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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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158 偉大なる死の王は、中間管理職をご所望

「レギュレギュがいつも以上に黒い。普段の悪党から、大悪党に変わってる」

「何か言ったかな、ミカちゃん?」

 肉体言語で黙らせたはずのミカちゃんが、ゴキブリ並の生命力で早くも復活していた。

 しかし、この子は何を言ってるのかな?


 僕がニッコリ笑って上げたら、それだけで理解したのか、ミカちゃんは自分の口を両手で押さえて何もしゃべらなくなった。

 OK、肉体言語での教育が行き届いているようだ。




 それはともかく、自分がただのレイスだと気付いたドナンは、ガックリ項垂れて自信喪失中。


 そんなドナンに向かって、僕は語り掛けてあげた。

「せっかくだから、レイスと本物のリッチの違いを教えてあげよう」

『一体、何を……』

 項垂れているドナンだけど、僕はその近くに行って、それから……


「何、もう死んでるんだから、死ぬよりは痛くなさい」

『ガアアアアアアッ!』


 僕はドナンの半透明の体に手を突っ込んだ。

 それと同時に絶叫を上げ続けるドナン。もともと半透明だった霊体の体が更に薄れていき、やがて光の粒子となって消え去った。



「兄さん、もしかしてドナンさんを殺した……いや、成仏させたんですか?」

「ユウ、あれはどう見ても成仏なんて生易しいものじゃないぞ。地獄に送ったんじゃないか?」

「ノンノン、ドナンには少し生まれ変わってもらおうと思ってね」


 ユウとミカちゃんを尻目に、僕はドナンの遺体であり、ドワーフスケルトンと化している骨の方へ近づいていく。


 ――ガタガタ……


 本能なのか、スケルトンが骨を鳴らして全身を震るわせているけど、巻き付いているシャドウが、さらにきつく締め上げたので、すぐに動けなくなった。

 本当に、シャドウは優秀な奴だ。


 そんな骸骨の前で僕は、魔の呪文を少し呟く。


 陰鬱とした風が周囲を舞い、大地が嘆きと苦しみの声を出す。

 この場所はライトの光で照らされているはずなのに、光が力を失って闇が広がる。

 死者の気配が辺りを満たし、嘆きと乾きと絶望が世界のただ中に巻き起こる。


「兄さんが絶対にさんがとんでもないことをしてる」

「イヤダー、あいつ本当に魔王過ぎるだろー」

 なお、周囲の変化にユウとミカちゃんが何か言ってる。


 ただいま気絶中のフレイアを介護しているレオンも、僕の方をポカーンとした顔で見ていた。


 でも魔王過ぎるってのは、どういうことだろう?僕は元であって、現魔王じゃないのに。


 それはともかく、

「さあ禁忌を犯し、力ある不死者として蘇るがいい」

 兄弟たちの視線が集まる中、僕はドワーフスケルトンの体に、先ほど拾ったドナンの魂を突っ込んだ。


 なお、霊体のドナンが光となって消え去ったけれど、あれは僕がドナンの魂を無理やり握ったから。

 その握っていた魂を、多少の魔法を施して、ドワーフスケルトンへ突っ込んだ。


 ――ガッ、ガアアアアアァァァァァッ


 ドワーフスケルトンが、この世の者でない絶叫を上げる。

 もともと不死者なのでこの世の者でないけど、その体から黒いオーラが立ち昇り、ちょっと強めの力が周囲に溢れだす。

 ただしちょっと強めというのは、僕たちドラゴニュート基準での話。

 人間だったら、高位の魔法使いに匹敵する強さになる。



『ガッ、ガアアアッ、アアアアッ……アッ、アアッ』

 やがて絶叫を上げていたドワーフスケルトンの体に、闇でできた衣が纏わり付いていき、それと共に絶叫が小さくなっていく。


 そしてに体は、シャドウの1体に未だに拘束されているけど、

「もう必要ないぞ」

「御意」

 シャドウに出していた拘束の命令を解除した。


 ドワーフスケルトンに巻き付いていたシャドウは、蛇の姿から元の4本の腕に二足歩行の怪物の姿へ戻り、僕の傍で待機した。



 そして僕たちの前には、黒い闇ローブを纏ったドワーフスケルトン。

 いや、たった今僕が施した魔法によって、本物の"リッチ"として転生したドナンがいた。


 リッチと化したドナンは、無言でいた。

 しばし呆然自失としていたようだけど、不意に骸骨の中にある赤い目玉がギョロギョロと動く。

 辺りを見回し、それから自分の骨だけの右手を見て、指を一本ずつ動かしていく。


『これは、体……それに体から溢れ出るこの力は一体?』

「それがリッチだよ。レイスなんかと違って、力がもっとあるだろう」

『これがリッチ……だが、一体どうしてワシがこれほどの力を……』


 リッチとなったドナンの前で、僕は微笑んであげた。


 その笑みを理解したドナンは、

『まあか……いや、あなた様ほどの方であれば、リッチを生み出すことなどたやすいことなのですな』

「そうだね。それで君をわざわざリッチに作り替えてあげたんだから、お礼をもらおうと思うんだ」

『……』

「君、うちで"中間管理職"として働いてくれ」

 僕はこの日一番の笑顔で、ドナンに言った。




 なお、この会話の裏でミカちゃんとユウが、

「兄さんが人間やめてる……」

「魔王様怖い……。てか、あんな邪悪な笑みを浮かべながら、なんで中間管理職に勧誘ししてるんだよ!あれか、元ブラック企業の経営者だからか!ブラック企業経営者、怖すぎだろ!」

 そんなことを話していた。



 でも、そんな2人の会話も意味がない。

『偉大なる死の王よ。ワシはあなた様の(しもべ)、下僕として、この魂をお捧げ致します』

 なんてドナンが言って、僕に体どころか魂を売り渡してきた。



「アカン、悪魔に魂を売り渡しやがった。……でも、変態筋肉乳親父だからいいか」

 とは、ミカちゃんのセリフ。



 なお、この後もう1体いたレイス。こいつはユウに懐いていたけれど、なぜかこいつも僕の事を『偉大なる死の王よ!』と言ってきた。

 全員ガクガクしながら、怯えまくって跪いてきてるし。


 僕は別に怖い人でも何でもないので、このレイスも、労働者としてこれからこき使ってあげる事を約束した。


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