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118 山賊以下

 広場にいるゴブリンを倒し終えた後の事。


「……」

「フッ、小さいですわね」

 大量に死んだゴブリンの中に、胸の膨らみがあるゴブリンがいた。

 そのゴブリンを無言でガン見しているミカちゃんと、胸の大きさが貧弱なことに勝ち誇っているフレイア。


「ふっ、所詮は獣。いくら胸があろうと、小さい奴に用などない」

 散々ガン見しておいて、ミカちゃんが言った言葉がそれだ。


 でも、その後もミカちゃんはチラチラとゴブリンに視線が行き続けて、最終的には、

 ――モミモミ

 と揉んでいた。


「違う、違うんだ。こんな大きさじゃ意味がない、無意味すぎる。そうだと理解している。なのに乳成分が不足しすぎてて、体が勝手に動いちまう」

 今世のミカちゃんが今までに揉んだ巨乳は、フレイアと狩りの旅で遭遇したモコ牛のみ。

 よほど欲求不満を抱えまくっているのか、ゴブリンの胸まで揉まずにいられなかったようだ。


 相変わらずこのおっさんの頭の中は、こんなことしか詰まってないようだ。

 変態だから仕方ない。




「見て見て、このゴブリンお腹が大きい」

「うっ、これってもしかして妊娠してるのか」

 一方でレオンとユウが、お腹の大きなゴブリンを発見。


「お腹の中を見てみましょうか」

 そして躊躇いもなくリズが、ゴブリンのお腹を裂いて中身を確認した。

 中には動かなくなったゴブリンの胎児が、8体入っていた。


「ううっ、無理。もう肉を食べるの、無理」

 ユウがなんか言ってるけど、僕らの環境では肉以外食べるものがないので、飢えたら勝手に肉を食べるようになるだろう。

 ユウの繊細さに、いちいち付き合うつもりはないので無視。


「ユウ兄さん、大丈夫?元気出して」

 そんなユウの背中を、レオンが擦っていた。

 暢気だけれど、人のことを気遣える弟のようだ。



 ――モグモグ

「ふむ、これはまた珍味ですね。これまでに食べたどんなお肉よりも柔らかくて、口に入れただけで、まるで溶けてしまうような感触です」

 一方リズは、食べていた。

 お腹から出てきた胎児を。


 全く躊躇のない行動だけど、相変わらずグルメリポータトはしっかりとしている。


『うーん、ドラドはもう少し硬いお肉の方がいいなー』

 その横では、ドラゴニュート状態のドラドも胎児を食べていた。


 僕らって肉食動物だから、物凄く精神構造がタフだね。

 前回は子供を躊躇なく食べていたけど、今度は胎児だよ。精神ワイヤーロープっていうか、人として大切なものが抜けてないか?

 まあ僕らは半分が人間で、もう半分がモンスターのドラゴンだけど。




 この後は大量のゴブリンを集めて、生で食べたり、火で炙ったり、馬刺しならぬゴブリン刺しにしてみたり。

 トルコのシシカバブを真似て、ゴブリン一体を丸々串刺しにして、それを回しながら火で炙っていったりもした。


 回している間に、重々と肉汁が垂れて香ばしい匂いが広がる。できればもっと油のあるモンスターの方がいいけれど、今回はゴブリンしかいないから仕方ない。

 そして表面が焼きあがったら、焼けた部分をナイフで削いで落としていく。


 このゴブリンシシカバブを食べた感想は、香辛料が凄く欲くなったということだ。

 あと野菜の付け合わせなんかもあれば、最高だった。


 コショウやトウガラシが、この世界のどこかにあればいいね。

 そうしたら、おいしい肉料理を食べられる。



 なお、これらの作業ではゴブリンスケルトン軍団が大活躍した。

 切ったり、千切ったり、運んだり。ゴブリンシシカバブを焼いてる串を回す作業も、スケルトンたちにさせた。



 単純労働をさせるなら、死霊術はとてつもなく優れた魔法だね。


 食後には毎度恒例のスケルトン軍団の生産を行い、軍団の総数は240体にまで増えた。


 これだけいれば、単純労働力としてはかなりの力を発揮しそうだ。

 問題は、このスケルトンたちにどういう労働をさせるかが問題だけど、今のところ思いつかないのが残念だ。

 まあ慌てる必要はない。

 これから僕たちの活動領域が広がって行けば、このスケルトンたちにも、とても楽しい楽しい労働を与えることができるようになるだろう。


「フッフッフッ」

「ああ、兄さんが黒い笑いをしている……」

「レギュラスお兄様、素敵な笑顔」

 笑う僕に、ユウの表情が引きつり、対してフレイアは目を輝かせていた。




 ところで、

「なあ、ゴブリンの住処を制圧したけど、財宝とかないのか?」

 食事を終えた後、ゴブリン洞窟内を歩いて探検していたミカちゃんが戻ってきた。


「光物、欲しいです!」

 フレイアも、迫力のある表情で言う。


 ……なんとなくだが、フレイアの将来がろくな女にならない気がするのは、僕の気のせいだろうか?

 どうか錯覚であってほしい。

 悪女フレイアとか、僕は嫌だよ。


 それはともかくとして、

「ミカちゃん、何度も言ってるけどゲームじゃないから、ゴブリンが財宝なんか持ってるわけないって。

 大体この辺りには文明がないから、ゴブリンがまともなものをため込んでるはずがないし」

「ちっ、しけた奴らだな」

 ミカちゃん、とんでもない暴言を吐いてる。


 というかその台詞って、

「……なんだか僕たちって、悪役になってませんか。山賊みたいに……」

「山賊なら皆殺しはしても、殺した相手を食べはしないよ。あとスケルトン化もしないね」

「僕たちって、もしかして山賊以下なのか……」

 ユウが絶句してるけど、何を言ってるんだか。

 ユウもちゃんとゴブリンを食べてるし、僕と一緒に死体をスケルトンにしていったのもユウだ。


 まあ、ユウの作るスケルトンは術者の命令を聞かず、勝手に動き回るので、僕が教育を施してあげないといけないけど。

 もちろん僕の教育っていうのは、

「365日、24時間休むことなく働けるよ。つまり、8760時間。分にすれば535600分。1分1秒も無駄にすることなく、動き続けるってまさに夢のようだね。

 骨の摩耗はあっても、空腹を感じないし、働き過ぎで病気になることもない。

 クク、クハハハ」


 教育を施した後は、スケルトンどもは完全に意識なき人形と化して、動くことをやめて、突っ立つだけになった。


 うむうむ、素晴らしいぞ、労働人形諸君。




 ただ労働力としては素晴らしいスケルトンだけど、一つだけ問題がある。

「マザーって僕たち以外の生き物がいたら、いつも変なの扱いして潰してるよね。前回のスケルトン軍団は、マザーに全部潰されちゃったし」

 マザーがたった2回後ろ足で踏みつけただけで、前回作りだしたスケルトン軍団は壊滅してしまった。


 貴重な労働力を、またしてもマザーに変なもの扱いで壊されては大変だ。



「……とりあえずスケルトンはこの洞窟に待機させておいて、次来た時に新しい命令を出せばいいか」

 これが僕の結論になる。

 マザーに潰されてしまうなら、マザーの知らない場所においておけばいい。


「てかさ、スケルトンどもを待機させておくなら、この洞窟を俺たちの第2拠点か別荘にしようぜ」

 と、ミカちゃんが提案してきた。


「わー、別荘ってすごいねー」

 と、レオンが感心した声。


「私はこの洞窟のジメジメした湿気が苦手ですわ」

 一方フレイアは、洞窟の中が嫌なようだ。


「次に狩りに来た時、ここを拠点にするのはどうでしょう」

 リズが提案する。


『別荘って、お金持ちじゃないと住めないんだよね』

 ユウの現代日本式の教育もあって、ドラドは尻尾をフリフリ興奮していた。



 というわけで、ゴブリンの洞窟は僕たちの自宅に次ぐ、第2拠点とすることにした。


 この日は洞窟の中で一夜を過ごし、翌日には僕たちを迎えに来たマザーと共に、自宅へと帰ることにした。

 もちろんマザーにスケルトンどもの事はばれないよう、洞窟内に隠しておいた。


「とりあえずお前たちはマザーに見つからないようにしておけ、一撃で壊されてしまうからな。

 あと僕たちがいない間にグラビ鉱石の採集と、この洞窟内に他の生き物が入り込まないように警備をしておくように」

 仕事も与えたので、これからは第2拠点でできることも増えていきそうだ。


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