「ふむ、フレイア以外だと火力不足が問題かな?」

 兄弟たちの一連の戦いを見て、僕はそう口にする。


 なお、この戦いにドラドは不参加だけど、別にいいよね。

 ドラドの場合、メタモルフォーゼを解いて元の姿に戻れば、突撃するだけでベヒモスを吹っ飛ばせる。

 ドラドは僕たちと違って、元の姿が体長10メートルのドラゴンなので、それだけでベヒモスをコテンパンにできる。


 頑丈さもベヒモスより上なので、怪我の心配もないだろう。





 ところで兄弟たちが戦っている間、実は別方向からもう1体ベヒモスが現れていた。


『あれはドラドが倒そうか?』

「たまには体を動かしておきたいから、僕が仕留めるよ」


 ドラドを制止して、僕が新手のベヒモスと戦った。


 最初はミカちゃんが戦っていたみたいに、ジャンプしてベヒモスの頭の前へ飛んで、拳を叩きつける。


「さすがに、素手で倒すのは無理かな?」

 ペシペシ殴りつけてみるけれど、ベヒモスには通じない。


 ただ本気で殴れば問題なく攻撃が通るけど、今回はベヒモスを一撃死させるのでなく、運動相手になってもらうので、それはしない。


 ベヒモスが僕を煩わしく思って、僕へ向かって頭を振るってくる。

 その際にベヒモスの角が僕の体を捕えようとするけど、ベヒモスは体が巨大すぎるせいで、小回りが全然効かない。


 僕が空中で軽く翼を動かして姿勢をずらせば、回避できてしまう。


 ただずっと滞空するつもりはないので、一度地面に着地して、それから再び跳躍。


 今度はベヒモスの顔面に軽い蹴りを入れたら、

 ――GUUUUNN!!

 と、唸り声を上げてベヒモスの顔が横に曲がった。

 さすがに首の骨が折れたわけじゃない。


 でも、

「あれっ、思っていたより弱い?」

 全然本気の蹴りじゃないけど、まさかこの程度で顔が曲がるなんて思わなかった。


 その後は適当にベヒモスと戯れつつ、のんびりミカちゃんたちの戦いぶりも見学していた。


 そうしてミカちゃんたちがベヒモスを窒息死させる頃に、僕の方も運動に付き合ってもらっていたベヒモスの頭の上に降り立った。


 ベヒモスの頭に拳を当てる。そこで"衝動(インパクト)"という魔法を放った。


 インパクトはベヒモスの体の表面を貫通して、その内部にある脳を激しく振動させる。

 というか振動と言う生易しいものを超えて、脳みそをグチャグチャにかき混ぜる死の衝撃となって、ベヒモスの脳を破壊した。


 ――ドドーンッ


 脳を破壊されては、どれだけ頑強な防御力を持っていても意味がない。

 ベヒモスは悲鳴を上げることもできず地面へ倒れ、鼻から血と破壊されて液状化した脳の一部を垂らして絶命した。


 ちなみに僕がベヒモスと戯れながら入れていた格闘攻撃では、ベヒモスの外見に傷ができていない。


 脳を破壊した以外には目立った傷がないので、ほぼ傷なし状態で倒したことになる。


「よしよし、これだけ綺麗だと革や角を素材として問題なく使えるね」


 綺麗な死体からは無駄なく素材をはぎ取ることができる。

 ベヒモスの角はドナンに加工させて調度品にすればいい。皮は頑丈なので防具に使える。

 それに骨を壊してないので、顔なしスケルトンベヒモスと違って、完全な形でのスケルトンベヒモスにすることができる。


 僕の気分としては、まるで新車の"ダンプカー"を手に入れた気分だ。

 やっぱり頭が壊れている中古のダンプカーより、新品ダンプカーの方が見た目もよくて心躍るよね。


「フフフ、よろしく"新品ダンプカー"」

 綺麗に倒したベヒモスの死体に、僕はニコリと語り掛けた。




「レギュラスお兄様、素敵な笑顔」

『レギュ兄楽しそうだねー』

 そんな僕の姿に、フレイアが頬を赤く染めてうっとりとし、ドラドも嬉しそうに尻尾をフリフリしていた。


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