表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/281

204 特別なアンデット作り

 レギュラス・アークトゥルスです。

 今回マザーが狩ってきてくれた大量の上級魔族ですが、この肉を兄弟皆で食べた後、いつものように骨を確保しました。


「フフフ、素晴らしい。

 これだけ力ある魔族たちの骨となれば、さぞや立派なアンデットになってくれることだろう」


 まあ、中にはミカちゃんや他の兄弟たちが、「うまい」「おいしい」と言いながら、骨まで齧って食べてしまったけど、それでも10体以上の骨を確保している。



 これを使って、特別なアンデットを作ることにしよう。




 というわけで、現在僕は上級魔族の骨を研究部屋に運び込んで、3日ほど籠って特別なアンデットを作成している。

 特別と言うのは、普段狩りで手に入るゴブリンや砂蜥蜴(バジリスク)、土狼で簡易的に作るアンデットと違って、もっと高位のアンデットを作ろうとしているから。


 普段であれば、死霊系の魔法を用いることで僕やユウがポコじゃかアンデットを作っているけれど、今回はそんな簡易版でなくもっときちんとした段取りを用いて作るものだ。


 ただのアンデットでなく、魔術的に強化することで生前以上の能力を得たアンデットを作り出す。

 特に今回手に入った上級魔族の死体の中には、準魔王級と言っていい、魔王に次ぐレベルの死体まであった。

 これを強化してアンデット化すれば、その能力は実質魔王に等しい能力になるだろう。



「フフフッ、それだけの能力があれば、ただの労働力(アンデット)より遥かに使い道が多くなるな」


 もっとも今回作る魔王級アンデットに関しては、僕のサブ人格であるデネブに魔法的に操作させることで、デネブの体として使用してもらうつもりだ。

 魔法の中には、相手の魂を乗っ取って体を動かすことができるようになる魔法があるのだけど、この魔法は生きている生物だけでなく、死者であるアンデットに対しても有効だった。

 デネブにその魔法を使わせれば、デネブ用の体を用意することができる。


 なお、魂を乗っ取る動向と物騒に聞こえるけど、例えてみればアンデットと言う名の"ラジコン"を、離れた場所にいるデネブと言う名の"リモコン"が操作すようなものだね。

 ラジコンとリモコンの関係だと思えば、そんなに物騒には聞こえなくなるね。


 そして僕の体には僕とデネブという2つの人格があるけれど、人格が2つなのに体が一つしかないせいで、今までいろいろ効率が悪かった。

 デネブは人格的にはポンコツ女だけど、それでも僕のサブ人格だけあって、その知識や技術力は恐ろしく高い。

 僕がシリウス師匠の弟子であるように、デネブもまた、シリウス師匠のサブ人格であるスピカ様の弟子だった。


 魔法の技術に関してデネブは僕にやや劣るものの、それでも同レベルと言ってよく、さらに魔道具や機械を作らせれば、その方面での知識は僕より上だった。


 性格はアレでも、デネブは優れた研究職(もしくは技術職)なわけだ。

 単純労働しかできないアンデットどもと違って、これだけ有能な人材を無為に遊ばせておくことなどできるわけがない。


 なので今回のアンデット作りの主目的は、デネブ用の体を作ることだった。


(うううっ、ただの骨だなんて、全然可愛くない)


 僕の脳内でデネブが文句を言ってきたけど、こいつは何を言ってるんだろう。


「可愛いも、可愛くないも関係ないだろ。それよりこれほどの素体をデネブの体にするんだから、魔力操作もかなりしやすくなるぞ。さすがに僕の前世の体(魔王)並みとはいかないけど、高度な魔道具を作るのに支障ないはずだ」


(だから、可愛くない。骨なんてイヤダー!)


「やかましい。お前は性格はポンコツでも、優秀な頭脳労働者なんだから、これからはアンデットの体を使ってきりきり働いてもらうぞ!」


(ヒィー、私ブラック労働なんてイヤ。No、ブラック労働No!)


 デネブの奴が僕の脳内で叫ぶけれど、そんなのは無視無視。

 というか、蘇南セリフどこで覚えた?

 そういえば似たようなことを以前ミカちゃんがほざいていたっけ?


 全く、無駄な知識をつけなくてもいいのに。



 そんなことより、素晴らしいアンデット作りを続けていこう。



 なお、アンデット作りの作業だけど、これは僕の両手を変身(メタモルフォーゼ)を使って、前世の魔王だった頃のものに変えて行う。

 いつもは人差し指を魔王だった頃に変えているけど、今回は両手だ。


 僕の前世の体は、魔法の行使に対して非常に高い適性があり、魔法的に複雑な作業をこなすのが容易にできるようになる。


 前々世の日本人だった頃には、物凄く細い筆先で米粒に文字を掛けるなんて人がいたそうだけど、僕の場合は魔王の両手を用いることで、電子回路並みに超微細な"魔術紋"を施すことができた。


 そしてこの"魔術紋"と言うのは、魔法的に力を持った文字や図形のことだ。

 一般的に魔法陣と呼ばれるものは、円の中に魔術的意味を含んだ文字や図形を描いているけれど、魔術紋とは、そんな魔法陣の中に描かれた文字や図形と同じものだった。

 ただ魔法陣のように、円の中に図形を施す必要はなく、描く対象物に対して、魔術紋を刻み込んでいけばよかった。


 という訳で、僕は今回手に入れた準魔王級の上級魔族の骨に、金色に輝く精緻な魔術紋を刻み込んでいく。

 上級魔族の骨は黒く、そこに魔力を流し込めば、魔術紋が黄金色の輝きを帯びる。

 なんとも神秘的な光景だけど、事実この骨には神秘では済まないだけの魔法技術が詰め込まれている。


 この魔術紋を刻み込んだ骨をアンドットとして蘇らせたとき、その力は本当に魔王に匹敵するものとなるだろう。



 そんな作業を続けて3日目だ。

 連日徹夜続きだけど、ドラゴニュートの体に生まれ変わってから、既に3日続けての徹夜なんて何度も経験している。

 なのでこの程度の連続作業など、もはや僕にとって何ほどの物でなかった。


 本当、ドラゴニュートの体って便利だよね。

 生まれてまだ2年たってないのに、それで3日連続の徹夜ができるのだから、とっても素晴らしい。

 フフフッ、この調子だと将来はもっと徹夜続きで働くことができそうだ。



 そんな楽しそうな未来を想像してたら、デネブが話しかけてきた。

(私には見える。レギュラス様は"また"過労死するんだ)

「"また"ってどういうことかな?」

(だって、前世のレギュラス様って確実に過労死ですよ)

「そうかな?前世はなんだかんだで2千年生きてたから、過労死ってことはないでしょう」

(前世のお父上は、その5倍は生きてましたよ。しかも、レギュラス様の方が先に死んじゃったし)


 ふうっ、こいつ何言ってるんだ?

 確かに前世の僕は、魔族として早死にだったかもしれないけど、それと過労死の間に何の関係があるか分からないよ。


(ウワーッ、相変わらず重症だわ。前世では1週間徹夜はデフォで、さらに1か月寝ずに働くなんてこともよくしていたから……本当にレギュラス様って……)


 そこでなぜか、デネブが視線をスッと逸らした。

 その仕草には手の施しようがない、物凄く可哀そうな相手を見てしまって、視線を逸らす感情がこもっている。

 つまり同情だ。


 もちろんデネブには体がないので、物理的に視線を逸らすことができない。

 だけど僕とデネブは、2人で一つの存在であるため、デネブの考えを僕は見通すことができた。


 しかしどうして僕が、このポンコツ女に同情されないといけないんだろう?

 まあいい。

 そんなことより、作業の続きをしていこう。


 僕はデネブとの益体のない話を打ち切って、上級魔族の骨に魔術紋を刻んでいく作業を続けていく事にした。

 この作業って、集中力がいるから、いつまでもデネブと話してるわけにはいかないしね


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ