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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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161 子煩悩マザーは竜神様

 本日は僕への安眠妨害が激しい。


 僕の上ではスヤスヤと寝息を立てているフレイアとミカちゃんがいて、さらに近くにはリズやドラゴニュート形態のドラドがいる。

 上に飛び乗ってきていたレオンは、いつの間にかミカちゃんの足蹴りで地面に蹴落とされていて、地面に墜落したまま寝ている。

 ただミカちゃんの尻尾が垂れさがっていて、それを赤ん坊がおしゃぶりをしゃぶるみたいになめている。


「んぐんぐ、ミルクー」

「ふへへへっ、俺の息子ちゃんが大絶好調だぜー!」

 寝言を口にしているレオンとミカちゃん。

 ミカちゃんがどんな夢を見ているのか知らないけど、今世の君に尻尾はあっても、息子さんは生えてないよ。


 あとドラド、お前すっかり変身(メタモルフォーゼ)の扱いに慣れて、眠った状態でも維持できるようになったんだな。

 天才か?

 僕だって寝た状態でメタモルフォーゼを維持できるようになるまで、何千年かかったと思ってるんだ。

 それを1歳で習得とか、将来が怖すぎる。


 太陽魔法をぶっ放したフレイアといい、土魔法と重力魔法を同時に使いこなして劣化黒曜石を作れるようになったリズといい、そして今度はドラドいい。

 うちの兄弟たちは、恐ろしいほど魔法面での成長がはやい。


 むしろ、転生組のミカちゃんとユウの方が、魔法の扱いに関して、成長がないくらいだ。

 やっぱり中身まで子供だと、その分成長が早いのかな?

 それにしても、早すぎる気がするけど。




 まあ、それはともかくとして、

 ――GALULULULULULULULU

 なんて鳴き声が、夜中に聞こえてきた。


 なお通訳すると、

『こ、子供たち、何があったの。これはフレイアちゃん?もしかしてうちの子供たちに、何かしでかした連中がいるんじゃないでしょうね!』


 もちろん、この鳴き声は我らの偉大なる母、マザーの声。



「こ、この鳴き声はもしや、伝説の竜神様!?」

 なぜかドナンの奴が、そんなことを宣っていた。


 あー、やっぱりうちのマザーって"竜神"なんだ。

 へー、そうかー。最強の竜族である、竜神だったかー。



 しかし、それは大事な問題じゃない。


「お前ら、今すぐ気配を消して隠れろ。いいか、絶対にマザーに見つかるな。見つかったら、この丘ごとマザーに消し飛ばされるぞ!」

「ハッ、了解いたしました」

 過去に僕とユウで作ったスケルトン軍団は、マザーが変な奴扱いして、たったの二踏みで壊滅させられた。


 今回はスケルトンだけでなく、シャドウやドナンまでいる。

 シャドウに関しては魔力量次第でまた作ることができるけど、この世界の知識を持っているドナンは超貴重な存在だ。

 この世界について聞きだしたいことが山ほどあるから、こんなところでマザーに潰されてはたまらない。


 というわけで、僕の命令を受けてシャドウたちが洞窟の奥へ瞬く間に引っ込んでいく。

 他のスケルトンたちも、ぞろぞろと洞窟の奥へ向かって行った。


「へっ、一体これはどういうことで?」

 そんな中、ドナンだけは状況が飲み込めてない様子。


「いいか、これからここに僕たちのマザー……お前流に言うと竜神だな……が来るから、今すぐ隠れるんだ」

「竜神様が、母親(マザー)?」

 僕とマザーの関係性について、首を傾げるドナン。

 だけど、このおっさんに付き合っている時間はない。


「シャドウ、こいつも連れていけー」

「御意っ」

「ぬおおおおおっ!」

 洞窟の奥に引っ込んでいったシャドウが再度姿を現し、問答無用でドナンを洞窟の奥へ拉致していった。


 なお、リッチはそれなりに上位のアンデットだが、それでもフレイアの3分の1の性能を持つシャドウに比べれば滅茶苦茶弱い。

 力で勝てるはずもなく、リッチとなったドナンは、そのまま洞窟の奥へと連れ去られていった。


 これで良し。

 あとはマザーに、ここにいる連中のことを気づかれないようにするだけだ。




 ――GYAOOOOOOOOO!

『子供たち、無事なの。無事だったら返事をしてー。マザーが今いくわよー!』


 洞窟の中に入るのに、それでも大気がビリビリと振動して、マザーの超大声が僕たちの鼓膜に突き刺さる。


「おーい、お前らいい加減に起きろ!なんでマザーの大声が響いてる中で、平然と寝ていられるんだ!」

 ちょっとタフすぎる弟妹に呆れつつ、僕は両手と両足を床について、上に乗っかっているフレイアとミカちゃんをごと体を持ち上げる。


 ――ベチン

 ――ビタンッ

 一番下で潰されていた僕が立ち上がったから、当然上の2人はそのまま床に激突。


「あれっ、もう朝ですか?」

「メシー」


 地面に激突した程度ではノーダメージ。

 フレイアは眠たい目をこすりつつ、寝ぼけている様子。


ミカちゃんに関しては、

「ヒギャー!」

 メシと勘違いして、ユウの尻尾に齧り付いていた。


 うん、いつも通りの光景だな。

 その後、兄弟たちは全員目を覚ました。


 ただ、

『子供たちどこなのー』

 見た目は超巨大なのに、子煩悩なマザーの取り乱しまくってる声が、その後もしばらく響き続けた。


 あれはもう大気を揺らすなんてレベルでなく、地面までビリビリと振動していた。

 地震計があれば、震度2から3とか出ててもおかしくない揺れだ。


 さすがマザー。

 鳴き声だけで地震を起こすとか、もう存在感が半端ない。


「マザー」

「ここですわー」

 なおレオンとフレイアが、尻尾をパタパタ振りつつ洞窟の外へ出れば、

『ああっ、そこにいたのね。私の子供たち』

 ものすごい速度で僕たちの所まで飛んできた。


 真っ暗闇の中でも僕たちの姿を識別して、すぐに飛んでくる。

 本当にマザーは半端ない。



『フレイアちゃんの凄い魔力を感じたけれど、一体何があっての?それと皆怪我はないかしら?もしかして危険なモンスターがいたの?だったら、今すぐお母さんがあなたたちをいじめた奴を、ギタギタのボコボコに踏み潰してあげるわ』


 子煩悩だけど、うちのマザーはどうして踏み潰すことが前提なんだ?

 そのせいで、前回のスケルトン軍団は踏み潰されて消滅してしまったし……。


 もしかしてマザーって、実は僕以上の暴力主義者とか?



 そんなことを考えていたけど、

「ホホホッ、別に大したことはなかったですわ。ただちょっと、煩い虫けらを焼いただけですから」

 今回大問題を引き起こしたフレイアが、そんなことを宣ってた。


 アントの軍勢を炎で倒したのは、確かに虫けらを焼いただけだよね。

 ……うん、そうだけどさ、もっとオブラートな表現使おうよ。

 虫けらなんて、女の子が使う言葉じゃないよ。


『虫?だったらお母さんも……』

「マザーは何もしなくていいよ。皆フレイアが燃やしたから」

 マザーが暴れ出すと、この辺の地形が確実に変わってしまうので、僕は急いで止めに入る。


『そうなの?ならばいいけど。……でも、お母さんがちっょと遠くまで狩りに行ってる間に、フレイアちゃんが魔法を使ってるなんて、お母さんビックリよ』

 てな具合で、マザーは割とあっさり、暴れることを撤回してくれた。



 それにしても、ちょっと遠くまで狩りに行っていたねぇ。

「ところでマザー、今は獲物を持ってないみたいだけど?」

『フレイアちゃんたちのことが心配で、途中で捨ててきたわ』

「メシー。マザー、メシー、メシー」

 食い物に真っ先に反応したのは、野生児ミカちゃん。


『もうミカちゃんってば食いしん坊ね。分かったわ。捨ててきた獲物を拾ってくるわね。でも危ないことがあったらいけないから、皆はここを動いちゃダメよ。何かあったら大声で私を呼ぶのよ。すぐに目障りなモンスターは潰すから』

 なんか物騒なことを言って、マザーは翼を羽ばたかせて飛んで行った。



 その後大して時間をかけずに戻ってきたマザーは、黒い魔族の死体を抱えて帰ってきた。

 この魔族の肉だけど、とっても美味しいんだよね。

 この辺りでとれるゴブリンや土狼、砂蜥蜴(バジリスク)などとは、段違いの上肉だ。



「メシじゃー」

 夜中だけれど、ミカちゃんは真っ先に齧り付く。


「お腹空いた……」

 ドラゴニュートボティ―は相変わらず燃費が悪いので、僕も魔族肉を前にして、食事することにした。

 今日は魔力をかなり使ったから、いつも以上にお腹が空いたし。


「ああっ、疲れた後に食べるお肉って最高っ」

 同じく魔力消耗が激しかったフレイアも、おいしそうに魔族肉を口に入れていた。


 なんだかんだで、僕たちは睡眠より食欲の方が上回っているドラゴニュート兄弟だった。




 そんなほのぼのとした食事が終わった後。

『ところで今回の狩りはここまでにして、私と一緒に帰りましょうね』

 と、マザーが言ってきた。


「えっ、もう少し狩りをしていたいけど……」

『レギュちゃん、帰りましょうね』

 僕としては今回手に入れたドナンを始めとするアンデットたちを使って、色々やりたいことがあった。

 だけど、マザーが有無を言わせない口調をしている。


 地上から見上げたら、顔がよく見えないデカさのマザーなので、その威圧感は半端ない。それに増して、今日の言葉はいつも以上に強かった。



 ……これは勘だけど、マザーがこの第2拠点の中にある存在に、気が付いている気がする。

 確定はできないけど、アンデットたちの気配を感じ取っていないか?



 そんな僕の心を読むかのようにマザーは、

『レギュちゃん、変なことはしてないわよね?』

「もちろん、マザー」

 確認してきたので、僕は嘘なんてついてないよって笑顔で答えておいた。



 マザーだったら、10メートル程度の丘一つ潰すなど、造作のない事だろう。

 マザーに、改装工事を終えたばかりの第2拠点と、アンデットどもを滅ぼされてはたまらないからね。



「それより今は夜だから、帰るのなら陽が出てからにしよう」

 僕は内心での考えをおくびにも出さず、マザーに提案した。


『それもそうね。私は大丈夫だけど、皆は暗いと目が見えないのよね……』

 マザーが頷いてくれた。


 ただ今の言葉からして、マザーは暗闇でも昼間のように見通すことができる、"暗視スキル"持ちのようだ。

 まあ、僕ら兄弟の中でも、ユウとドラドの2人が暗視スキルを持っているから、親であるマザーが持っていても不思議じゃないけど。


 それはともかく、僕たちが帰るのは、太陽が昇ってからと言うことで決まった。




 よし、帰り支度が必要になるので第2拠点に戻って、それからドナンたちアンデットに最低限の指示を出しておこう。


 指示の第一は、

「絶対にマザーに見つかるな。見つかったら、お前ら全滅するぞ!」

 だ。


 多少強くなったからと言っても、ここにいるのはただのリッチに、シャドウに、スケルトン。

 こいつらが束になったところで、マザーが2、3回足を上下させたら全滅だ。

 以前やられたスケルトン軍団と全く同じやり方で、全滅させることができる。


 マザーの実力は、それくらい桁外れに高い。


 それにアンデットは神聖属性の攻撃に弱く、マザーは確実に神聖属性の攻撃もできる。

 何しろ、子供であるミカちゃんは光竜の属性持ち。光竜は光と神聖魔法に長けた竜だから、その要素をマザーも間違いなく持っている。

 こんなマザーに踏み潰されたら、アンデットは1発で昇天だ。




 その後僕たちは朝になるまでに第2拠点内の荷物を纏め、アンデットたちへの指示も出し終えて、マザーと共に自宅への帰路に着いた。


 どうか、マザーが第2拠点とアンデットたちを壊滅させませんように。

 そう、僕は心の中で祈っておいた。


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