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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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146 類は同類を呼ぶ (ユウ視点)

 ミカちゃんとドナンさんは、似ている。


 ミカちゃんに逆らうことができない僕は、結局あの後もドナンさんの話を翻訳させられ続けた。


 ケンタウロスの話が終わった後にも、各地を旅して回ったドナンさん。

 1か所に留まることができない根無し草だって、自分のことを言っていた。

『ドワーフの国にいた頃は考えられなかったことですが、外の世界に出て、世界がどれほど広いか初めて知りましたよ』

 感慨深そうに言っている。


「外の世界か。俺もいつか旅に出たいなー。

 ……まあいきなり旅に出たら、マザーが追いかけてきて捕まるだろうけど……」

 これはミカちゃんのセリフ。


 僕たち兄弟の場合マザーがいるから、勝手に家からいなくなると、マザーがパニックになって探しまわる。

 脱皮して空を飛べるようになった後、マザーに内緒で家を出たことがあるけど、あの時は子供が突然いなくなって、半狂乱になったマザーが大声を上げて吠えまわりながら、僕たちを直ぐに見つけていた。

 でも、あの時のマザーの声は、子供の僕たちでも怖くなる迫力があった。

 そしてマザーに捕まった後、ドラド以外はマザーの口の中に入る羽目になってしまった。


 その時は兄さんが、「アハハ、また食べられたー」って言いながら、現実逃避をしていた。

 兄さんは色々凄い人だけど、過去のトラウマが多いせいで、マザーに食べられるとトラウマの一つが蘇ってしまうわけだ。


 僕もマザーの口の中に入れられると、このまま飲み込まれないだろうかって心配はあるけど。



 それはともかく、ドナンさんは空を飛ぶ種族であるハーピーの里でも、一時期やっかいになっていたとのこと。

 旅の中でモンスターに襲われて気絶させられ、そこをハーピーの女性に助けられたのが切っ掛けだそうだ。


「な、なんという黄金シチュエーション!主役補正か?もちろん助けたハーピーは巨乳だったよな?ユウ、通訳!」

「はいはい……」

 もう、エロい方向の通訳したくない……。

 でもミカちゃんに噛みつかれたくないので、大人しくドナンさんの言葉を通訳しないといけない。


 ――ポリポリポリッ

 ただドナンさんの話に退屈してきたのか、フレイアとレオンの2人は、連れてきたスケルトンの骨をおやつ代わりに食べ始めていた。


 いいな。僕も通訳しなくていいなら、骨を食べていたい……。



 でも僕の思いなんて全く通じない。

 この後ミカちゃんとドナンさんの間で、ハーピーの胸に対する解釈の違いで、口論が始まってしまった。


 曰く、

『胸は大きさこそ至高だ』

『いいや、胸とは筋肉でできているからこそ至高だ』


 だ、誰か助けてー。




 それはともかく、ハーピーの里にはしばらく滞在したものの、、最終的にドナンさんはまた1人旅に戻ったそうだ。けれどそこで運悪くモンスターに襲われ、命を失ってしまったそうだ。


「なんて不憫な……ちなみにドナンは童貞だったのか?」

「あのミカちゃん、それは聞かなくていい事じゃないですか」

 なんだろう。

 ミカちゃんの気にする方向って、とことんズレまくってるよね……。

 (ドワーフ)が死んだのに、気にすることろが童貞とか、完全に方向がおかしい。


 だけどそんな僕たちの前で、ドナンさんはニヤッと笑っていた。


「あ、今のは通訳なしで分かったわ。このおっさん、やっぱり俺の敵だ。てことで、今すぐ成仏しやがれー」

『ウギャーッ』

 幽霊相手にミカちゃんが飛びかかり、ドナンさんが悲鳴を上げる。


『グベラボファー』

「って、すり抜けんたんだけど」

 ドナンさんが大げさに仰け反って悲鳴を上げている。けど、ミカちゃんの体は普通にドナンさんを捕まえられず、すり抜けていた。

 さすが本物の幽霊、やっぱりすり抜けちゃうんだ。


『ちょっと、今のはマジで痛かった。死ぬかと思ったぞ。ゼーゼー』

「いや、ドナンさんはもう死んでるでしょう」

『むっ、そうじゃったな』

 見た目は全然ダメージなさそうだけど、ミカちゃんに触れられた瞬間、ドナンさんは本当に痛かったそうだ。


「ミカちゃん、ドナンさんを食べないでくださいよ」

「いくら俺でも、体をすり抜ける幽霊を食えるわけがないだろう!」

 そう言って、プンプンと怒るミカちゃん。でもこの言葉からすると、体がすり抜けなかったら、食べるなんてことはないよね……。


 僕たちは野生での生活が1年以上続いているけど、それでも元人間で元日本人なんだから、そんなことは絶対にしてほしくない。

 相手は人間ではないとはいえ、ドワーフだよ。

 話が通じる相手まで食べるとか、そんなことしたら僕たち完全に人間にやめて、モンスターだよ。



 本当にミカちゃんは、やることなすこと本能のままで怖い。




 で、話が紆余曲折しまくってるけれど、

『ワシは誰にも知られることなく、1人で死んでしもうた。それからはご覧の通り幽霊になってしもうた。あなたが幽霊になってから、初めてワシと話ができたわけです。

 しがない死人の頼みじゃが、せめてワシの体を弔ってはもらえんだろうか。このまま誰にも知られることもなく、忘れられてしまうのは寂しすぎるのじゃ』

 ドナンさんはしんみりした様子で言った。


 もちろんドナンさんの頼み事を、僕は翻訳して兄弟たちにも伝える。

「……ということですが、どうしますミカちゃん?ここは兄さんに一度相談しに行った方がいいですよね」

「……んー、気の毒っちゃ気の毒な話だけど、こんな筋肉乳にしか興味のない非童貞のおっさんの願いを聞いても、俺たちに何のメリットもないよな」

「いや、非童貞ってところは関係ないでしょう」

 いけない。

 ミカちゃんと話していると、とことん話の論点がズレていて、"頭痛が痛くなる"。


「ねえ、ユウ兄さん、非童貞って何?」

「フフフッ、レオンが知るにはまだ早いですわ。大人になったら、ゆっくり教えてあげましょう」

 あと、謎の言葉に反応したレオンと、意味深に笑うフレイア。

 だけどフレイアは元が美人の上に、笑いには年齢に合わない艶があった。それを見てしまった僕は、思わずドキリとさせられる。


 中身が1歳なのに、明らかに大人の妖艶な女性に見えてしまう。

 いや、相手は妹なんだよ……。


「フフッ、さすがはフレイアたん。俺との日々の特訓が生かされてるぜ」

 そんなフレイアに、ミカちゃんが親指を立て、尻尾をブンブン振りながら笑ってる。

 兄さんに隠れて、ミカちゃんとフレイアは妙な特訓をしているけど、それが今の笑顔らしい。


「って言うか、レオン、フレイア。童貞なんて言葉の意味は、まだ知らなくていいからね」

「まあ、ユウお兄様は遅れていますわ。ウフフッ」

 あ、これ完全にダメだ。

 フレイアの妖艶な笑みを見ながら、僕は色々手遅れだと思わされた。


 ミカちゃんの毒牙に、フレイアが完全に染まってしまってる。




『おーい、お前さんら。それよりワシの頼みをどうか聞いておくれー』

 ドナンさんが、後ろの方で存在なさげに叫んできていた。


 すみません、僕の兄弟がこんな話ばかりしてて。

 僕は心の中でドナンさんに対して、物凄く申し訳なくなってしまった。

 死んだ人からの頼み事なのに、そっちより変な事ばかり気にしていて申し訳ないです。



「とりあえず、一旦戻って兄さんに相談……」

『兄さんとは?……お前さんたちは兄弟だと聞いたが、まだ上に兄がおるのか』

「フフフッ。ザ・暴力キングで、幼気な幼女であるこの俺を、ギタギタのボコボコにのすのが趣味の暴君だ」

 暗い顔になって笑うミカちゃん。

 実感がこもり過ぎてて迫力が凄い。けれど、自業自得だから仕方ないと思う。

 悪いのは9割方ミカちゃんだから。


 でも、兄さんも暴力支配はやめて欲しいけど……。


『そんな兄の顔色ばかり気にしておるとは、お前さんも随分肝っ玉が小さいのう。あ、いや、女の子じゃから肝っ玉はないか』

「……お、俺だって肝っ玉が欲しいー。好きで"息子"を手放したわけじゃないんだぞー!」

『な、何じゃ。いきなり叫び出し追って』

 突然叫んで泣き始めるミカちゃん。


 なお、息子というのは、

「ねえねえ、フレイア。肝っ玉は分かるけど、息子って何のこと?」

「それは男と女の人が、一緒に寝て生まれてくる……」

「フレイア、なんでそんなこと知ってるの!」

 ミカちゃんの言う"息子"は、男性にしかない物の比喩だ。


 だけど、それとは違う息子について、フレイアがやけに詳しく話している。

 男にしかない息子もダメだけど、どうして子供の作り方をその年で知ってるんだよ、フレイア!

 ……原因はミカちゃんしかないか。



「ミカちゃん、お願いですから1歳児にとんでもない事ばかり教えないでください。フレイアはああ見えても、まだ生まれて1年なんですよ!」

「チッチッチッ、こういう教育は早い内からやらないと、お胸のサイズが大きくならないって決まってるんだ」

「決まってないです!」

 僕は思わず顔を真っ赤にして、ミカちゃんに叫んでしまった。


「フッ、これだからお子ちゃまは」

「ミカちゃんの頭がおかしすぎるんです……ウギャー」

 反論したら、ミカちゃんに問答無用で噛みつかれてしまった。


「う、ううっ、兄さんも暴力主義だけど、ミカちゃんもそれに毒されてる」

「カッカッカッ、レギュレギュ相手に勝てずとも、ユウごときに俺は負けん!」

 弱肉強食って言うけど、こういう時に弱いと本当に辛い。

 僕は、ミカちゃんの言いなりにされてしまっている。



『……もう嫌じゃ、この兄弟ワシの存在を完全に忘れておる』

 そんな中グスリと鼻を啜って、ドナンさんが1人でいじけていた。


 すみません。

 物凄くごめんなさい。

 本当に話を聞かない兄弟で、申し訳ありません。


『じゃが、たまにはそんな兄の事など気にせず、我が道という物を進んでみてはどうじゃ?』

 そんなところでドナンさんが、囁くようにミカちゃんに言った。


 その言葉を僕は通訳するべきか迷ったけれど、ミカちゃんにジッと睨まれてしまったので、仕方なく通訳する。


「フッフッフッ、確かにそれはいいな。でも、それがただのおっさんの体を探し出して埋葬するだけというのが、実に気に食わん。百億歩譲って、それが美人だったらまだ考えただろう。もちろん生前が巨乳なお姉さんの頼みだったなら、即決で頷いたけどな」

『ムウッ。おぬし、見た目は小さな女のくせして、とことん偏った志向を持ったおっさんじゃの』

「うるへー、それが俺の生き方なんだよ。あんたみたいな筋肉乳にしか興味ない親父とは違う!」

『なんじゃとー、筋肉父の良さが分からんとは、所詮はただのガキじゃの!』

 この後2人の間で、喧々諤々の言い争いが開始される。

 もちろんドナンさんの言葉は僕が通訳しないといけないのだけど、僕、こんな喧嘩の通訳したくないです。

 誰か助けてー。


 仕方なくフレイアとレオンの方を、僅かな希望を求めて見てみれば、

「スースー」

 2人ともこのやり取りに飽きて、寝息を立てていた。


 いいなー、僕もこんな変態たちの相手なんてしたくない。


「おっぱいブルンブルン」

『筋肉乳ピクッピクッ』


 この2人って、乳に対してすごくこだわりがある。

 方向性は違ってるけど。


 ハ、ハハハ。

 僕は力ない笑いが、口の中からこぼれていた。


あとがき



 ミカちゃんのストッパー(レギュラス)がいないと、ひたすら暴走し続ける……。

 誰か、誰か奴の暴走を止めてくれー

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