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191 シルバリオン対ギルド員 (シルバリオン視点)

 現在人化している俺は、槍を手にして戦っている。


 この槍、非常に高性能で、

「魔法の探求に苦節60年。そのせいでモテなかった爺の恨みを思い知れ、火球(ファイア・ボール)!」

「ワシだって、魔法の研究三昧で……クウウッ、甘酸っぱい青春を送ってみたかったのに。恨みの氷の刃(アイス・カッター)

「畜生、俺はデブじゃねえ。ただのぽっちゃりだ!嘆きの岩槍(ロック・ランス)


 何やら変な爺2人と、デブの魔法使いが放ってきた魔法を、槍の一振りで無効化させる。


「「「なんだと、ワシらの魔法を槍の一振りで無力化されただと!クッ、これが、非モテとモテの差なのか!」」」


 ……この魔法使いたち、驚くポイントがずれてないか。

 ドラゴンの俺が言うのもなんだけど、こいつらまともな人間か?


 まあ、いい。


「あんたら、いい年してるんだから黙ってろよ!」

「「「ゲホッ」」」


 老人相手に暴力に訴えるのもあれだが、一方的に魔法を撃ってくるので、黙らせるために、槍の石突で気絶させた。



 俺が使っている槍だが、次元属性の魔力を帯びていて、その力によって人間程度が放つ魔法なら簡単に無力化できる。

 というか、この槍は昔俺が姐さんに殴られた際に欠けた牙から作った物だったりする。


 オリハルコンの剣ですら弾ける鱗を持っている、この世界最高レベルのドラゴンの牙から作られた槍だ。

 当然、その性能は破格と呼んでいい。


 ドラゴンでいる時は武器なんていらないが、人間に化けているときはこの槍を愛用して使っている。

 俺は普段は空を飛んでいるものの、たまに気まぐれで人間の姿をして、人間の街に遊びに行くので、そういうときにこの槍が便利だった。

 人間のふりをしている時に、ドラゴンみたいに素手で魔物の頭を粉砕すると、さすがに正体を疑われるからな。


 なお、俺は次元魔法の無限収納(アイテムストレージ)が使えるので、普段はその中に槍を収納していた。



 それはさておき、変態爺2人とデブのおっさん魔法使いも倒した。


「実力も示したし、これぐらいでいいだろう」


 一方的にイチャモンをつけられて、ギルドの訓練場で戦う羽目になった俺。


 槍を片手に、これまでにギルドの冒険者を40人以上倒している。


 単純に身体能力が高い者、剣術を使う者、魔法を使う者、トリッキーな戦いをする者。 さっき倒した変な魔法使いたちも、その中に含まれる。

 しかし、いろいろと相手にしたけれど、元がドラゴンである俺に、人間程度がまともに戦えるはずがない。


 倒した奴らは全員、槍の石突で気絶させたので、命に別状もなかった。


「お、おのれ!嫉妬神様よ、我に力をー!」

 なんだけど、倒れていた冒険者の1人が復活して、果敢にも俺に飛び掛かってきた。


「はあっ」

 人間にしては随分回復力があるやつだ。おまけに動きが素早い。

 もっとも俺から見れば、ただの鈍足もいいところだ。

 人化することで弱体化していても、俺と人間の間には覆すことができない種族の能力差がある。

 ため息をつきながら、突っ込んできた男の腹を槍の石突で叩いておいた。


「ゲホッ、イケメン。許すまじ……嫉妬の神よ、申し訳……」

 そんなことを言って、冒険者は倒れた。



 ……なんだろう。

 嫉妬神様とか言っていたけど、もしかしてとてつもない邪教の信者じゃないだろうな?

 さすがに邪教の狂信者相手の戦いは嫌だぞ。




 とはいえ、ここまで俺が一方的に冒険者たちを倒し続けたから、ようやく、他の冒険者たちも俺の実力を理解したらしい。


「あんた、すごく強いね。見ない顔だけど、この街には最近来たのかい?」

 俺の実力が認められるとともに、ようやくまともに俺に話しかけてくれる冒険者が出てきた。



 よかった。

 あのまま、街の冒険者全滅させるまで戦わされる羽目にならなくて。

 創主様の作った世界の法則(アカシックレコード)って、たまに執念とか、妄執染みた怨念が宿ってるからな。


「最近どころか、今日来たばかりでね」

 内心ではそんなことを考えつつ、俺はそんな思いを表面に出さずに会話する。



 この後、実力を認められた俺は、なぜか親しく話しかけてくるギルド員に連れられて、ギルドの酒場で酒盛りをすることになるのだった。


 その席上で、いろいろと話がはずんだが、俺が酒をいくら飲んでも酔わないので、いつの間にか武器を使った戦いでなく、酒を飲んでの飲み比べになっていた。


 とはいえ、俺は人間の酒だと全く酔わないからな。


「アヒャヒャヒャヒャー」

「ZZZzzz」

「おそゃじー、もうひゃっぱい(親父、もう百杯)」


 酒を飲みつつづけていたら、いつの間にか飲み比べをしている連中が泥酔して、悲惨なことになっていた。

 頭の中が酒に溺れていてフラフラになっているのはまだいい方で、机に突っ伏したり、吐き出していたり、床に倒れるようにして眠っていたり。



 こんなことがあったものの、俺はギルドの酒場で有用な情報も仕入れることができた。


「ここ最近は、軍が人を集めていてな。なんでも魔族が大侵攻を企てているそうだ。それに対抗するために、この街の冒険者もかなり軍に行っちまったよ」

 とは、酒を酌み交わしていた時に仕入れた情報。


 ふむ、魔族の大侵攻ということは、そこに行けば上級魔族もいるだろう。

 小規模な侵攻ならともなく、大規模侵攻ともなれば、確実に上級魔族以上の魔族が軍を率いるだろう。

 これはいい情報を手に入れた。


「魔族は国境に集まっているって話だ」

 と、問題の場所まで酒を酌み交わしている冒険者が教えてくれた。



 よし、上級魔族の居場所も分かった。

 これで姐さんが帰ってきても、ボコられずに済む。




 もっとも、この情報をくれた冒険者も、その後の飲み比べで撃沈してしまい、今では床の上に寝転んで、派手にいびきをかいて眠っている。

 他の面々も、泥酔してひどい有様だが、そんな中俺一人だけ素面だった。


 とはいえ、おかげでいい情報を手に入れられた。


「マスター、ここは俺が金を出しておくよ」


 さんざん酒を飲んで、机や床に突っ伏している冒険者たちの死屍累々とした状況。

 まともに金を払うことができない有様だったので、情報料ついでで、俺が払っておくことにした。


「金貨15枚だが、払えるのか?まさか酒樽が空になるとは思わなかったぞ」

「これでいいだろう」

 酒場のマスターに、俺は懐から金貨を取り出す。

 もっとも、俺の懐の先は次元魔法で作り出した無限収納(アイテムストレージ)につながっていて、そこから金貨を取り出すことになる。


「驚いた。あんたいいところのボンボンなのかい?」


 金貨15枚と言えば、庶民では簡単に出せない金額だろう。

 マスターが驚くのも無理はない。

 もっとも長い時を生きているドラゴンの俺には、いろいろと蓄えがあるので、この程度の金額などあってないようなものだった。


 驚くマスターに、俺はフッ笑うだけで答えた。


後書き



 嫉妬神様?

 一体誰のことなんだー!(棒読み)

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