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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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149 不死の王……ただし変態 (ユウ視点)

 ――クッ、クハハッ。

 玉座に君臨するガイコツが、不気味な笑い声をあげ始めた。


 ――クハ、クハハ、クハハハハハッ


 骸骨の口はガタガタと揺れ動き、そしてそれに合わせるかのように、周囲の地面がボコボコと音を立てて盛り上がる。

 そして地面の下からアントが現れた。

 その数は少なく見積もっても100を超えているけど、一体これはどういうことだ?


「ミカちゃん?」

「何かおかしい。円陣を組んで警戒するぞ」

 ただならぬ事態に、僕たちは死角がないよう4人で背中合わせになって、周囲を警戒する。


 地面から湧き上がってきたアントたちは、僕たちに向かっていきなり襲ってくることはなかった。


 ただ、

 ――ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ

 口から耳障りな音を上げ続ける。


 それは玉座で笑い続ける骸骨に合わせるようで、ひどく不気味だ。


「ドナンさん、どういうことか分かりますか?」

 おそらくこの洞窟に関して、僕たち以上に詳しいだろう幽霊(レイス)のドナンさんに、僕は声をかけた。


『……』

「ドナンさん?」

 だけどドナンさんは、沈黙して何も答えない。


「おい、おっさん。どこへ行く?」

 それどころか半透明の体を動かして、玉座で笑う骸骨の横にまで移動した。


『フハハハ、ドラゴニュートの諸君。よくぞ我が玉座の間まで着てくれた』

 ドナンさんは両手を広げ、それまでの雰囲気が一変した。


 そこまで強烈な存在感もなければ、取り立てて悪い人という感じでもなかった。

 思考方式がミカちゃん寄りな所はあったけれど、取り立てて特徴がない。


 その雰囲気が今、明らかに変わった。


『我が名はドワーフのドナン。そしてドワーフでありながら、不死の秘儀を紐解き、永遠の命を手に入れた"不死の王"である』

 大口上、ドナンさんは告げた。




「……ハアッ?」

 何か凄い宣言をしていたようだけど、その言葉に真っ先にミカちゃんが首を傾げる。


「あのおっさん、もしかして中二病の幽霊だったのか?」

「ミカちゃん、これってどう見ても中二病どうこうの展開に見えないんですけど」

「ていうか、ユウ。お前もこの状況で普通に筋肉おっさんの翻訳してるから、随分余裕があるだろう」

「そ、そうですか?」

 玉座には笑い続けるガイコツとドナンさん。

 周囲にアントがずらりと並んでいて、ただならぬ雰囲気だ。だけど、それにお構いなしで、僕とミカちゃんは話し合っていた。


「とりあえず面倒な状況のようなので、燃やしても……」

「フレイア、炎をここで使ったら皆窒息しちゃうよー」

 一方のフレイアとレオンも、そんな会話をしている。


 酸欠問題を口にしてフレイアを止める辺り、レオンもフレイアの炎が怖い様だ。



『き、貴様ら、この状況でペチャクチャとおしゃべりしおってからに。このワシの怖さが伝わっておらぬのか!』

「あ、ごめんなさい。ドナンさん」

「ユウ、ちゃんと通訳しないと、あのおっさんが何言ってるのか分からん」

 怒るドナンさんに反射的に謝る僕。だけど、その言葉の通訳を抜かしたせいで、ミカちゃんに小突かれてしまった。

 なのでミカちゃんにも、急いで通訳する。


「怖さって、何がだ?」

『な、何がって……お前たちは今、不死の軍勢によって包囲されておるのだぞ』

 首を傾げるミカちゃんに、ドナンさんは周囲に並ぶアントを指し示しながら言った。


「不死?これがか?」

 ――ビュン、ドカッ

 試しにミカちゃんが地面に落ちていた石を蹴飛ばし、近くにいたアントの顔面にぶつける。

 たててはいけない音がして、石がアントの顔面に深々とめり込んだ。

 だけどその状態で、アントは直立不動の姿勢で立ったままでいる。


「おかしいな?普通あそこまで石がめり込んだら、倒れてもいいはずだが?」

『クハハハ、脂肪乳好きのアホウよ。この洞窟にいるアントどもが、生きていると勘違いしておるようだから言っておこう。

 この洞窟にいるアントどもは既に皆全て死んでおる。今動いているのは、不死の王であるワシの力によって、黄泉より蘇った死者の軍勢であるからぞ』


 ――ギチ、ギチギチギチギチ

 ドナンさんの声に合わせるように、アントたちが一斉に気味の悪い声を上げた。



「御大層だけど、要はアンデットというわけか?」

『左様。クハハ、ワシは不死の存在となった後、この地で手駒となるアンデットのアントどもを手に入れた。

 いずれは地上に進出して、不死の王国を築こうと思っておったが、そこにお前さん方が暢気に足を踏みいれてきおった。

 ドラゴニュートは地上でも非常に強力な種族。ワシの力を持って、お前たちドラゴニュートを支配下に置き、我が不死の軍勢に加えてくれよう。そうしてワシは、ワシは……』

 そこから天井を見上げて、悦に入ったように笑うドナンさんと、玉座の骸骨。


「……どうしよう。あのおっさん筋肉乳が好きなだけあって、そうとう頭がいかれてるぞ」

「ミカちゃん、お願いですからこの緊迫した場面で、乳のことは忘れてください」

「忘れん。奴は筋肉乳好きを公言する邪教徒だぞ!」

 ……ミカちゃん。どうしてそこまで馬鹿なんですか?

 僕は心の中で、マジでそう思った。


 ドナンさんの話からして、どうやら僕たちは騙されて、ここまで誘導されてしまったようだ。



 だけどミカちゃんとタイマン張って、乳の話題で対立していただけあって、ドナンさんも考えていることがズレていた。

『ええい、この脂肪乳マニアめ!

 もう御託は沢山じゃ。ワシの不死の軍勢に加えてやるから、大人しく死んで、ワシの手足となるがいい。

 貴様が死んだ後で、女性の筋肉乳がどれだけ素晴らしいか、アンデットになった貴様の体に、骨の髄にまで教え込んでやるぞ!』

「嫌じゃー!」


 もう、僕帰りたい。

 フレイアとレオンを連れて、今すぐ帰っていいですか?



 ミカちゃんとドナンさんを放置して、叫びたくなったけど、今のやり取りが最後通牒だったようだ。


「行くがよい、我が不死の軍勢よ。あのドラゴニュートどもを殺して、ワシの不死の軍勢の一員とするのじゃ」

 ――ギチ、ギチギチギチギチ

 ドナンさんの命令で、僕たちを囲んでいたアントたちが一斉に動き始めた。


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