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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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178 巨乳神像

「おかえりなさいませ、主様」

 第2拠点へと戻ってきた僕たちを出迎えてくれたのは、拠点の管理人であるドナンだ。


「しかし主様、これほどの数のアンデットアントを連れて戻られるとは……」

「数が多すぎたかな?」

「いいえ、そのようなことはありません。これだけいれば、拡張工事もはかどることでしょう」

「なら、よかった」


 作ったのはいいけれど、300体ものアンデットアントをいきなり連れてくれば、さすがに拠点内に入りきらない可能性がある。

 今更だけど、そうなったら大変だったよね。


 主にマザーに見つかったら、拠点ごと破壊される可能性があるという意味で。



「しかしわずかな時間でこれほどのアンデットを作られるとは、主様のお力に心より感服いたします」

「あっ、そう」

 何やら恭しくしているドナンだけど、300体のアンデットを作るなんて、それほど大したことじゃないのに。

 それに今回は僕1人でなく、ユウと2人で作ったようなものだ。


 アンデットを作る作業は、ユウもすっかり手慣れたもので、今では簡単に量産できるほどだ。



 よしよし、この調子でユウの中にある元日本人の倫理観が削れていって、優秀な労働者(アンデット)を生産してくれるようになるといいな。

 クックックッ。


「おお、主様のお顔に素晴らしい笑みが」

「なんと嬉しそうな笑みでしょう」

「いや、それ絶対にダメな笑いだから。兄さん、背筋に悪寒が走るんですけど!」


 ドナンとシャドウが嬉々としているけれど、なぜかユウだけ両腕を寒そうにさすっていた。



「しかしワシでは1日に10体のアンデットを作るのが限界だというのに、やはり主様は力の次元が異なりますな」

「ドナン殿、主様も凄いですが、実はユウ様も……」

 そこでドナンに、シャドウが本日あった出来事を話していく。

 主に、アンデットを大量生産したことだ。


「ユウ様、いえ、偉大なる死の副王様」

 そこでドナンが土下座して、ユウを崇め始める。


「だから僕は死の副王じゃないから。そういうのは、全部兄さん1人でやってくれたらいいから」

「いいえ、偉大なる死の副王様。ワシはあなた様の全身からあふれ出る闇の波動に、全身が振るえる思いで……」


「おーい、お前らいつまでも入り口で突っ立ってないで早く中に入るぞー」


 なんだかドナンの奴が長ったらしい口上を述べようとしてたけど、そんなのいちいち相手しないで、僕はさっさと拠点の中に入ることにした。


「待ってください、兄さん」

「お待ちくだされ、我が主、そして副王様」

「だから、副王じゃないって!」


 なんだか、随分と騒がしい奴らだね。

 まあ、適当に仲良くしているようだからいいけれど。







 そうして拠点の中に入って、僕たちは玉座の間へ向かった。


 というかさ、本当にこの部屋名前を玉座の間で固定していいのかな?

 ドナンたちは僕のことを、勝手に死の王扱いしているけれど、別に僕はそんな役職に就くつもりはないんだけど。

 むしろ、アンデットを作る能力ならユウにもあるわけで、ユウにパスしてもいい気がする。


 ま、この件で今のところクドクド言う気はないけれど。




 そして僕たちは玉座の間へとたどり着いた。


「偉大なる乳神様の神像であられる。皆の者ひれ伏すのじゃー」

「ハハーッ、偉大なる巨大な乳様ーっ」

「マザーこそ、我らが神。乳なる母っ!」


「……っ!」


 玉座の間にたどり着いた早々、ミカちゃんがライト・ブレスで自分の背後に後光を浮かべながら、何かほざいていた。

 まるでその姿は神か天使を思わせる荘厳さ。

 実際、ミカちゃんは変態本能を封じていれば、その顔立ちは天使と表現してもいい愛らしさだ。まあ、中身はアレなんだけど……。


 そんなミカちゃんは神像と呼ばれる物の前で大地にひれ伏し、さらにその後ろで、拠点に残っていたシャドウ2体が続く。


「オッパイ、オッパイ!」

 あと、レオンもそんなことを叫んでいた。



 ナニコレ、僕がいない間に一体何が起こってるの!?


 どうしよう、どうしよう、どうしたらいいの?

 どうしよう、どうしよう、とりあえず殴るか。


 ――ドガンッ


「ヒデブシバラハァー!」

 今ここで何が起きていることが何か、僕には理解できなかった。

 ただ、ひとつだけ分かったことがある。

 ミカちゃんをぶん殴る必要があるということだ。



「ヒエエェェッ、教祖様がお倒れになられた!」

「わ、我が主よ、いきなり教祖様にこのような仕打ちをされるとは、どうしてですか!」

 ミカちゃんを殴って床にめり込ませた後、シャドウどもが喚いてきた。


「あ、ヤバいっ」

 あと、レオンが尻尾をぺたりと地面につけて、玉座の間からこそこそ逃げ出していく。


「お前ら、一体ここで何をしていた。あとレオン、お前も逃げるな!」

「え、ええっ!兄さん見逃してー」


 ――ギロリッ

 ちょっと睨んでやったら、逃げようとしていたレオンはトボトボと僕の方へ戻ってくる。




「さて、改めて尋ねるけど、君らはここで何をしていたのかな。特に元凶のミカちゃん、答えてくれるよね?」

「俺は気絶しているぞー」

「思いっきり生きてるじゃない」

「ちょっと待てレギュレギュ、今の一撃って気絶を通り越して、殺すつもりだったのか!」


 今回は力の加減をせずに殴ったんだけど、気絶すらしなかったとは。

 あまりにも殴りすぎたせいで、ミカちゃんの殴られ耐性が、以前に増して上がっているのかもしれない。

 次から、もっと本気で殴る必要があるな。


 それはともかくとして、本題だ。

「ミカちゃん、答えてくれるよね?」

「イヤダー、お前みたいな(オス)が3歳児で止まってる奴に言うことなんてあるもんかー。……あ、ちょっと待った!しゃべる、しゃべるからやめて。それ以上強く殴られたら、俺の頭が凹んじゃう。だからやめてくれー!」

 両手をばたつかせて、必死で抵抗しているミカちゃん。


「じゃあ、話してもらおうか。殴るのは、その後でってことで」

「イヤじゃー、喋る喋らないに関わらず、殴る気満々じゃねえかー!」

「当たり前でしょう」

「横暴すぎるー」

 ミカちゃん相手だから、殴るか殴らないかでなく、殴るか、もっと強く殴るかしか選択肢がないと思うんだ。

 こんな状況になっているとね。



 さて、今回の出来事だけど、ミカちゃんが劣化黒曜石の塊をノミで掘っていって、巨乳神像と呼ばれる物を作り上げたそうだ。

 その神像を、只今玉座の間に安置中。

 というかその像は、まんまフレイアの像だった。


 そしてミカちゃんは、あろうことにもその神像を神格化して、巨大なオッパイの素晴らしさを、この場にいたシャドウやレオンたちに語り聞かせていたのだという。

 しかもその語り方は、まるで神に使える使徒のごときに語りようだとかなんだとか……。


(あ、頭痛い……)


 その後ミカちゃんは巨乳の素晴らしさについて滔々と流れるように語りだし、それを聞いていたシャドウは「さすがは教祖様」と叫び、レオンは尻尾を嬉しそうにフリフリしていた。


 そして最後に巨乳神像に向かってひれ伏し、さらに五体投地まで仕出かした。

 そこに、ちょうど僕たちが帰ってきたというわけだ。



「おっさん、あんた兄弟だけに飽き足らず、見た目はアレ(ホラー)でも、生まれたばかりのシャドウにまで変態教育してるんじゃねえよ!」

「ウゲラボシーッ」

 とりあえずミカちゃんを撃沈しておく。


「クカカカカッ、脂肪乳を崇拝する邪教徒にはお似合いの神罰じゃ」

「ドナンは黙ってようか」

「はっ、はいいぃぃっ」

 ドナンの奴もミカちゃんと同レベルなところがあるから、威圧して黙らせておく。


「ヒエエエッ、教祖様が死んでしまわれた。我らは一体どうすれば」

「お、お許しを我が主ーっ」

「に、兄さん助けてー」

 それからシャドウ2体とレオンは、悲鳴交じりにそんなこと言っていた。


「いいかい、君たちはミカちゃんに毒されないように。いいね、僕との約束だよ」

 僕はそんな3人に、そう言って約束させておく。


 本当はこの3人でなく、ミカちゃんが大人しくなればすべて解決するのだけど、あのオッサンって僕に半殺しにされても折れないタフな精神してるから、これからも大人しくするはずがないからね。


「はあっ、しかしどうしてミカちゃんって、こんなにどうしようもないんだ。もう僕、こんなのと兄弟なんて嫌すぎる」

「兄さん、諦めましょう」

 天井を見上げてあきれる僕。そんな僕は、ユウに慰められるのだった。



 なお、ミカちゃんを床に沈めたせいで、またしても劣化黒曜石の床に罅ができていた。

『ああっ、せっかくドラドとリズで直したのに、レギュ兄ヒドイ!』

「ゴメン、ちゃんと直しておくから」

 玉座の間に入ってきたドラドに怒られてしまい、僕は割れた劣化黒曜石の床を修復しておく。


 前回罅を入れた所はリズたちが修復してくれたのに、早くもこれだよ。


 ううっ、ミカちゃんと関わっていると本当にろくなことにならない。



「クケケッ、幼気な遊女の俺様を殴るから、天罰が当たったんだ。これも、きっと乳神フレイア様の加護に違いない」


 早くも意識を取り戻して復活しているミカちゃん。

 グヌヌッ、殴り飛ばしたい。床に罅ができるから、ここではできないけれど……。



 そして、その後フレイアも玉座の間へやってきたけれど、

「……」

 フレイアは玉座の間に新たに作られたフレイアそっくりの像の前へ行くと、黙って像を眺めていた。


「いいだろうフレイア。とっても素晴らしい乳だろう。ただ本物のフレイアたんと違って、硬いのが残念だけど」

「ミカちゃん、この像の乳ですが私のより大きくないですか?」

「ウヘヘヘッ、大きい方が当然いいだろう」

 フレイアと像の作者であるミカちゃんの間で、そんなやり取りがされる。


「……ムカつきますわ。私より大きいなんて、もげてしまえっ」

 フレイアは何もしなかった。

 ただ物凄く低い声を出し、鬼気迫る迫力があった。


 それはあのミカちゃんですら触れてはいけないと本能で悟るほど、フレイアの全身からただならぬオーラがこぼれだしている。


「ヒエエエッ、マザーがお怒り……モゴッ」

「馬鹿野郎、フレイアたんに聞こえるところで、そんなこと言ってるんじゃねえっ!」

 シャドウの1体が、今のフレイアの姿に恐れを抱いているけれど、その口をミカちゃんが慌てて塞ぐ。


 これ以上フレイアを怒らせると危険だと分かっているのだろう。

 実際、ミカちゃんってマジ切れしたフレイアのとばっちりで、太陽魔法で殺されかけたことがあるし。


 なお、シャドウたちはフレイアの魔力を元にして生まれたので、彼らにとってフレイアはマザーになるわけだった。




 幸いこの日はこれ以上の事件は起きなかった。


 ただ、玉座の間に置かれたこのフレイアの像は、後日誰も知らない間にひっそりと姿を消していた。



「フレイアたん。あんなにいい子だったのに、どうして自分より大きいオッパイが嫌いなんだ」


 そして後日、ミカちゃんがそんな寝言をほざいていた。

 でもフレイアの性格があんなふうになったのって、確実にミカちゃんの教育が原因だよね。


 このオッサン、本当にろくなことしないな。


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