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181 マザーの舎弟 (マザー視点)

 平原を超え、山を越え、海を越えて私は飛んでいく。


 風がゴウゴウと音をたてているけれど、私はこの星のはるか上空、ジェット気流が流れる高度を飛んでいるところ。


 この風に乗っていけば、この星を早く飛ぶことができるのよね。

 いつもより高めに飛んでいるから、遠くを見ればこの星が丸くカーブを描いているのが、はっきりと見て取れるわ。


 ここからの景色だと、空が真っ青に染まっていて吸い込まれてしまいそう。

 もう少し高度を上げれば、この青がなくなって、昼間でも夜のように暗い空を見て取ることもできるわ。


 ――ゴオオォォォォッッッ


 でも、じれったいわね。


 家では上級魔族の肉を楽しみにしているレギュちゃんたちがいるのに、全力で飛べないなんて。

 私、本気で飛べばもっと早く飛べるんだけど、それをしたらダメだって昔"パパ"から言われたの。


 パパが言うには、

「お前が全力で飛んだら、海で津波が起きたり、森林の木が根こそぎ吹き飛んで更地になったり、星の大気が宇宙空間にまで出ていくから絶対にダメだぞ」

 ってことなの。


 実際、私が本気で飛んだときには、ちょっと大変なことになっちゃって、その後"ママ"にこっぴどく叱られちゃった。


「ハハハ、お前は見た目はでかいくせに子供だなー」

 パパはそう言って笑っていたけれど、ママは怖かったわ。


「次にやったら、ドラゴンステーキにしましようか?」

 ママ、全然目が笑ってないんだもの。

 マジだったわ。


 私、ドラゴン連中や魔王とかいうレベルの奴ら相手に怖いと思ったことはないけれど、ママは絶対に怒らせちゃいけないわ。

 だって、あの人マジで私を食べる目をしてたんだから。


 うっ、今思い出しただけでも、思わず寒気が。


 それにあの時のパパは、

「ドラゴンステーキ。いいなー、竜神クラスのドラゴンステーキっておいしそう」

 なんて言って、よだれを垂らしていた。



 ……私ご飯じゃないんだけど、パパ、ママ。

 あの時のママは全く冗談を言ってなかったけれど、パパもかなりマジだったわ。


「はいはい、肉を食べてないで氷砂糖でも舐めてなさい」

「ワッホーイ、砂糖じゃ砂糖様じゃー」

 でもパパが暴走する前に、ママがパパを砂糖で操縦していた。


 ママって、本当にパパを簡単に操っているのよね。

 凄い人だわ。






 そうやって昔のことを思い出していたら、眼下に目的の"大陸"を見つけた。

 ジェット気流が流れている高度から下げて、私は地上目指して降下していった。


 ――GYAOOOっ!


 と、大陸を目指していたら、その途中で銀色の鱗のドラゴンを見つけたわ。

 大きさは50メートルちょっとあって、私の体の半分くらいの大きさね。


 この星のドラゴンの中では、私を除けば最大級の大きさをしている奴よ。


『ゲエッ、姐さん!』

 銀色ドラゴンも私のことに気づいたようで、気づいた瞬間そんな声を出していた。


 いやねえ、"舎弟"のくせして、私の前でそんな態度とらないでほしいわ。


『あんたちょうどいいところにいたわね。上級魔族を探しているんだけど、どこにいるか知らない?』

『じょ、上級魔族って、なんでそんな見つけにくいのを探してるんですか?』

『決まってるじゃない、子供からおねだりされたからよ』

『へっ!?』


 間抜け面になる銀色ドラゴン。


『子供のために、早く持って帰らないといけないの』

『いやいや、待ってください姐さん。子供って、どこかで拾ってきたんですか?それとも、どこかのドラゴンを勢いでつい()っちゃって、その子供を引き取ったとか……』

『はあっ、あんたバカ言ってるんじゃないわよ。子供っていうのは、当然私の子供のこと。私とダーリンとの間に作った子供よ!』

『グベボラハーッ』

 ふざけたことを抜かしているから、空中でちょっと尻尾アタックをお見舞いしてあげたわ。

 そうしたら銀色ドラゴンの奴が情けない声を出して、地面の方へ真っ逆さまに落ちていく。


『ちょっと、ただのテレフォンアタックでそんな情けない声出すなんて、あんたドラゴンなの、男なの!ひ弱すぎるわよ!』

『グ、クヘェッ。姐さんは自分の強さを自覚してくださいよ。姐さんテレフォンアタックは、地面に100メートル単位で亀裂ができるほど強力なんですよ』

『何言ってるの!パパなら小指の先でそれ以上のことができるじゃない!』

『いや、あのお方は姐さん以上に滅茶苦茶な存在だから、比較したらダメな対象ですよ』


 まったく、男のドラゴンのくせして、こいつってばブチブチブチブチ言い訳ばかりして、女々しい奴ね。


『まあいいわ。それよりあんた、暇なら上級魔族探しに付き合いなさい』

『どうせ暇じゃなくても、付き合わないといけないんでしょう』

『当り前よ』

『はあっ、俺なんでこんなところ飛んでたんだろう。こんな厄介な(ドラゴン)に見つかるなんて、これから数日俺の運勢は最悪だな……』

『そうと決まったらこんなところでチンタラ飛んでないで、獲物を探しにしくわよ。ついてきなさい』

『ラ、ラジャー』


 私は銀色ドラゴンの舎弟を引きつれて、愛する子供たちのために上級魔族を探すことにした。


 なーに、この私に舎弟までいるんだから、上級魔族程度すぐに見つかるわよ。


『そうだわ。そういえばあんたの下にも舎弟どもがいるんでしょう。せっかくだから、そいつらも総動員して、上級魔族を探し出すわよ』

『と、当然拒否権は……』


 ――ギロリッ


『あ、はい。分かっています。今すぐ俺の舎弟どもを呼び集めて、上級魔族狩りをさせます』

『結構、じゃあさっさと行動に移りなさい』

『イエッサー』


 これは幸先がよかったわ。

 銀色ドラゴンの舎弟を見つけたから、思ったより早く上級魔族を狩ることができそうね。


 私たちドラゴンが総出になれば、たかが上級魔族なんてすぐに見つかるでしょう。


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