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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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179 番外編、高機動デブ (シリウス視点)

「ヒャッホー、当たったー」

「シリウス、僕たちは友達だよな。だから僕にもチップを半分受け取る権利がある」

「アハハハー、分かってるって分かってるってばミッチー。ほらほら、そんなにがっつかなくても、チップくらいあげるって」

「ああ、君とは永遠の友達だ。スバル、僕は君のためならどこまでだってついていく」


 永遠の友情宣言されて、僕はアメリカ人のデブ友ミッチーに抱き疲れた。

 グヘッ、さすがにデブの巨体に抱き疲れると、汗苦しくてたまらない。

 しかもおっさんなんだよ。


 まあ、僕もデブ度合いではミッチーに負けてないんだけどね。

 アッハッハッー。



 あ、どうも。

 この世界での名前は肥田木昴改め、真の名はシリウス・アークトゥルスなのであーる。そしてレギュラスの師匠でもあーる。

 ちなみに語尾がおかしいのは、何となくノリで言ってみただけだから、気にしなくていいよ。



 さて、現在僕はミッチーと共に"地球"のラスベガスで遊んでいる最中だ。

 会員制の超高級カジノのルーレットにやってきたけれど、今回はチップ1枚が1万ドルのルーレットをして遊んでいるよ。


 で、冒頭のセリフを聞けばわかると思うけど、ルーレットが当たったよ。

 シングルナンバーを当ててなんと元金の35倍に!


 ムフフ、最初は10枚から始めたチップだけど、当たりを積み重ねて今ではなんと100倍に化けて1000枚に。

 えーっと、1ドル100円で換算すれば、チップ1枚が100万円になり、それが1000枚だから、10億円だね。

 ワッホーイ、僕お金持ちー。


 まあ、僕の総資産は100億超えているらしいから、10億なんて僕から見ればはした金……なんてことはないね。


「エヘヘー、超お金持ちだー。これで砂糖食べ放題、飴玉食べ放題。フフフッ、ヤッタネ体脂肪増強待ったなしっ!」

「せっかくだから、今日はホテルの最上階で派手にパーティーをしようぜ」

「そうだね、そうしよう。甘々のケーキに、油でどろどろのステーキパーティーだー」

「うおおおっ、心の友よー」


 もう、ミッチーったら僕のお金につられちゃって。

 とことん友情に熱いデブ友だね。


 フフッ、僕知ってるいるよ。お金の魔力があれば、世の中の多くのことが思い通り行くってことを。


「そうだ、せっかくだからこれお姉さんにプレゼント」

「キャー、ありがとう!」


 フフフ、カジノのバニーちゃんの胸の谷間に、チップを1枚入れてあげたよ。

 その瞬間、巨乳で金髪のバニーちゃんから抱きしめられる僕。

 デブの体とは違う、非常にふくよかな胸の弾力を感じれる。


 ……と思ったのだけど、どうしよう、弾力がミッチーの体脂肪と全く変わらない。

 所詮どっちも脂肪の塊ということか。

 ……なんなんだ、このとてつもない残念感は。


 まっ、弾力よりも誰に抱きつかれたかの方が大事だよね。



 本当、お金の力って素晴らしい。

 僕って若い頃は違うけれど、中年以降はいわゆるデブ体型になっちゃってね。

 おかげで街を歩けば、女性から白い目で見られるけれど、そんな僕でもお金の力さえあれば、こうやって美人のバニーちゃんを一発で落とすことができるんだ。


 ウフフッ、僕お砂糖様が大好きだけど、お金のこともとっても大好きだよ。


 この調子で、もっとカジノで掛けてもいいけれど、さすがにそれはダメだよね。



「……すみませんが、これ以上は勘弁願います」

 なんだかカジノの超お偉いさんらしき人が出てきて、物凄く丁寧に、だけどはっきりと出て行けと言われちゃった。


「あーあ、楽しかったカジノもこれでお終いか。バニーのお姉さん、よかったら今日は僕が泊まっているホテルに一緒においで。そこでパーティーをするから」

「もちろん、行くわー」


 カジノは追い出されたけど、バニーのお姉さんはお持ち帰りできました。


 そしてその日は、僕がラスベガスでいつも泊まっているホテルの、インペリアルロイアルナントカカントカって部屋で楽しくパーティーをしたよ。

 名前が長すぎて覚えられないけれど、この部屋って1泊辺り1万ドルちょっとするんだって。


 まあ、僕の資産からすれば無理なく泊まれる部屋だし、今回はものすごく儲けたからね。


 カジノって、だーい好き。


 まあ、そのせいで昔マカオのカジノでやりすぎちゃって、今ではブラック指定されて、出入り禁止くらったりしてるけど。



 さーて、次はどこのカジノに稼ぎに行こうかなー。

 ラスベガスもいいけれど、もっと世界中のカジノから、ボッタクらないとねー。

 アッハッハッー。




 そして翌日。

 楽しいラスベガスのカジノツアーを1週間に渡って続けてきた僕とミッチー。

 あと、お金につられてバニーのお姉さんもいまだに僕の腕に抱きついてきている。


「ねえ、ダーリン。このまま私も日本に連れて行ってー」

「いやいや、さすがにそれはダメだよ。僕これでも日本に奥さんだっているんだし」

「まあ、残念。やっぱりこんなにいい旦那様だと、女性が見逃してくれないのね」


 そうだよねー。

 ほら、僕ってイケメンだから仕方ないよね。


 ……過去に2度、ビンタやグーパン(指にダイヤモンドの指輪付き)をくらって妻に別れられてるけれど、それでも3回目の結婚も難なくできている僕はイケメンなのだ。


 少なくとも、僕の懐に仕舞われている金ぴかマネーの力をもってすれば、僕の外的な要因を覆して、女性にもてることができるのだ。


 ハッハッハッー。

 この世は砂糖と金でできているー。



 ところで、ホテルを後にするためにカウンターに行った時のことだけど、なぜかホテルの入り口の向こうで、黒い服を着た強面の人たちがいた。

 全員が黒いサングラスをかけていて、30人ぐらいずらりと並んでいる。



 ……僕、知ってるよ。

 ラスベガスで高額の当たりを出した人って、稼いだチップをカジノで用意されている寄付の箱に全部突っ込むか、でなければ一目散にラスベガスから逃げ出さないといけないって。

 そうしないと、今ホテルの外にいるマフィアに頭をズドンと撃ち抜かれて、お金どころか命までなくなっちゃうって。


 ラスベガスって見た目は派手だけど、カジノとマフィアが仲良くつるんでいる街だからねー。


 アハハー、どうしようかなー。

 僕、お金は砂糖の次に大好きだけど、命も大事だからー。


「おーい、スバル。早くおいでよー」

 なんて考えてたら、ホテルの入り口の向こうに、赤い車体のフェラーリに乗ったミッチーが参上。


 フフフッ、ナイスタイミングだミッチー。


 僕は体重120キロ超えの肥満体型からは想像もできない速度でダッシュ。

 僕の腕に絡みついていたバニーちゃんが驚いているけれど、今はそれに構っている暇はない。

 ホテルのロビーを突っ切り、それから車道にいるミッチーのフェラーリまで一気に走る。

 バニーちゃんは置いてきぼりだけど、仕方ないね。


 ――パンパン、パパンッ


 だって、変な音が遠くからしてくるんだもの。



「ガッテムッ!」

「フリーズ!」

「キル!」


 強面の黒服さんたちが色々叫んでいるけど、あんたら叫ぶより先に銃を撃ってくるのやめてくれないかな。

 僕の動体視力と、身体能力がなかったら、銃弾が冗談抜きで額を貫いてるんだけど。


 しかしこれでも僕、見た目はデブでも身体能力は高いんだよ。

「僕はただのデブとは違うんだよ、デブとは。僕は高機動デブなのさ!」


 ま、そんなことはいいや。

 銃弾が十数発飛んできたけれど、僕は無傷でそれを回避。そのままフェラーリの助手席にダイブだ。

 本当は助手席の空いた窓から車内へ入りたかったけれど、僕の体型ってデブだから、アクションスターみたいなことはできない。

 そんなことしたら、腹が窓につっかえて、とんでもないマヌケになっちゃう。


 ふうっ、若い頃は痩せてたのに、若い頃は痩せていたのに、若い頃は……


(はいはい、だったら砂糖をとるのをやめましょう)

(やだ!)

 頭の中で妄想の妖精さんの声が聞こえたけれど、それは無視だ。

 僕から砂糖を奪えば、僕が死んでしまうじゃないか!


 ま、妄想の妖精さんの相手なんてしている余裕はあるけれど、今は一応シリアスシーンなので頑張ろう。


(それがシリアスに直面している人のセリフですか?)

(いちいち突っ込んでくるなよ、スピカ!)


 たく、この小姑みたいにうるさい僕のサブ人格には困ったものだね。

 大昔に不老不死の薬を飲んだら、なぜかこんな人格ができちゃったんだよ。



 それはともかくとして、

「へっ、銃声?」

「ミッチー、今すぐ全力で逃げるよ。ホラ、呆けてないでアクセル全開」

「うわっ、ちょっ、ウワアアアアーーーッ」


 ふうっ、ミッチーがデブすぎるから、その足を無理やり押し込んでアクセル全開にさせる。

 ただの車と違って、僕たちが乗っているのはフェラリー(レンタル)だ。

 アクセルを全開にすれば、フェラーリーは僕たちの意思に答えてくれて急発進した。


「うわわっ、壁にぶつかる!」

「なんで助手席の僕がハンドルまで操作しないといけないの?」


 運転席にはミッチーがいるのに、パニックで動けないミッチーに代わって、助手席の僕がハンドルを切る。


 ――プー、ププッ!


 っといけない、ハンドルを切りすぎて反対車線まで出ちまった。

 急いでハンドルを反対側にひねろう。


 あっ、反対車線に飛び出した拍子に、対向車線の車がハンドルを変な方向に切っちゃった。

 そのまま対向車線の車が、強面の黒服さんたちがいる場所に突っ込んでいく。



「ナムナム、他人の命を大事にしようとしないから、こうなるんだよ」

「ひええぇぇ、撃たれた、撃たれたー!」

 一方、ミッチーは撃たれたショックで、そんなことを叫びづけている。


 どうでもいいけれど、叫びながら目玉が出てきそうなほど目を開けて、口まで大全開に開けているミッチーの顔は、コメディー番組に出れそうな面白い顔になってる。


 ――パパ、パパンッ


 なんて和んでいたいけど、僕たちの乗っているフェラーリの後ろから、車が追いかけてきた。

 その車から飛んでくるのは鉄砲玉だ。


「ありゃ、まだいたのか。しつこい連中だね」

「ひいいぃぃぃ。尻が、尻が痛いー」

「もしかして銃弾が尻にめり込んだ?」

「イヤダー、死にたくないー!」

「大丈夫だよ、ケツを撃たれたぐらいなら、死なないって。少なくとも、即死はしないから」

「NOOooooーーー!」


 ミッチーてばやっぱりアメリカ人だね。

 リアクションがいちいち大きすぎるって。


 ――バリッン


「おっといけない。和んでないでさっさと逃げないと」

 フェラーリの後部窓ガラスが銃弾で割れてしまった。


 ほら急げ、やれ急げ。

 僕はミッチーにアクセルを全開で踏ませたまま、助手席からハンドルを操作し続けて、フェラーリでラスベガスの街を疾走していった。


 この後、僕たちはラスベガスの街中でカーチェイスをして、さらに街から飛び出した後は、街の周囲に広がる砂漠地帯をひたすら走っていく事になった。


 黒服マフィアどもは諦めが悪いようだけど、向こうは所詮ただの車。こっちはフェラーリ。


 ハッハッハッ、車の性能が違うんだよ。

 アッハッハッハッハッー。


 てなわけで、砂漠に出てからはフェラーリの速度に追いつけず、僕たちは黒服(マフィア)の車からあっさり逃げ切ることができた。



「あ、ガス欠だ。燃料タンクに弾が穴が当ったのかな?」

「ゲエッ、ここ砂漠のど真ん中だぞ。こんなところで出血死なんてイヤダー!」


 ミッチー、死因は尻を撃たれての出血死。南無っ。


「いやいや、安心していいよ。僕無免許だけど、モルモットの解剖とか縫合手術はよくしているから、お尻の弾を取り出して縫うくらいできるから」

「それ、全然大丈夫じゃない!」

「このまま尻からの出血で死にたくないなら、全てを僕に任せなさい」


「なんて嫌な二択だ……」

 尻からの出血が多いのか、ミッチーが顔面を真っ青にしているけれど、まあ選択肢も何もないよね。


「ほら、ミッチー。うつ伏せになる」

「……」

「あ、麻酔がないから、痛いのは我慢してね」

「Noー!」

 ミッチーはげんなりとしているけれど、尻が痛いせいか、その声にはあまり元気がなかった。


 でも抜きで弾丸が体内に残ったままだと、冗談抜きで鉛中毒を起こす危険がある。

 というわけで、僕はまずはミッチーの尻に埋まっている銃弾を摘出する手術からしていく事にした。


 でも安心して。

 僕はこの世界では医療免許を持ってないけれど、これでも別の世界では魔王とかもっと強いやつとか、いろいろ解剖したりしてるから全然問題ないよ。

 でもそういう奴らに比べれば、ただのデブ人間のミッチーってそこまで耐久力がないよね。


 ……ま、痛いのは僕じゃないからどうにかなるか。


「うぎゃああああっ!」

 砂漠のど真ん中でミッチーの絶叫が木霊するけれど、僕はミッチーの尻に埋まった銃弾をと器具突っ込みながらグイグイと引っ張り出していった。


 いやー、解剖用の道具を(レンタルだけど)車に備え付けててよかったー。

 こういう道具がいつ何時役に立つか分からないからねー。


 アハハー。



(ああ、シリウス(マスター)に係ると、どうしてみんな不幸になっていくんでしょう)

(ヤダなー、スビカ何言ってるの?僕のせいで不幸になる人なんているわけないじゃない)

(鏡を見ていってください。マスターって表面はアホですが、中身はとてつもなく邪悪ですからね)


 ふうっ、僕は僕のサブ人格が何を言ってるのか理解できないよ。



 僕はこれでも異世界では大賢者とか、勇者とか、勇者の師匠とか、そういう善人っぽい呼ばれ方を何度もしてるのに。


(そして魔皇帝に、魔王の創造者、邪神大帝、破滅の大王。それから深淵の最奥の住人なんて呼ばれ方もありましたね)

(問題ないでしょう、魔王には一度もなったことないから)

(魔王より、もっとヤバいものが多いでしょう!)



 えっ、何それ?

 僕全然覚えてないやー。


 それよりスピカと心の中でだべっている間に、ミッチーの尻の弾丸を摘出して傷口も縫い終わった。

 あとは近くの街なりガソリンスタンドまでいかないと、リアルで死ぬなー。



 ここはアメリカの砂漠のど真ん中。

 日本みたいに、ちょっと歩けば集落にたどり着けるわけじゃないからね。


 幸いマフィアの追手はもういないようだ。

 こんなところで見つかったら、蜂の巣にされて地面に埋められてお終いだよ。


 アメリカって、スリリングな国だねー。


あとがき



 愉快な師匠シリウスさんに関しては、拙作『今日も異世界チートしてますが、それが何か?』で主人公をしていたりします。


URL:

http://ncode.syosetu.com/n0557dd/



 本作のシリウスとは同一人物なので、性格はアホに見えて実は……。

 未完ですが、一応物語的には一つの区切りまで書いています。


 なお、レオンという同姓同名キャラがいますが、これは単に名前が同じだけです。

(そう、決して名前考えるのが面倒くさいからって、使いまわしたなんてことがあるはずが……ある!)





・修正について(2016/12/4)

 カジノの当たりの倍率は最大でも35倍と教えていただきました。

 当たり一つで100倍になることはないので、おかしくなっていた箇所を修正しました。


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