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198 肉食超獣マザー (マザー視点)

『さて、私も子供たちのために、おいしそうな上級魔族を狩らないと』

 舎弟のシルバリオンとイグニスを突撃させたので、私も子供たちのために突撃よ。


 なーに、相手は立った120万ぽっちの魔族。

 その気になれば全滅させてから、上級魔族の死体を探せばいいだけだし。



 なんだけど、この時私は魔族と戦っている人間の陣営になぜか目が行ってしまった。

 いうなれば、直感って奴かしら?

 私のドラゴンだから、直感は人間より鋭いわよ。


 それで気になった方を見ると、地上でキラキラと黄金に輝く鎧を纏った騎士が見えたわ。


 あらっ、いいわねー。

 ああいう金ぴかなものって。

 ついつい、ドラゴンの本能がささやいて、欲しくなっちゃうの。


 い、いけないわ。私は大事な子供たちのために、上級魔族を狩るっていうお仕事が。


 でも、少しくらいはいいわよねー。


 ……

 ……

 ……


 私は自分の欲望に負けちゃった。

 上級魔族のことは後で捕まえるとして、ひとまず気になるキンキラ鎧の騎士様の近くへ降り立った。


「黄金の超巨大竜!」

「まさか、あれは竜神様では!」

「なんと、神のドラゴンが!」


 キンキラ騎士さんの前に降りたということは、つまり人間たちの軍勢の前に降り立つということ。

 人間たちは私の姿を見て、驚いてるようだわ。

 とはいえ、今は魔族と戦闘中なので、驚きはしても、さすがに私に向かって拝んで来たりなんてことはないけど。



 あと、私が地面に降りた際に邪魔なゴブリンたちがいたけれど、地面に降りた際にペチャンコに潰れたわ。まあ私の大きさからしたら一メートルちょっとのゴブリンなんて、ただの小石程度の大きさなのよね。

 体重差に関しては、それこそ比べるだけ無駄というもの。


 それよりも、キンキラ鎧さーん。


 ――ブオーンブオーン


 私は光物につられて、ついつい興奮。


 嬉しいものだから尻尾が自然と右へ左へ動いて、そのたびにゴブリンたちが千匹単位で潰れたり、吹き飛んで行ったりしてる。


「な、なんて強さだ!」

「ゴブリンがまるでゴミのようだ!」


 なんて人間たちの声もしている。



 ――GYA、GYAOOOーーー

『そんなことよりも、キンキラ鎧ー』



 私は鼻歌交じりに吠えながら、キンキラ鎧をもっと近くで見ようと頭をかがめた。


「竜神様……いったいどうしてここへ!?」

 と、顔を近づけたら、キナキラ鎧の騎士さんと目が合った。


 騎士さんは、さっきまでゴブリン相手に戦っていたので、私のことに気づくのが遅れた見たい。

 もっとも私が登場したことで、この辺りにいるゴブリンはみんな逃げ出しちゃったけどね。


 で、その騎士さんなんだけど、金髪碧眼のイケメン騎士さん。

 私ってシルバリオンみたいに人間の街に遊びに行く趣味はないから、人間にはあまり詳しくないの。

 けれど、人間にしては小顔ね。

 でも顔とは対照的に、体はとっても鍛えられていて、筋肉がムキムキ。


 見ていると、私とってもドキドキしてきちゃう。


 ……っていうか。


 ――GYAAAAAAOOOOOOOO!!!!!

『ダーリン!!!』


 そこにいるのは、私の愛する愛する旦那様。

 レギュちゃんたちの父親だった。



 まさかこんな場所でダーリンに出会えるなんて、今日はなんて素敵な日なのかしら。


 ――ブオオーーーンブオーーーン


 物凄く嬉しくなったものだから、さらに尻尾が元気に動いちゃう。


『グガー』

『ギョワー』

『ゲバーッ』


 尻尾をブンブン動かしすぎたせいで、先っぽからカマイタチが飛び出してしまったわ。

 そのせいで離れた場所にいるゴブリンたちの部隊が、バタバタと倒れちゃう。

 カマイタチって言っても私の起こしてるカマイタチだから、一度に数百から千くらいのゴブリンの胴体が、きれいに真っ二つに切れていっちゃう。


 もう、やだ。

 私ったらダーリンの前なのに、恥ずかしい。


 --GYAっ!

『テヘッ』


 その場でモジモジして、つい地団太を踏んで、地面をダンダンと凹ませちゃう。


「竜神様、落ち着いて。地面が割れてしまいます」

『ハッ、いけない。私ったらついやっちゃった』


 ダンダンしてたせいで、大きな穴ができちゃってたわ。


 もう、私のお馬鹿さん。


 でも、せっかくダーリンに出会えたんだし……このままでいるのはアレよね。

 だから、人化しちゃいましょう。


 私はさっそく"人化の術"を使って、ドラゴンの形態から人の姿へ化ける。


 私の体全体が黄金の輝きに包まれて、みるみる間に人間の小さな姿へ変わっていく。


 ただ私の場合って、シルバリオンたちと違って魔力がありすぎるせいで、人の大きさになると、全身が淡い黄金の輝きに包まれちゃうの。

 ちなみに人化した私は、金髪のカールした髪が腰のあたりまで伸びいていて、碧眼の瞳になるわ。

 自慢じゃないけれど、私はゴージャス系美人よ。

 ミカちゃんが妖怪みたいな顔になってガン見してくる、ナイスバディの巨乳。

 いわゆる、ボンキュッボン。


 ミカちゃんが大人になったら、きっと今の私みたいになるでしょうね。

 だって、私はミカちゃんの母親なんだから。


 ……でもミカちゃんの胸って、大人になっても小さいままの気がするのは、私の気のせいかしら?


「りゅ、竜神様が人の姿に……」

「なんと神々しい……」

「美の女神だ……」


 そして人の姿になったら、外野の人間たちがザワザワとし始めた。


「うっ、血、血が……」


 変なことを言って、鼻を押さえだす人もいるわ。

 戦場にいて、「血」って言いだせば、普通は大怪我したときに言う言葉のはず。

 なのに、鼻血を出しながら言うのはどうなのかしら?


「あの、竜神様、せめてお召し物を」

 なんて思っていたら、私はダーリンに視線をそらされながら、ダーリンが着けていた赤いマントを差し出された。


 そういえば、人間って服を着ていないといけないんだっけ。

 私はドラゴンだから、人間の姿になっても服なんて着たくないんだけど。


 でも、せっかくダーリンが着ているマントなんだから、私が着てもいいわよね。


 スーハー。

 ああ、ダーリンのいい匂いが……。


 でも、ちょっと待った。


 ……この赤いマントなんだけど、これ、実は私が以前ダーリンと交尾した時にあげた物なのよね。

 竜皮のマントで、その効果はオリハルコンの刃でも防げる防御力。

 なお、原材料はイグニスの皮。


 昔、イグニスが私に歯向かってばかりだった頃に、奴の皮を鱗ごとひん剥いたことがあるんだけど、その時の皮の一部だったりするわ。


 ああ、せっかくのダーリンの香りなのに、イグニスの匂いがしてきたわ。

 ちょっと、ムカッてしてくるわね。


 私の持っている物の中で、最高位の防具になるからダーリンにプレゼントしたんだけど……あとでイグニスを殴っておかないと。


「ヒイッ!」


 なんて考えてたら、外野の人間たちから小さな悲鳴が巻き起こった。

 なぜか鎧を着ている兵士たちが、ガチガチと歯を鳴らしている。

 手に持つ槍が上下に小刻みに揺れて、震え上がっている。


 あら、いけない。

 私の怒気って、人化してても人間にはかなり危険らしいから、ここは押さえておかないと。


 こんなところで、ダーリンの同族を殺しちゃったら、私がダーリンに嫌われちゃう。



「あの、竜神様。なぜあなた様がこのような場所に?」

 私が怒気を納めると、ダーリンが尋ねてきたわ。


 (私がプレゼントした)オリハルコン製の剣を手にしていて、周囲を警戒している。


 ああ、そういえここでは人間と魔族が戦争している最中だったわね。

 だから、ダーリンが周囲を警戒しているのね。


 ふうっ、せっかくダーリンに出会えたのに、魔族たちってば。


『私、ダーリンに会いに来たの』

 でも、そんな外野は無視無視。


 出会えたのは偶然だけど、せっかく見つけたんだから、今の私の目的はダーリンと楽しむことよ。


「私に会いに?」

『そう。だって、ダーリンは私のものだからー』


 ブチューッ。

 問答無用で私はダーリンの胸に飛び込んで、唇を無理やり奪ったわ。


「!」

 いきなりのディープキッスに、ダーリンが驚いていたけれど、無駄無駄。

 私はダーリンの後頭部に腕を回して、ダーリンが逃げられないようにする。


 ダーリンの力だと、私から逃れるなんて無理無理。


『ダーリーンー』

 私は、ダーリンに出会えたことに、ムラムラしちゃって、そのままダーリンを地面の上に押し倒した。


「竜神様、ここは戦争中ででしてね……」

『ん?邪魔者は消す』


 地面の上に押し倒したことで、互いの唇が一度離れたわ。

 その際に、ダーリンが言った言葉。


 そうね、別に周りから見られているのはどうでもいいけれど、ダーリンは魔族と戦っていたのよね。



 そういえば、ギャーギャー煩いゴブリンとコボルトの喚き声が聞こえる。


 私とダーリンの逢瀬を邪魔する連中に、一片の慈悲すらなし。



 ――即死デス

 だから私は、この時即死魔法を使った。


 文字のまま、生物の心臓を一撃で止める即死魔法。


 ――バタッ、バタバタバタバタバタバタバタ


 私が使った魔法で、この戦場にいた魔族たちは一斉に地面に倒れて、動かなくなった。


 今の私は人化しているので弱体化しているけど、魔族の軍勢の半分くらいは今の魔法で死んだんじゃないかしら?

 本来、即死魔法は単体にしか効果がない魔法だけど、私の場合は集団にかけることだって簡単にできる。


 そして私の即死魔法は、上級魔族ですら簡単に命を刈り取ることができた。


『さあ、ダーリン。楽しみましょう』


 魔族のことなど、もはやお終い。

 私ははしたないことに口から涎が垂れていたようで、それが地面に押し倒しているダーリンの顔に、ボタボタと垂れかかっていた。


 うふふっ、最高の御馳走ね。



 ――あ、いけない。

 御馳走っていえば、レギュちゃんたちに上級魔族を持って帰らないといけないんだった。


『ハアッ、ハアッ』

「んんっ」


 私は節操もなく、ダーリンに襲い掛かっていた。


 でも、ついでで引き寄せ(アポーツ)の魔法を使って、この戦場の中で一番魔力の高い魔族を引き寄せる。


 引き寄せ(アポーツ)は次元魔法の一つで、目的の物を私の手元へ引き寄せることができる魔法。

 で、引き寄せた魔族が反応するより早く、私はその首を片手でへし折っておいた。


『グゲッ』

 っと、魔族が断末魔の声を出した。



 けれど、今は邪魔。


 交尾の邪魔になるから、その辺に適当に投げて捨てておく。

 もちろん私の"投げる"だから、飛んでいく距離はキロ単位よ。


 あとで回収して、子供たちのところ持っていきましょう。


『ダーリーン』

「うっ、ハアハアッ」

 それよりも、今は私のとっても大切なダーリンと、楽しまないと。


 ダーリンが来ている金ぴか鎧が邪魔なので、私は力任せにそれをひん剥いていく。鎧の留め具が、パンパンと言いながら壊れていくわね。



「せ、聖騎士殿が、竜神様とあのようなことを」

「か、神の祝福だ」

「おおっ、神事であられる」


 私とダーリンはせっせと頑張りだしたけど、外野の人間たちはひれ伏して私たちのことを見ていたわ。


「は、恥ずかしくないですか?」

『全然、私は見られていても平気』

 もあ、ダーリンってば恥ずかしがり屋さん。

 でも、私はドラゴンだから、衆人環境でも問題ないから。

 というか、ドラゴンの場合だと、そっちの方が普通。


『ンンッ!』

 なんて思ってたら、今度はダーリンが逞しい二の腕で、強引に私の体を引き寄せてキスしてきたわ。



 もう、ダーリンてば全然恥ずかしがってないじゃないの。

 ウフフッ。


後書き



 当たり前ですが、姐さんはドラゴンなので肉食獣です。

 ええ、それはもう、とっても肉食系なので。

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