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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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141 本日のゴブリンスケルトンたちの受難

 手持ちのバジリスクの石化毒を全て試し終わった。

 今度これを使って石化の解毒薬を作ってみるのもいいかもしれないと思いつつ、以前スケルトンたちにグラビ鉱石を集めるように指示していたことを思い出した。


 僕たちがいない間にスケルトンたちはちゃんと鉱石集めをしていたようで、スケルトンの1体に、鉱石を集めた部屋へ案内させる。


 その結果、なんと部屋一つが丸々鉱石で占領されるほど、大量に詰め込まれていた。


「おお、すご……くない!」

 最初に見た瞬間は驚いた。

 さすがは無敵の労働力。朝昼晩関係なく、ずっと鉱石を拾っていたんだなと感心した。

 そしてよく見れば、そこにはグラビ鉱石がほとんどなく、ただの石ころの山だと気付いた。


「こいつら、本当に使えねえ。生前から頭が悪かったせいで、鉱石の見分けもできないのか」

 スケルトンの性能は生前の能力にかなり影響される。

 中途半端に使えない脳みそのゴブリンから作ったから、鉱石とただの石の違いすら見分けられないアホぶりだった。


「こいつら脳みそがついてるのか!」

 思わずそう叫んでしまった。

 でも、考えなくてもわかることだよね。

 こいつらとっくに骨しかないから、脳みそなんてついてない。



 ただ魔力を注いで強化したらどうなるかと、少し思案してみる。

 ただのスケルトンより、魔力を注いで強化したスルルトンの方が全体的な性能が向上する。

 走る速さが上がったり、持てる荷物の重量が上がったりと、基本的な身体能力が向上するわけだ。


「んー、でも頭まで良くなるかは微妙なんだよな」

 元々脳みそがスカスカのゴブリンどもだ。そんな連中を強化したところで、たかが知れている。


 例えば地球で自転車をどれだけ魔改造したところで、F1並の速度は出ない。

 あるいはそこまで改造できるなら、改造するより始めからF1を作った方がはるかに安上がりだろう。


 まあ今回は速さでなく、お頭の性能が問題だけど。


 とはいえ考えていても仕方ないので、試しに手近にいるスケルトンに、魔力を多めに注いで強化してみた。


 ――グオオォォォォッ


 その結果、ゴブリンスケルトンの体が一回り以上巨大化して、僕の身長より背が高くなった。

 ちょっとムカつく。


 あと闇のオーラっぽい物を身体から迸らせていて、さっきまでのゴブリンスケルトンとは明らかに存在の格が変わっていた。


「お前、この石ころの山からグラビ鉱石と石ころを分別してみろ」

 存在の格と見た目は明らかに変わった。

 これでお頭も多少マシになったかもしれないと期待しつつ、僕は命令を出してみた。


 僕の命令を受けて、強化ゴブリンスケルトンは石ころの仕分けを始めた。


 その結果、すぐに分かった。


「ああっ、やっぱりただの見掛け倒しか」

 所詮アホなゴブリンを強化しても、アホなままだった。

 石ころとグラビ鉱石の違いも見分けられず、石の山を適当に掘り返すだけで終わってしまった。


 分別できる能力があればよかったけれど、所詮ポンコツをいくら強化してもポンコツでしかなかった。




 さて、強化ポンコツスケルトンが役に立たないことは証明された。

 僕は部屋に積まれている石の山から、グラビ鉱石だけ抜き出す作業なんてしたくなかったので、この部屋の存在を心の中で封印して忘れ去ることにした。

 もう二度と、ゴブリンスケルトンどもに鉱石拾いなんてやらせない。



 というわけで、バジリスクの解剖作業とグラビ鉱石に関する作業はお終い。


 次に捕獲したゴブリンの家畜化について考える。

 とりあえずこの辺りのゴブリンが食っていそうなものと言えば、縄張りが違う同族(ゴブンリ)の肉か、あるは地面に生えている草とかだろう。

 そういえば、根っ子に実をつけている草もあった。


「お前らは死ぬ以前に、自分たちが食べてた物は覚えているか?」


 ――ギギギギッ

 強化したポンコツスケルトンが、骨を鳴らしながら頷く。


「だったらその食べ物を集めて、このゴブリンどもに与えておいてくれ。死なないようにちゃんと飼育をするんだ」

 -―ギギギッ


 僕の指示に、ポンコツスケルトンは敬礼して答えてくれた。



 この指示で大丈夫だろうか?

 また石ころ集めみたいな結果にならなきゃいいけど。


 そうは思いつつも、あくまでもこれは実験なのだ。

 僕はそれ以上深いことは考えないようにしておいた。


 その後ポンコツスケルトンは、仲間のスケルトン数体を引き連れて、洞窟の外へと出ていった。

 ゴブリンに食べさせるための草や実を拾いに行ったようだ。




 しかしこれらの作業を済ませると、僕にはやることがなくなったので、手開きの時間ができてしまった。

 とりあえずリズたちを手伝って、第2拠点の居住性を上げるための作業を手伝うことしよう。


 ――ガシャーン

 ところで僕たちがリズたちが作業している部屋へ行くなり、凄い音が響いた。


「……これはどうしたんだい?」

「レギュラス兄上、実はスケルトンたちに板を運ばせていたのですが……」

 リズが指し示す方を見ると、そこでは劣化黒曜石の板を数人がかりで運んでいたスケルトンたちが、板の重さに耐えられず落としている光景があった。

 床に落ちた板は割れていないけど、落としたときに足の骨を潰されてしまったスケルトンが数体できていた。


『この子たち、力がなさすぎてひ弱ー』

 ドラゴニュート状態のドラドが、スケルトンの体たらくぶりに頬を膨らませている。


「数人がかりで運ばているのですが、板を持っている間は、常によろけていて頼りないのです。板を落としたのはこれが初めてですが、この調子だと改装工事がなかなか進みません」

 丁寧にリズが報告してくれた。



 ふむ、こいつら頭も中途半端ならば、肉体面でも弱いからしかたない。

 もちろん、僕たちドラゴニュートレベルでの腕力なんて望まない。

 けれどアンデット化して疲労を感じない以外は、人間の子供とドッコイドッコイの力しかないのが、ゴブリンスケルトンだった。


「仕方ない。それじゃあ少しだけ強化してみようか」

 てなわけで、この弱すぎるゴブリンたちに魔力を注いで強化してみる。


 ――グギッ、ギギギギッ


 すると強化したスケルトンどもが、骨を軋ませ始める。

 巨大な魔力を与えたせいで、力に耐えられずに骨にヒビが入って壊れていってる……なんてわけじゃない。

 当人たちには既に筋肉がなくなって吠えることも叫ぶこともできないので、代わりに骨を鳴らして雄叫びをあげているつもりなのだろう。

 まあ、雄たけびと言っても、骨がギシギシと音を出してるだけだけど。


 それからほどなくして、僕は5体のゴブリンスケルトンに魔力を注いで強化し終えた。

 石ころ部屋で強化したポンコツと同じように、こいつらも僕よりも背が高くなって、ついでに体から黒いオーラを放ち始める。


 強化前と比べて見た目が禍々しくなっているけど、本当に見た目だけは立派な奴らだ。

 どうせお(つむ)はポンコツと同レベルだろう。

 0.1に2を掛けても、0.2にしかならず、1にも届けない誤差レベルのお(つむ)だろう。


 なんて使えない奴らだ。

 まあ頭脳はダメでも、単純作業労働者としては疲労を覚えないので、優秀だけど。




「先ほどよりも、強くなっていますね」

『でも、相変わらず弱そうだよー』

 強化を終えたスケルトンたちを見て、リズとドラドがそれぞれの感想を口にする。

 しかしドラドの今の見た目は幼女なのに、見た目に反して意外と毒舌だ。


「僕たちと比べるのは、さすがにダメだろう。でも、こいつらなら劣化黒曜石の板を落とす心配はないないだろう」

 というわけで、こいつらに劣化黒曜石の板を運ばせてみた。


 ただのスケルトンと違って、強化された連中が5体で協力すれば、危なげなく劣化黒曜石の板を運ぶことができた。


 お頭はあれでも、身体能力は確かに向上しているようだ。




 ところでこの強化を終えた後、生前は魔法を使えたゴブリンメイジがいたことを思い出したので、そのスケルトンも強化してみた。

 その結果、やっぱり身長が僕の背よりも高くなりやがって、あと黒いオーラを身体から放つようになった。

 この黒いオーラは有害でないし、空気の様に吸いこめるわけでもない。

 しかし、なんでこんな演出効果が生まれるんだろう?


 まあ、それはいい。

 この強化ゴブリンメイジスケルトンの性能だけど、魔法に特化したゴブリンだったせいか、劣化黒曜石の板を運搬させてみると、見事に1体だけ足手まといで役に立たなかった。

 身体能力は成長しているはずなのに、普通のゴブリンスケルトン以下の貧弱さだ。


 ならば土魔法を使わせて、洞窟内の凸凹を平らにできないかとやらせてみたら、凸凹だった場所が、余計にボコボコな地形になってしまった。


『役立たずー!』

「本当、使えない奴だな」

 ドラドと僕の意見が見事に一致。

 特に地面を平らにする作業をしていたドラドは、このままゴブリンをおやつ代わりに食べてしまいかねない勢いだった。



 ただ、まだ可能性は残されているかもしれない。


 僕の記憶から封印した石ころ部屋へ連れていき、元魔法使いなんだから、グラビ鉱石ぐらい見分けられるだろと仕分け作業をさせてみた。

 その結果、こいつも石ころとグラビ鉱石の見分けができなかった。


「……ガブリッ、ゴリゴリゴリッ」

 僕はこの使い道のない失敗作を、黙って口に放り込んで食べることにした。


 魔力を注いで無駄に強化したおかげか、味は他のスケルトンよりおいしかった。

 肉に調味料の塩を振った感じで、ただの骨が少しだけマイルドな味わいになっていた。


 唯一の成果が味だけとは、本当に使えないポンコツスケルトンだよ。


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