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186 戦い?いいえ、上級魔族探しです。 (シルバリオン視点)

 俺とイグニスとゼロの舎弟どもを動員したので、この北の大陸にいるドラゴンのほとんどが上級魔族狩りに精を出すことになった。


 本物のドラゴンはもとより、下位の竜であるワイバーンまで総出だ。


 上級魔族を狩るにはあきらかに過剰戦力で、むしろこのまま北の大陸どころか世界征服をしても有り余る戦力だったりする。

 それだけの戦力を命令一つで動かせる姐さんは、ある意味この世界の支配者だったりする。


 仮に魔王軍とやらが歯向かってきても、俺たちが総出になれば……というか、姐さん1人いれば、完膚なきまでに叩き潰して壊滅させられるだろう。

 魔王軍は数が多いだろうから、姐さん1人で戦えば取りこぼしも出るだろうが、2度と姐さんに歯向かおうなんて考えられなくなるだろう。


 もっとも姐さんも俺たちも、世界征服なんかするつもりはない。

 大体力ずくで征服できても、俺たちにそれを維持できるほどの団結力も政治力もない。

 それにそんなことをすれば、"あの御方"に俺たちが叱られてしまう。

 いや、あの御方より、その"奥方様"の方か遥かに怖いのだけど……。




 しかし、戦力的には世界征服可能でも、今回の目的は戦うことでなく上級魔族を見つけて狩ること。

 それも大量にいるわけでなく、1体狩ればいいだけだ。


 だが上級魔族は非常に珍しいので、俺たちが総出になってもいまだに見つけることができずにいた。




『ウオラシャーッ』

『ドリャー』

『そらよっと』


 なお、上級魔族が一番いるのは魔王軍なので、俺たちは飛んでいたら偶然見つけた魔王軍の砦を只今攻撃中。


 というか姐さんがズンズン歩いていくだけで、金属に魔法の効果まで施された砦が、あっさりペチャンコになる。

 イグニスが尻尾を振るえば、砦の周りにある城壁が根元から吹き飛んでしまう。

 俺も何もしないわけにはいかないので、とりあえずその辺にいる上級魔族でない下級魔族を踏みつぶしておいた。


『てか、姐さん。砦を踏み潰したら、中にいる上級魔族まで一緒に潰すかもしれませんよ』

『そういえばそうね、次からは気を付けるわ』


 女性らしくコロコロと……なんてことはなく、ドラゴンらしくギャオギャオと笑う姐さん。


『ガブッ、モグモグ。ペッ、不味いっ』

 そしてイグニスは、転がっていた魔族の死体を口に入れて、すぐに吐き出していた。

 別に腹が減ってるわけじゃないだろう。ただの味見だ。


 吐き捨てた物は、その後炎魔法で蒸発させてるし。




 ――ガサゴソ、ドカドカ、バキッ、グシャッ


『いないわね』

 その後は、ペチャンコにした砦の残骸を俺たち3体で漁ってみるけれど、残念ながら上級魔族はでてこない。


『こういうのって、探しているときに限って見つからないんだよな』

『そうだよなー。はあっ、俺があの時上級魔族を溶岩に捨てなきゃよかったんだけど……』

 チマチマと砦の残骸を漁る作業は、なんだか虚しい。

 これって、ドラゴンがやる作業じゃないよな。


『イグニス、終わったことは仕方ないわ。いつまでもその話題を振らないで』

 横暴で暴力的な姐さんだけど、姐さんが来る前に上級魔族を溶岩に放り込んでしまったイグニスを責めることはなかった。


 ただ砦の発掘作業をしながら、たまに生き残っている魔族が喚き声を上げながら俺たちに向かって魔法を放ってくる。

 と言ってもダメージにならないし、俺たちの体の中で一番弱い部分である眼球を狙われても、全く痛くも痒くもない。

 正直なんとも思わないので、そのまま放置するだけだ。


 魔族たちは、俺たちが興味ないと分かったら、その途端に悲鳴を上げながら逃げ出していくのだった。





 この後、潰した砦の瓦礫をひっくり返して調べても、上級魔族は出てこなかった。

『この砦にはいないようですね』

『じゃあ、次の砦に行くか。適当に飛んでいたら見つかるだろう』


 さっさと上級魔族を見つけて、俺とイグニスは姐さんから解放されたい。


 というわけで、俺たちは3体揃って空に飛びあがる。


『なんかいるわね』

 飛んでいたら姐さんが地上にいるモンスターの軍団を見つけたので、ダメもとでそこに上級魔族がいないかと降下していった。


 サイクロプスや、その上位版と言っていいギガンテスなどがいるモンスターの群れだった。

 人間ならばこの軍勢を前にすれば震え上がり、下手をすれば城塞都市でも攻め滅ぼされかねない戦力だ。


 まあ、あくまでも人間基準の話だ。



『上級魔族はいないかしらねー』

 姐さんは咆哮を上げるでも、声を荒げるでもなく、人間の女性が服屋で好みの服がないかを探し回るように、モンスターを次々に殺害して回った。


 と言ってもサイクロプスもギガンテスも上級魔族ではないので、こいつらは後ろ足でプチリと潰してしまう。

 たまにサイクロプスの肩に何かが乗っかっていて、もしかするとそこに上級魔族がいるかもしれない。

 なので、その場合は踏みつぶさず、サイクロプスの頭を前足の指で器用につまんで、プチッと取る。


『いないなー』

 俺とイグニスも、姐さんに続いて降下。

 姐さんと同じく前足を使ってサイクロプスたちの頭をねじり取り、肩に乗っかっている魔族が上級魔族じゃないか確認していく。


 なお俺らの存在に怖気づいて逃げ出す奴らがいるけれど、イグニスが炎魔法を使って周辺に火炎の大絶壁を作り出したので、包囲は完璧だ。

 あの火炎の大絶壁は高さが200メートルあるし、サイクロプス程度が飛び込んだら、その瞬間に蒸発して体ごと消え去ってしまう。


 そしてここでも、肩に乗っている魔族が魔法を使って攻撃してきた。

 魔族にとっては攻撃しているつもりだろうが、俺たちにとっては空気の中に埃が多めに舞っている程度の感覚なので、正直どうでもいい。


『ブエクション!』

 なんて思っていたら、イグニスが盛大なくしゃみをして、サイクロプスたちの軍団を吹き飛ばしていた。

 ついでに火炎の大絶壁まで、クシャミの風で鎮火だ。


『あ、ヤベエッ』

 そしてクシャミの1発でサイクロプス軍団は空中へ舞い上がり、当然肩に乗っかっていた魔物やモンスターたちも吹き飛ばされていく。

 それと地面の土も大量に吹き飛ばされて、跡地にクレーターが出来上がっていた。


『……』

 ただ運の悪いことに、土を吹き飛ばした先に姐さんがいた。


 当然姐さんは土まみれ……


『グオララアアーーーー!!!』

『ギ、ギブ、ギブギブ、ギャアアアーーー』

 姐さんの前足に首を締めあげられ、イグニスが涙目で泣き叫ぶのだった。


 もちろん、そんなことで許してくれる姐さんではなかった。


後書き



 やってることが、どこかの兄弟たちがゴブリン相手にしている事とそっくり。

 というか、あの兄弟たちよりもっと簡単に魔王軍とかいう連中を蹂躙してるんだけど~

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