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117 ゴブリンの住処攻略戦、その2

「メシー」

 全く躊躇がなかった。


 ゴブリンの住処に侵入した僕たちだけど、洞窟のある一室で子供のゴブリンたちを見つけた。


 それに襲い懸るミカちゃん。

 あとはいつもの血濡れた展開が、目の前で繰り広げられる。


 ミカちゃんが野生児なのは生まれた時から分かっていたことだけど、いくらモンスター相手でも子供を平気で斬殺するとか、かなり頭がいっちゃってる。


「モグモグ、ゴブリンにしては信じられないほど肉が柔らかくて食べやすいですね。ただ、ゴブリン特有の臭みが少々あるのが気になるところです」

「あら、本当。この食感はなかなか癖になりそう」

「美味しいねー」

『ドラドにもちょうだい』


 ……OK。

 うちの兄弟にとってゴブリンは大人でも子供でも、どっちもただの肉扱い。食べ物にしか見えてなかったようだ。

 みんな仲良く子供ゴブリンを食べ始めていた。


「僕にもひとつちょうだい」

 てなわけで、僕も子供ゴブリンを1体いただいておくことにした。


「あ、本当だ。子供のゴブリンって大人よりかなりおいしいね」

 骨も大人の様に出来上がってないので、柔らかくて食べやすい。

 硬い骨は硬い骨でおいしいけれど、あれはどちらかというとおやつ感覚で食べるもの。それに対して子供ゴブリンの骨は、肉と一緒に食べるとちょうどいい食感がある。


「ううっ、さすがにこれは酷すぎる。これじゃあ、本当にただのモンスター。獣だよ……」

「そんなことよりユウも食べなよ。おいしいよ」

 なんかユウが倫理観を持ちだしてきたけど、そんなユウに僕は子供ゴブリンを渡しておいた。


「……あ、おいしい」

 しばらく沈黙していたユウだけど、食べたらその味に負けてしまった。


「もう一匹食べたくなりますね」

 さっきまでのご高尚なセリフはどこへやら。次の子供ゴブリンに手を出していた。


「シッシッ、これは俺のだー!」

 だけど次のゴブリンに手を出そうとしたユウの手を、ミカちゃんが叩き落とした。

 さすがはミカちゃん、相変わらず兄弟の中で随一の意地汚さをしている。





 そんなちょっとした食事タイムを挟みつつ、再びゴブリン洞窟の探索を再開だ。


 と言っても、やることはこれまでと全く変わりがなく、ミカちゃんがほとんどのゴブリンを瞬殺。

 たまに後ろから出てくるゴブリンがいたけれど、そっちはユウが戦うまでもなく、僕が風魔法を使って倒しておいた。

 ウインドカッター一発で、複数のゴブリンがバタバタと倒れていくけど、威力を上げ過ぎると、洞窟の壁まで破壊しかねない。

 それが原因で洞窟が崩落。生き埋めにはなりたくないので、もっと加減して撃たないといけないね。





 そんなこんなで、200体以上のゴブリンを倒していくと、僕たちは天井までの高さが10メートルはある、広大な広場へたどり着いた。

 ゴブリン洞窟の、中央部だろう。


「ガー」

「ギャー」

 そこではゴブリンたちが、予期せぬ侵入者である僕たちに向かって、威嚇の声を上げていた。


 ――ビュン

「風が強いですね」

「リズ、それはウインドカッターだよ」


 ゴブリンたちの中には、魔法を使えるゴブリンメイジもいたけど、相変わらずゴブリンメイジの放つ風魔法は非力で、ドラゴニュートの僕たちにダメージを与えることができない。


「グギー」

 と思っていたら、ドラドの護衛用に連れてきていたゴブリンスケルトンが1体、ウインドカッターを受けて地面にずっこけていた。


「……役に立たないな。こいつ」

 攻撃力には乏しいウインドカッターだけど、スケルトンをこかすことはできるみたいだ。



 その後はいつもの例にもれずゴブリンたちは投石をしてくる。

 さらにゴブリンメイジが、岩投げ(ストーン・ブラスト)も使ってきた。

 どちらの攻撃も僕たちにはダメージにならないのだけれど、何しろ広場の中にはゴブリンが大量にいる。

 何百という石が飛んでくるせいで、僕たちでもさすがに前進できなくなってしまった。


 飛んでくる石が多く、目に当たると危ないので、顔面を腕で庇わないといけない。


「うひゃー、近づけないとさすがに手も足も出ないぞ!」

「レギュラスお兄様、ここは私の魔法で全滅させましょうか?」

「フレイア、その時は酸欠になって僕たちも全滅だよ」

 ミカちゃんでも、さすがにどうにもできない様子。

 そして石が飛び交ってくる中、フレイアが危険な提案をしてきたので、僕はそれを即却下しておいた。



 さて、僕たちが手も足も出ない状況だけど、別に命の危険というレベルではない。

 僕単体でこの状況を解決する手段はいくらでもあるけど、僕でなくても今の状況は打開可能だ。


 例えば重力魔法を操れるリズなら、瞑想をしているだけで、自分とその周囲に重力浮遊(フロート)の効果を及ぼすことができる。

 フロートの範囲内では、全ての物が浮かび上がるから、飛んでくる石も空中に浮かんで留まるようになる。それで無力化することが可能だ。


 あるいはドラドは土属性の魔法と相性がいいので、飛んでくる石に対して干渉して、飛んでいく方向をずらす方法もある。

 ただし現在ドラドはドラゴニュート形態で、魔法を使うと元の姿に戻ってしまうので、魔法を使えない。


 ここでドラドが元の大きさに戻ると、僕たち全員が壁にめり込んでしまい、ゴブリンの投石とは比べ物にならない攻撃を受けてしまうことになる。

 さすがにそれは簡便だ。



 とりあえず今の状況を打開するためには、

「いいか、皆、目を瞑ってろ」

 僕が言うより早く、ミカちゃんが指示してきた。


 指示と同時に、それまで明かり係を担当していたミカちゃんのライト・ブレス(笑)と、光魔法のライトが消える。

 僕はミカちゃんのやりたいことがすぐに分かったので、僕がつけていたライトもすぐに消した。


 明かりが失われ、洞窟の中が闇に支配される。


「俺をいつまでも落ちこぼれ魔法使い扱いするなよ!」

 ミカちゃんが吠えると、広場の中に強烈な光が発生して、辺り一帯を白い光で満たした。


 ただのライトだ。

 ただし大量に魔力を注ぎ込むことで、魔法の威力を何倍、何十倍にも増幅させた、強烈なライト。

 暗闇の中に、昼より明るい光が生まれた瞬間、ゴブリンたちは視力を失って混乱した。

 もはや、投石どころではない。


「よっしゃー、全員突撃だー!」

 ゴブリンの視力を奪ったミカちゃんは、剣をゴブリンたちに向けて、兄弟に盛大な命令を下した。


「さあ、皆行こうか」

 僕も兄弟たちにそう言って、ゴブリンたちを掃討するように指示した。



 その後繰り広げられた光景は、いつものものだ。


 邪悪なドラゴニュートの兄弟たちが、非力で脆弱なゴブリンたちを一方的に駆逐していく光景。

 一言でいえば、グロシーン。


 僕たちにとっては狩りだけど、見る視点を変えれば強大で邪悪な肉食動物が、か弱い動物に一方的に襲い掛かって、殺戮している光景になる。


 それからはゴブリンたちが阿鼻叫喚の悲鳴を上げ、洞窟の中を悲鳴が響き渡り続けた。しかしそれも10分とたたず、全て絶えた。



「300匹はいるかな」

 広場にいたゴブリンたちを倒し終えた後、その数を見て僕が言った言葉はそれだけ。



 うむ、今回は大量のゴブリンスケルトンも作れるぞ。


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