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103 今日も平和に訓練を

「ガハハハ、走れ走れ、死ぬまで走れー」

「「ヒエエー」」

 ミカちゃんが昭和のスポコン熱血教師と化してしまった。

 本日も鈍器剣(ブルーメタルタートルソード)を振り回して、ユウとレオンの2人を追いかけ回す。


 でも教師と言うより、どちらかと言うと年下の手下をいじめるガキ大将の構図だ。

 そんな光景は昭和で終わったと思う。もっとも平成の世の中だと、陰険な苛めが多い気がする。

 ストーレートに表現しているので、ミカちゃんの苛めに陰険さはゼロだ……多分。


 もっとも、苛められている側のユウとレオンは大変だろう。

 これも強くなるためだから頑張りなさい。

 少なくとも剣技が成長しなくても、ミカちゃんに叩かれまくって、さらに頑丈になるはずだ。


 なお、リズに関しては今日も黙々と走っていて、弟2人の慌てようとは驚くほど対照的だった。

 自主的に取り組んでいるので、凄く真面目だ。



 この基礎練習の後に、鈍器剣を使っての素振りと防御の型を中心とした反復練習をユウとレオンは行っていく。

 リズもその傍らで槍を振るいながら、独学で槍の訓練中だ。


 なお師匠であるミカちゃんは、容赦なくユウとレオンのダメなところを鈍器剣で小突いたりしながら指摘している。


「レオン、腕だけで剣を振ろうとするな。もっと足を使え、足を!」

「はーい」

「気の抜けた返事をするな。はいだ!」

「ヒギャー」

 さっそくミカちゃんが噛みつく。

 僕が肉体言語でミカちゃんを調教したように、ミカちゃんがレオンにしていることも大体同じだ。


 もっともミカちゃんの場合は、イケメン野郎滅びちまえと言う、無言の呪詛が含まれた噛みつき攻撃だ。

 ミカちゃんって光の属性竜の性質持っているけど、性格の方は絶対に闇とか暗黒属性持ちだよね。

 ユウのヴァンパイアや闇の属性竜としての性質を、ミカちゃんが持っていないのが不思議だ。

 てか、この2人は持ってる性質が明らかに逆だよね。



「ユウ、腰はしっかりと伸ばせ!いいか腰は体の中心だぞ。ここがへたってたら、相手に力で押された時に簡単に負けちまう。

 そして夜の相手をする時にも、腰の力がなければ……ヒギャー」

「ミカちゃん、それ以上教育に悪い言葉を口にしたら、地面に埋めるよ?」

「嫌だ、やめて、地面は嫌だ……」


 ただでさえ兄弟に悪影響を与えているんだから、本当に困ったミカちゃんだ。

 ちょっと脅すと、ミカちゃんはブルリとを震え上がった。


「……」

 そんな僕とミカちゃんのやり取りに、ユウが沈黙してしまう。


「ウガー、ユウ。お前がへっぴり腰なせいで、俺が殴られちまったじゃえねかー!」

「ウ、ウワー!とばっちりだー」

「やかましいわ、このボケー!」

 僕には勝てないと理解しているミカちゃんは、そのまま弱い者いじめをするように、ユウへと鬱憤をぶつけだした。


 うんうん、この世は弱肉強食。

 強い相手には逆らわないで、弱い相手をいじめるのはよくある光景だよね。

 それが嫌なら、自分が相手より強くなるしかない。



「武器を振る時は足腰が基本。なるほど、腕だけでなく体全体を使うのですね」

 レオンとユウがちょっと悲惨な目に遭っている間、リズは2人のダメなところから教訓を得ていたようだ。

 さらに槍を振るい、反復訓練をして体に動きを身につけていく。



 リズ以外が相変わらず賑やかだけど、こんな訓練が、この4人の日課になっている。



「レギュラスお兄様。腰を鍛えれば、夜の……」

「フレイア、まだ早すぎるから。お前にはまだ早すぎるから、それ以上はダメだ!」

「ムウッ」

 さっきの言葉を聞いていたフレイア。

 ぷくりと頬を膨らませて、僕を見てくる。


「頼むから、もっと年相応の女の子でいてくれよ」

 そう僕はぼやかずにいられない。

 見た目は中高生並みになっていても、中身は1歳児なんだから、年齢並の頭をしていればいいのに。


 レオンなんて相変わらず超暢気なのに、それに比べて女の子のフレイアは内面の成長が早すぎる。



『バリバリッ』

 なお、そんな僕たちの傍で、ドラドがおやつの骨を齧っていた。


『今日も平和だねー』

 ユウとレオンだけ例外だろうが、今日も今日でのんびりとした日が過ぎていく。




「イケメン死すべし、鼻血でも出してやがれー」

 なんて思ってたら、ミカちゃんがユウの顎にアッパーをかましていた。

 ユウの体が空中に浮かび上がってから、地面に落ちる。

 思わず『昇竜拳』と言いたくなる、体全体に捻りを加えた見事なアッパーだった。


 もっともあの程度なら、ドラゴニュートにはちょっとダメージが入るだけで終わるので、何も問題ない。


「ミカちゃん、僕が何をしたって言うんですか……」

「やかましかー、口答えせんで反復練習の続きじゃー」

「理不尽すぎる……」


 なにが原因か知らないが、ミカちゃんの癇に障ることがあったらしい。



「嫉妬の神が俺に命令するんだよ。イケメンどもを血祭に上げろって!」

 充血した目を見開いているミカちゃん。

 見た目は幼女なのに、鬼気迫る顔になっていて怖い。


 特にその顔以上に、ミカちゃんの頭の中が怖い。


「ここでいきなり嫉妬とか、ミカちゃんってマジで訳分からない……」

 でも訓練のことはミカちゃんに一任しているので、僕はそっとミカちゃんたちから視線を逸らした。


「ああ、今日も平和だ」

「兄さん、その台詞は僕たちの方を見て行ってください」


 ユウが恨めしい声をしていたけど、そんなの知らん。


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