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異世界転生したら七つ子の竜人(ドラゴニュート)兄弟だった  作者: エディ
第3章 第2拠点と不死者(アンデット)
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135 フロートリアカーレース

「うおおおっ、競争じゃー!」

 浮遊荷車(フロートリアカー)の取っ手をもって、尻尾を超フリフリしながら全力疾走をしているミカちゃん。

 その後には、ミカちゃんの弟子であるリズとユウが引っ張るフロートリアカーが続いていた。


「ミカちゃん、走る速度では負けません」

 先頭を行くミカちゃんに対して、リズもは尻尾をピンとたてて全力疾走。


「待ってくださいよ、ミカちゃん」

 一方最後尾を行くユウは、子供の様に走っていく2人の後を、遅れない速度でついていく。


 相変わらず、ユウの保護者ぶりは大したものだ。

 生後1年ちょいのリズはともかく、中身がおっさんでも精神年齢が子供のミカちゃんの相手を、ちゃんとしてくれている。


「ミカちゃん頑張ってくださいなー」

「フオオオーーーッ」

 なおミカちゃんが引っ張っているリアカーにはフレイアが乗っていて、応援されたミカちゃんは鼻息を滅茶苦茶荒くして興奮していた。

 まるでスペインの闘牛の前で、赤い布をヒラヒラさせているような興奮レベルだ。そのまま飛び跳ねて、どこかへ飛んで行ってしまうのではないかという勢い。

 実際ミカちゃんの背中についている羽は、ただの飾りではなく本当に飛べる羽なので、そのままどこかに飛んで行かれても困るけど。


「ムムムッ、さすがはミカちゃん。強敵です」

 フレイアへの欲心でパワーアップしたミカちゃんの後を追うリズは、悔しそうにしている。

 リズの引っ張るリアカーが、ミカちゃんに対して明らかに遅れ始める。


「ユウ兄さん、ファイトー。もっと早く走らないとおいてかれちゃうよー」

 そして最後尾を行くユウのリアカーの荷台に乗っているレオンが、ユウを応援していた。


「じゃあ、もう少し頑張ろうかな」

 レオンに応援されて、もう少し早く走り出すユウ。

 3人の中では一番最後尾にいるけど、実は体力を温存していて、まだまだ早く走れるようだ。


 とはいえ、ミカちゃんのリアカーを追い抜くことはしないだろう。

 追い抜いてしまったら、ミカちゃんが後でなんだかんだとごねて煩くするだろうから。




 ところで3台のリアカーが競争をしているけど、その傍ではドラゴン形態のドラドも、ドシンドンシと地響きを立てながら全力疾走している。


『いいなー、ドラドもリアカーを引っ張りたい』

 と、リアカーを引っ張っている3人を羨ましそうに見ていた。


 ドラゴン体型のドラドだと、リアカーの取っ手を握れないので、リアカーをもって走れない。

 僕たちは今回狩りの旅に出ているので、危険のある旅の間は、ドラドはドラゴニュート形態禁止のせいで、リアカーを引けずにいた。


「よしよし、今回の旅が終わって家に帰ったら、好きなだけひかせてやるからな」

『……はーい』

 残念そうにしているドラドに僕は言う。

 ドラドは素直に返事をしているけれど、それでもこらえきれない残念さが声に滲んでいた。



 とまあ、こんな感じで旅の1日目は、フロートリアカーレース状態になってしまった。


 なお、今は自宅から西側の平原に向かって進んでいる。

 家の周囲の荒野地帯を超えると、草がポツポツと生えたステップ気候地帯に入る。

 この辺りになると土狼や砂蜥蜴が出没する領域になるけど、今回は僕たちが勢いよく走っていたせいか、土狼は出てこなかった。


 そして途中、砂蜥蜴が砂の中に隠れていたけど、リアカーを引けずにフラストレーションを溜めていたドラドの体当たりで、ノックアウトされていた。


 やはり子供とはいえドラドは、外見がドラゴンだ。

 たかが蜥蜴ごときでは、ドラゴンの体当たりをまともに受け止めることができず、あっさり吹飛ばされていた。


 地球で言うと、トラックが人間に衝突するような感じだね。

 ドラド相手に、砂蜥蜴には最初から勝ち目なんてなかった。



「はーい、皆競争はここまで。砂蜥蜴を仕留めたから、これをリアカーに乗せるよ」

 ここで倒した砂蜥蜴を食べるのもいいけど、せっかくリアカーもあるので、今回はリアカーに乗せて運んでいく事にした。


 道中で仕留めた獲物はリアカーに乗せて、夜にまとめて食べればいいだろう




 なお自宅周辺と違って、この辺りまで来ればモンスターが出没する領域だ。

 さすがに無警戒で全力疾走していると危ないので、フロートリアカーレースはここで終了。


「クハハ、やはり俺のスピードをもってすれば断トツでトップだよな」

 レース終了と共に、最前列を走っていたミカちゃんがドヤ顔になる。


「ムウッ、悔しいです」

「カカカ、まだまだ弟子に負けはせぬぞ。フェッフェッフェッフェッ」

 リズ相手に自慢しまくって、ものすごく大人げないミカちゃん。

 中身がおっさんでも、精神年齢は相変わらず見た目通りの幼児だ。ただし笑い方は気持ち悪い。


「ミカちゃんに勝つには、もっと頑張らないとね」

 悔しそうにしているリズに、ユウは優しげにそう言った。


「ムキー。ビリのくせして、ユウのその余裕ぶった態度が気に入らん。天誅ー!」

「ヒギャー」

 ミカちゃんの逆鱗に触れて、ユウが頭を齧られてしまった。


 とはいえアンパンで顔ができたどこかの世界のヒーローと違って、ユウはドラゴニュート。ミカちゃんの歯に噛みつかれとところで、ノーダメージだ。

 それでも痛いことに、変わりはないだろうけど。




 なお、レースが終わった後でミカちゃんはぽつりとつぶやく。

「しかし異世界召喚物の定番と言えば、馬車にサスペンションを施して、揺れを抑えるのが定番なのに、このリアカーは実にけしからん!」

 異世界物の小説と、現実を混同してないか?


 僕は少しだけ目を細めて、ミカちゃんの方を見る。


「違う、違うぞ、レギュレギュ。俺は小説なんかと混同していない。ただ俺は、このリアカーに対して物凄い不満がある!」

「……とりあえず、聞こうか?」

 小説どうこうは置いておいて、一体何が不満なんだろうね。


「いいか、このリアカーは空中に浮いている。そのせいでどれだけ揺らしても、積み荷が全く揺れない」

「荷崩れしないからいい事でしょう?」

「シャラープ。揺れないんだよ。どれだけリアカーを派手に動かしても、荷台に乗ってるフレイアの乳が振動で揺れないんだよ!」

「……」

「ヒゲブシィッー」


 このおっさんとまともに話をした僕が愚かだった。

 空想と現実の混同でなく、ただのエロおっさんだったことを失念していた僕が愚かだった。


「やめてー、頭が潰れるー」

「まだしゃべれるってことは、余裕があるみたいだね」

「ヒゲーッ」

 とりあえず肉体言語でミカちゃんを調教しておいた。


 もちろんミカちゃんなので、この効果は数日も持たないだろうけど。


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