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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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140 マッドサイエンティスト、レギュラス

 ユウをリーダーに野生児ミカちゃん、殲滅魔法使いフレイア、おまけのレオンを第2拠点から送り出した。

 スケルトンを50体も付けておいたから、洞窟を根城にしているゴブリン相手に苦戦することはないだろう。というか、たかがゴブリン相手に苦戦されては困る。

 僕はユウたちに、ゴブリンを根絶やしにすることを頼んだわけだから。


 ん?

 なんだかこんな風に考えていくと、僕って悪の権化みたいな思考回路だね。

 迷惑な近隣住民を殲滅してこいと、弟妹達に指示する悪のドラゴニュート長男。


 ま、別にいいか。

 どうせゴブリンは害獣だから、僕の良心はこれっぼっちも痛みはしない。

 むしろゴブリンの数がこの世界から少しでも減ると思えば、気分のいいことじゃないか。


「フンフーン。フフフーン」

 前世の魔王時代は、土地を荒らすだけの存在だったゴブリンが大嫌いだったので、つい嬉しくなって尻尾をフリフリし始めてしまう。


『レギュ兄楽しそうー』

 そんな僕の姿に、居残り組のドラドも笑顔を浮かべていた。




 そしてミカちゃんたちがいなくなった後は、住居の住みやすさを改善するため、リズとドラドが魔法を使いながら作業していく。


 ドラドとリズは、まず土魔法を使って地面の凹凸を平らにしていき、雨漏りがしている天井は、土を圧縮することで密度を上げ、雨漏りをしにくくする。

 その後でリズが重力魔法と土魔法を用いて、劣化黒曜石の板を作り出し、それをスケルトンたちに指示しながら天井や壁へと貼り付けていった。


 今までに自宅の拡張工事を何度もしているので、こういう作業はリズもドラドも既に手慣れている。


「力のないスケルトンたちですね。私たちだったら1人も持ち上げられるのに」

 なお劣化黒曜石の板はかなり重い。

 僕たちドラゴニュートなら、1人で板を持ち上げることができる。

 しかしスケルトンたちは、6人がかりでようやく板を1枚持ち上げられるという有様だった。


 単純に比較すると、僕たちドラゴニュートの力は、ゴブリンスケルトンの6倍以上あるわけだ。



 こんな風にリズとスケルトンたちが劣化黒曜石の板を張り付けていく作業をしている間、ドラドの方は劣化黒曜石を作ることができないので、洞窟内の凸凹を土魔法でさらに綺麗に整えて行った。



 なおこの2人はミカちゃんと違って、光球(ライト)の魔法を使えない。

 暗い場所でも目が見える暗視スキルもちのドラドはともかく、リズにとっては周囲を見通せない環境だ。

 ただし今回、暗い場所での明かりをちゃんと用意しておいた。


「グラビ鉱石から作った魔道具で、魔力を込めればライトと同じように光るから」

 そう言って僕は作業を開始する前に、リズとドラドに"ライトボール"と名付けた、明かり用の魔道具を渡しておいた。

 これは電気で光る電球とほぼ同じ道具だ。ただ違うのは、電気の代わりに魔力で光る電球(魔力で光るから"魔球"か?)という点だろう。


 魔道具の"電球(ライトボール)"を受け取り、そこに魔力を込めると光る様子を見て、リズは目をパチクリと驚かせ、ドラドは尻尾をフリフリする。


『わー、凄い。魔力を込めるだけで、ミカちゃんのライトみたいに光るー』

「さすがはレギュラス兄上です」

 ドラドは素直に喜び、ドラドは感心していた。



 もっともこれを作ったのは僕ではなく、デネブだ。

 旅に出る前にデネブが荷馬車の作成ついでに、グラビ鉱石の構造をいじって電球(ライトボール)を作っていた。


 グラビ鉱石は師匠作の人工鉱石で、内部の構造を弄ることで、性質を変えることができる。

 通常の状態だと内部に蓄えられた魔力を、常に一定量の重力魔法として出力するけど、出力される魔法の種類を重力から光魔法に切り替えたのが、ライトボールになる。


『そうです。私は凄いのです』

 感心している2人の妹たちを前に、僕の中にいるデネブが偉そうに威張ってそうだ。

 もっともあいつは超人見知りなので、直接他人から褒められたら、「いやー、人間!」とか叫んで、逃げ出すだろうけど。


 デネブは、ポンコツだからしかたない。



 とはいえ、そんなデネブが作ったライトボールのおかげで、リズとドラドの2人は暗い洞窟内を苦にすることなく、作業をしていくことができた。





 さて、2人の妹が洞窟の居住性を改善していってくれてるので、僕の方も作業をしていくとしよう。


 僕がバジリスクの解剖の為に使う部屋は、ゴブリン洞窟の奥まった一室。


 ここにバジリスクの死体2体を、スケルトンども運ばせて持ってこさせた。

 僕1人でも、片手に1体ずつ持って引きずれば運んでこれたけど、やはりこういう時に便利な労働力があるのはいいね。

 せっかくいる労働力たちだ。自宅ではマザーに潰されてしまうから、この機会に利用しておかない手はない。


 なお僕は光魔法の光球(ライト)を使えるので、リズたちの様にわざわざ"ライトボール"を持つ必要がなかった。


 解剖部屋までバジリスクを運び込むと、部屋の中に複数のライトを浮かべて、室内に影ができないようにする。


 あとはこいつらを解剖して、石化の仕組みについて調べていく事にしよう。



 バジリスクの1体は、リズのハルバートで疲れて顔面の損傷がひどい。

 ゴブリンがバジリスクに襲われて石化した際、石化したゴブリンはバジリスクの牙に噛まれた個所から、石化していった。


 ということは、石化の毒は牙から出ていると考えられる。


 なので、まずは頭が損傷していない方のバジリスクの口を開けて、口内の牙を抜いていく。

 人間の力だと歯を抜くのに器具が必要だろうけど、ドラゴニュートだとその必要がないので、手の力だけで簡単に抜いてしまえる。


「ふむっ、全ての歯から毒が出るわけじゃないんだな」

 歯を抜いてしげしげと確認すると、牙には毒を打ち込むための穴が開いているものと、そうでないものがあった。


 そして抜いた歯は、近くで待機しているゴブリンに渡す。

 土狼やバジリスクのスケルトンはゴブリンより戦闘力では上だけど、手先の器用さでは人間に近い姿をしたゴブリンの方がはるかに高い。

 助手として待機させておくには、そこそこ便利だ。



 それから歯を抜いた口内を、再び観察。

 歯茎の奥に石化の毒を供給していると思しき管がある。


 この管をたどって行けば、石化の毒が溜まっている器官に辿り着けるだろう。

 なので今度は劣化黒曜石製のナイフを取り出して、管に沿ってバジリスクの肉を割いていく。


 裂いていくと大量に血が出てくるけれど、それは水魔法を使って水を作り出して、洗浄していく。


「フーンフーン、フンフンー」

 ちょっとした解剖作業になぜだか鼻歌がこぼれ出して、僕の尻尾も若干ピクリピピクリと動く。


 あれ?

 僕って解剖が趣味なマッドじゃないけど、なんだかテンションが少し上がっちゃうなー。


 なんて思っている間に、バジリスクの鼻の奥に、石化の毒液が大量に詰まっている器官を発見した。


「これが石化毒の溜まっている袋。んー、"石化袋"とでも名付けておこうか。

 とりあえず液の効果を確かめたいから……そういえばここに生きてるゴブリンを何体か連れてきてたな」

 僕たちドラゴニュートは、このバジリスクを今までに何十匹も食べてる。当然そこには石化袋も含まれていただろうけど、今までに誰1人として石化したことがなかった。

 毒が弱いせいで石化しないのか、はたまたドラゴニュートの身体能力が高すぎるせいで、多少の毒を受け付けないだけなのか……。


 今回生け捕りにしたゴブリンは家畜化の実験に使うつもりだけど、1体ぐらいなら犠牲にしていいだろう。

 外に出れば、ゴブリンなんてすぐに出てくる奴らだし。



 というわけで、僕は石化の実験をするために、石化袋をバジリスクの体から切り離していく。

 だけど、

「あちゃー。破けちゃった」

 慎重にやっていたつもりだけど、劣化黒曜石のナイフは切れ味が悪く、手を滑らせた拍子にナイフが石化袋を傷つけてしまった。それと同時に、石化の毒がダバッと音を立てて周囲に漏れ出してしまう。

 今から手ですくうのも難しく、これはどうしようもない。


 ただ、それでも分かることがある。

「バジリスクには石化の毒が利かないようだな。まあ、死体は石化しないだけの可能性もあるけど……おい、そこのスケルトン」

 ――ギギッ

 室内にいるゴブリンスケルトンに、近くに来るように命令。


「お前の体につけたらどうなるんだろうな?」

 試しに、死んで既に骨だけになっているスケルトンの体に、石化の毒をつけてみる。

 袋を破ってしまった際、僕の手に付着していた石化毒だ。


 僕の体が石化しないのは既に分かっていることだけど、どうやらスケルトンに対しても無効のよう。


「死体に効果がない?骨には効果がない?生きたゴブリンで実験して確認するか」

 考えるだけでは分からないので、実証するために生きたゴブリンを監禁している部屋へ移動する。

 幸い石化毒に関しては、顔面が損傷しているもう1体のバジリスクから取れたので、実験に使う量を確保することができた。




『あ、レギュ兄。凄い血塗れで汚いよ』

 ところで部屋を移動する途中、拠点を改修しているドラドに会ってしまった。

 僕はバジリスクを解剖した際、返り血とか細かな肉片が、顔や体に飛び散っていた。


「今ちょっと実験中でね。あとでちゃんと綺麗にしておくよ」

『ミカちゃんたちが汚れたままだと兄さんすぐに怒るのに、いけないのー』

「ハハハッ」

 なんて会話をしてすれ違った。



 ちょっとだけマッドサイエンティストな兄とその妹の会話ですが何か?

 別にやましいことなんてしてないし。




 で、生きているゴブリンを監禁している部屋に到着。

 部屋の前はスケルトンたちに見張らせているので、生きたゴブリンはここから逃げ出すことができない。


 試しにゴブリンの1体に、石化の毒を塗り付けてみる。

 すると効果てき面、

「ギャー」

 と叫びつつ、毒を塗り付けた肌が石化していった。


 石化のペースはそこまで早くないけれど、毒を塗った場所から徐々に広がって、肌を覆っていく。

 しかし全身を石化させるほどの効果はないようだ。


 この後色々試してみて、ゴブリン1体を完全に石化させたりした。

 その後石になった体内を、金属ですら切り裂くウォーター・ジェットの魔法を使って切り裂いてみる。


「骨までは石化しない。でも、血や臓器は完全に石になるんだな。フムフム、これは面白い」

 なんて具合に、僕は実験を進めていった。



 久々に知的好奇心を探求できる時間が取れて、僕としてはちょっとした楽しい時間だった。

 それと実験の後は、ちゃんと水魔法を使って全身についていた血肉を流しておいた。


 やっぱり文明人たるもの、血塗れの格好でその辺を徘徊して回るのは不味いよね。


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