197 魔王軍四天王?だから誰だそれ? (イグニス視点)
――GAOOOOOOーーーー!!!
『上級魔族、出てこいヤー!!!』
俺はわが身の安全のため、魔族の軍勢の中を突っ走って上級魔族を探索中。
上級魔族がいると思しき、魔力が濃い場所に行ってみれば、そこには上級魔族でなく馬鹿デカいゴーレムがいた。
ゴーレムだったんだ。
そう、ゴーレムだ。
馬鹿デカいゴーレムのコアから、高濃度の魔力が放出されていて、それを上級魔族の気配と勘違いしてしまったわけだ。
ああ、ゴーレムじゃダメだよな。
硬いし食えないし……いや、マグマに入れて溶かせば、そのままズルズルと飲み込めるけどさ。
しかし、姐さんに言われたのは上級魔族だ。
ゴーレムなんて持っていったら、俺の顔面が変形するほどの威力で殴られかねん。
……連続で。
『ダー、上級魔族ー!』
誰が好き好んで姐さんに殴られたがる!
俺はマゾじゃないぞ!
てなわけで、馬鹿でかいゴーレムはさくっと破壊。
俺は上級魔族目指して、再度魔力の濃い場所を目指して走り出した。
たださ、嫌な予感がするんだ。
なぜかって?
目的の方向に走っていくにしたがって、今度はスケルトンやゾンビなどの不死者が大量に現れだした。
――グチャグチャ
ゴブリンを踏みつぶしながら走っていた時と大して変わらない感触が後ろ足からする。
しかし、このまま進んでいっても、上級魔族に出会えない気がする。
それどころか……。
「ムムッ、貴様はまさか灼熱竜イグニス。神話にも歌われるドラゴンが、なぜこのような場所に!」
『やかましい、お前に用なんかない!』
黒い闇のローブをまとった陰険骸骨がいたが、そんな奴のセリフなどどうでもいい。
今の俺は上級魔族に会えなくて焦ってるんだ。
相手をするのが面倒だったので、俺は口からファイアブレスを吐き出して、陰険骸骨を焼いた。
「愚かなり。我は魔王軍四天王の一人にして、冥王の名を持つ最強のアンデット。たかが炎ごとき……」
俺のファイアブレスを受けても、陰険骸骨は平然としていた。
どうやらこのアンデット、骸骨の見た目をしているだけで、すでに実体を持たない霊体と化したアンデットのようだ。
レイスを始め、霊体でできている死霊系の魔物には、物理的な攻撃は意味をなさないので、俺のブレスとて効果がないわけだ。
だが、お前の御託なんざどうでもいいんだよ。
――煉獄!
俺は、地獄の底で死した罪人を未来永劫焼き尽くす炎を、アンデットに向けて放った。
「我は、冥府の王……ギャアアアーーーッ!!!」
ったく、何が冥府の王だ。
たかが地獄の炎で焼けるくらいで、冥王なんて名乗ってるんじゃねえ。
ついでに煉獄の余波で、この辺り一帯にいたアンデットどもが、ギャーギャー喚きながらもだえ苦しんで、炎に焼かれていく。
地獄の炎だけあって、アンデットには非常に効果的だ。
何しろこの炎は、生者でなく、死者を焼くための炎だからな。
当然、霊体に対しても効果抜群だ。
なお霊体を相手にする場合、聖属性の魔法を使って、相手を浄化するのが一番いい方法だ。
浄化の場合は、死者に安らぎと安寧を与えることで、成仏させることができる。
だが煉獄の場合だと、地獄で罪人を焼き続ける炎なので、地獄の苦しみを延々と受けさせることができる。
聖属性とは、ある意味真逆の効果を持つ地獄の魔法だった。
……ところで、陰険骸骨アンデットを倒して気づいたが、俺が目指していた濃い魔力の気配が消えていた。
……
……
……
いや、ここに来るまでに、予感はしてたんだ。
何しろ、ここに来るまでにいたのは、魔族でなくアンデットだったからな。
上級魔族だと思って当たりをつけていた気配は、魔族でなくアンデットだったわけだ。
煉獄で簡単に焼け落ちたが、アンデットとしてはそれなりに上位の存在だったのだろう。
だがしかし、所詮はアンデット。
アンデットは肉の体を持たず、上級魔族でもない。
『ダアアアー、ヤバイヤバイヤバイ!このままだと、ボコられちまう!』
さっき陰険骸骨が何か偉そうな口上を名乗っていたが、そんなことより、
『上級魔族、さっさと出て来い!』
後書き
冥王「なに、ギガノスがやられただと?だがしょせん奴は我ら四天王の中でも最弱……ではないんだけどなー。ま、我より弱いから……フォゲェェェェーーーー」
作者「いやー、もうちょっとマシな戦いになると思って書いてたんだけど、いざ書いてみるとゴブリンをプチッと潰すレベルでやられちゃってたわー」
ゴブリン&スケルトン被害者の会「いつもいつもひどい目にばかり遭わされて……。お、俺たちをプチプチ潰すなー!」




