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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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159 私たちのファザーとマザー

 ドナンとおまけのレイスについては大方話を付けたので、今度はフレイアの方に向き直る。


「レギュラスお兄様」

 大魔法を使って倒れたフレイア。その体はレオンに支えられている。

 ほぼ全力で魔法を使ったため、その反動で疲れ切っているけど、意識まで失っていなかった。


「ひゃっ!」

 そんなフレイアの額に、僕は無言でチョップを入れた。



「フ、フレイアたんの涙目と悲鳴。なんてレアな光景!」

「ミカちゃん……頼むからこういう時まで、それをしないでください」

「俺はただ自分の心に正直なだけだー!」

「はいはいっ」

 ミカちゃんとユウの外野が煩いけれど、無視してしまう。

 肉体言語の効果に頼り過ぎたせいか、ミカちゃんの耐性も日々上がって行ってるんだよね。


 うん、ここは何もなかったことにして、ミカちゃんたちの事はスルーだ。



 それより、僕は目の前で額を抑えているフレイアを見ながら、

「いいかいフレイア。いくらイライラしてたからって、あんな大魔法をぶっ放しちゃダメだ。危うくミカちゃんたちまで巻き込まれて、死にかけたんだから」

「……は、はいっ」

 僕に注意されて、しをらしくなるフレイア。

 尻尾はペタリと地面に垂れて、元気なさげだ。


「今回は僕が何とかしたから被害はなかったけれど、次からこんなことしないように。僕との約束だよ」

「お兄様との約束……はい、わかりました」

「僕との」という点に、フレイアが少し声を弾ませていた。


 うーん、この子僕が言った言葉の意味わかってるのか?


「いいかい、大魔法は禁止。分かったね」

「もちろんです。私は、お兄様に嫌われたくないですから」

 そう言うフレイアの瞳は潤んでいて、なんだか年齢に似合わない色気があった。

 中身が1歳児なのに、見た目が中高生レベルだからいけない。


 ……昔俺をはめた女みたいに、絶対にならないでくれフレイア。


「全く、仕方のない妹だな。分かってない気がするけれど……次やったら僕も本当に怒るから」

「ヒャン!」

 もう一度チョップを入れておいた。

 これくらいしないと、全く反省しそうにないからね。



「とはいえ今回は疲れただろう。少しだけ僕の魔力を分けてあげるから」

 散々やらかしたフレイアへの説教はもういいだろう。

 あまり説教ばかりして、年寄りがられて煙たがられるようになったら嫌だ。


 なので僕は魔力(マナ)を相手に分け与えることができる、"魔力譲渡(トランスファー)"の魔法を使いながら、フレイアの頭を撫でた。


「お兄様の手、気持ちいいです」

「魔力の回復を手伝ってあげるよ。これで少しは体も楽になるだろう」

「はい。とても暖かいです」

 疲れているフレイアの目が細められて、その言葉の通り、本当に気持ちよさそうにしていた。




 なお、この背後では、

「Noー、フレイアたんに手を出す邪悪な兄貴に、今こそ天誅を!」

「ミカちゃん、兄さんに襲い掛かろうとしないでください。今度こそ、ただじゃ済まないですよ」

「離せ、離せユウ!俺は大事なフレイアたんのお胸を守るためにー……」

 ユウがミカちゃんの服の襟首を掴みながら、2人でどうしようもない漫才をしていた。


 それと、

「脂肪乳怖い。ワシ、あの赤髪のドラゴニュートには絶対に逆らわんぞ」

「赤髪のドラゴニュート以外にも、ここの兄弟にはみんな逆らわない方がいいですよ」

 リッチになったドナンとおまけのレイスが、何やらシミジミと話し合っていた。



 とはいえ、これで今回の事件は解決。

 今回は僕も派手な魔法を使ったので、疲れてしまった。

 あとは第2拠点に帰って休んで、それからのことは明日考えることにしよう。




「さあ、皆第2拠点に帰るぞー」

 僕は一同にそう告げた。


 そうして魔力譲渡(トランスファー)を使っていた手をフレイアの頭から話したとき、フレイアが不満そうに頬を膨らませていたけれど、それに関しては無視。

 ただ、たまには子供っぽい拗ねた顔もできるんだと思い、僕はフレイアの中身が完全な大人でないことに、少し安堵した。


 まだ小さいんだから、背伸びをせずに子供のままでいればいいんだよ。

 と、思う。



 だけど、まだ疲労が濃いフレイアは、自分で動くことができないようで、

「帰りはレギュラスお兄様が私を背負って行ってくださいませんか?」

 なんて尋ねてきた。


 でもね、

「それは無理だから」

「どうしてですか?」

「僕の背だと、背負うの無理だから……」

「あっ」


 大変、大変忌々しいことだが、僕とフレイアの身長差だと、僕がフレイアを背中におぶるなんて無理。

 力の面ではドラゴニュートだから問題ないけど、僕とミカちゃんは……兄弟が脱皮して成長した中で、もっとも成長率が低かった。

 つまり、フレイアに比べて背が低すぎるんだよ!


「レオン、そのままフレイアを拠点まで背負って行ってくれ」

「わかったー、レギュ兄さん」

「ええっ、そんなー。だったらお姫様抱っこを……」

「やらないよ!」

 フレイアがただをこねだしたけど、僕は全部レオンに擦り付けてしまうことにした。


「そんな、嫌ですわ。お兄様ー」

「なんなら、こいつらに背負ってもらう?」

 しかし、フレイアはまだ諦めないようだ。

 なので僕は、シャドウの1体を指さした。


「よろしいのですか?」

「いや!やっぱりレオンでいいですわ」

 指名されたシャドウは、まるでベテランの執事の様に、体の前に手を持ってきて頭を垂れた。けれど、フレイアによって即却下されてしまう。


 なぜだろうね?

 非常に紳士的な態度だったのに、何が不満なんだ?


「そんなスケルトン似の不細工に触れられるなら、レオンで我慢します!」

 それがフレイアの答えだった。



「そんな……私はフレイア様の魔力が元で生まれたので、我らにとってはマザーの様なお方……」

「あんたたちみたいな不細工。私の子供のはずないでしょう!」

 フレイアの怒鳴り声を前に、シャドウたちは見た目の不気味さなんてまるでなく、ガックリと頭を垂れてしょげてしまった。


「「「マザー」」」

 と、シャドウ3人組が呟いているけど、

「その名で私を呼ぶんじゃありません!」

 フレイアは、どうしても自分がシャドウたちの母だと思いたくないようだ。



「ファ、ファザーからも、何かマザーに一言お願いします」

 なんて思ってたら、シャドウの奴らが僕の方に助けを求めてくる。


「誰がファザーだ。俺はお前らの父親になったつもりなんかないぞ!」

「ですがレギュラス様こそが、我々を生み出してくださったお方。であるからには、ファザーではありませんか。そしてフレイア様こそが、私たちのマザー」

 なんだか熱弁するシャドウ。


 でも、嫌だ嫌だ。

 あんなスケルトンが魔改造されてできた生き物が子供とか、勘弁して欲しい。お前らは所詮ただの便利な労働力で道具だよ。死ぬまで馬車馬のように働き続ければいいんだ。

 いや元がスケルトンだから、もう死んでるけどさ。


 だけどシャドウの言葉に、今度はフレイアが両手を頬に当てて、ポッと赤くなる。

「わ、私とお兄様の子供。つまり私とお兄様はふう……」

「フレイア、そこは反応しなくていいからね」

 なんで、そんなところに反応するんだよ!


 さっきは不細工だなんだと言って、シャドウどもに見向きもしなかったくせして。



「これが既成事実というものですね、ミカちゃん?」

「Noー、俺のフレイアたんは、俺だけのものだー!」

 ……をぃ。既成事実って何だよ。

 あとミカちゃん、お前もなに訳の分からんことを言ってる!



 ああもう、訳が分からん。

「ユウ、お前からも何か言ってやれ。お前がこいつらの保護者なんだから!」

「もう僕じゃ、どうにもできません……すみません」

 ぺこりと頭を下げて、ユウは殊勝に誤ってきていた。

 でも、明らかに心の中でこれっぼっちも済まないって思ってないよね。

 むしろ、このドタバタ劇の中に巻き込まれない様にって、逃げる口実にしようとしてないか。




「ウガー、もう嫌じゃー!」

 僕は何もかもが嫌になって、この場から逃げ出すことに決めた。


「お兄様待ってください。レオン、私を背負って全力で追うのよ」

「ええっ、なんでー?」

「いいから早く追うの!そう、これは追いかけっこなのよ」

「んー?分かったー」

 少し納得できてないみたいだけど、それでもあっさりフレイアに従うレオン。

 フレイアを背負って、僕を追いかけ始める。


「グヌヌヌッ、レオン。どさくさに紛れてフレイアたんを背負うとは、なんて卑劣漢。フレイアたんのお胸の柔らかさを背中で感じていいのは、貴様でなく俺だー。今すぐそこを代わりやがれー!」

 レオンとフレイアの後を、追いかけるミカちゃん。


「……さて、皆さんついてきてください」

 最後に残ったユウは優秀な保護者らしく、その場に残っていたドナンやシャドウたちに指示を出していた。



 とはいえこんなドタバタがありながらも、フレイアの大激怒事件は、これにて全て幕引きだ。

 そういうことにしておこう。


 めでたしめでたし……?


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