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プロローグ

「おんぎゃー」

 と、生まれたばかりの産声を上げたのは僕。


 周囲を見回せば木材でがんじがらめに囲まれた場所にいた。


「えーと、これはもしかして鳥の巣……なのかな?」

 それにしては木材が大きすぎる。生まれたばかりの僕がどの程度のサイズか分からないけど、僕の体より、巣に使われている木の一本一本が大きいねー。


 うわー、ないわー。

 絶対に今回の転生は人間に生まれてないぞー。


 ちなみに、僕の足元には白い卵の殻が散乱している。

 これは、さっきまで僕が入っていた卵の殻だから仕方ないね。


 僕は、たった今卵から生まれてきたばかりだよ。



 ……

 ……

 ……


 えーと、卵から生まれてきたってことは、爬虫類?

 両生類も確か卵から生まれたよね。


 ただし、生まれた場所は鳥の巣っぽいので、もしかすれば鳥類という可能性もある。



「フ、フフフ……」

 人類以外に生まれるのは、正直勘弁してほしい。




 あ、ちなみに生まれた瞬間からこんなことを考え始めてる僕だけど、前世は魔族として生まれて、魔王なって一大陸を支配して君臨してたよ。

「フハハハハ、愚かな人間どもに死の鉄槌をー!」

 なんて感じで、ノリノリで玉座にふんぞり返って偉そうにしていた……なんてことはないよ。


 だって、前世は魔王だけど、前々世は日本人だったからね。

 魔王だからって、つい調子に乗って人間根絶しちゃうのはまずいよねー。


 まあ元日本人らしく、支配地域にいた人間に早朝から深夜まで、休み時間なしのブラック奴隷労働はさせてたけどさー。


 ハハハー。



 で、前世が魔王、前々世が日本人だった僕。

 一応これまでに何回も記憶を持ったまま、異世界転生をしているわけ。

 日本人以前にも、いろいろな異世界で生まれ育ち、そして死んで来た。

 そんなわけで、僕は死んだ後に異世界転生をして、再び生まれることに慣れている。


 前世の魔王だった僕は、寿命を迎えてしまって、残念にも死んでしまった。

 魔王なのに二千年しか生きられなかったとか、ちょっと短くない?魔王なら、もっと長生きしてもいいじゃない!




 さて、それはともかく、今生での僕はどんな生き物に生まれ変わってしまったのだろう?


 一度蜘蛛に生まれ変わってしまったことがあるけれど、生まれた瞬間に、兄弟と思しき連中がいきなり共食いを始める、阿鼻叫喚の地獄に遭遇したこともある。

 何度も転生しているけど、あの時が一番ひどかった。


 多分、生後1分持ちこたえられずに、僕は兄弟の胃袋の中に押し込まれてしまった。

 ハハハー、もうあんな転生だけはこりごりだわー。

 ていうか、あれは絶対に転生でなくただの夢。そう、悪い夢を見ただけに違いない。



 と、軽く現実逃避をして、僕は今生での姿を確認するため、自分の目の前に恐る恐る両手を持ってくる。


 幸い、腕は2本だけ。

 蜘蛛みたいに六本足じゃなくてよかった。


 肌の色は肌色で、指の数は5本。

 3本しかないとか、6本以上生えてなくてよかったー。


 普通に人間の手だねー。


 うおおおっー、よっしゃー。

 人間であることを、普通とか、よかったと言うあたり、僕の今までの転生人生にはいろいろと波乱があったわけだよ。

 ふうっ、人間最高。


 ――ビンタ、ビタタンッ


 なんて少し気分が良くなったら、なぜか変な音が背後からした。




 あのさ、少しだけ気になることがあるんだけど、触覚というか、痛覚と言うか、まあそう言う感覚があるんだよね。

 人間だったら決してしないはずの場所から……


 ――ビタッ


 さっきから思うんだけど、床が固いなー。

 固いって感触がするんだよねー。

 足の裏とか、尻以外の場所から感じ取れてしまう。



 僕は恐る恐る首を後ろに振り向かせる。


 生まれたばかりだけど、結構首が後ろに動くなー。


 てかさ、人間の赤ちゃんなら生まれたばかりは首が座ってなく、自力で動かせないはず。

 僕は生まれたばかりなのに、随分頑健な首をしてるようだ。

 まあ、さすがに頭が180度動いて、真後ろを完全に見ることができるって程、首が動いたりしないけど。


 ――ピタッ!


 そんなことを考えつつ、後ろを振り向いた僕の視線に、天へ向かって垂直に伸びる尻尾が見えた。

 緑色の鱗に覆われている、蜥蜴っぽい尻尾。

 蜥蜴と言うより、むしろドラゴンっぽい?


「……えーと、左向け左」


 とりあえず確認の為に左向けと念じてみると、尻尾は右側に傾いた。


「OK、これは僕の体の一部じゃないぞ」


 うん、絶対に僕の体の一部じゃない。

 後ろを向いていたせいで、左右を取り間違えたなんて馬鹿なことがあるわけないじゃないか。

 ハハハハハー。


 ――ビタタン、ビタン

 僕の笑いに合わせて、尻尾が床の上を何度も跳ねた。

 今の僕の心の中と一緒で、とっても嬉しそうだねー。


「……」


 はい、どうやら僕の一部のようです。



 それと、後ろを向いたときに尻尾以外にも、人間だったら見えたらいけないものが見えたんだよね。


 ……なんか、羽が背中から生えてた。

 それも、ドラゴンっぽい羽が。



 ……

 ……

 ……


「ああ、空が青いなー」


 とりあえず、僕が人間に転生しなかったことは確定。

 現実をしばらく受け入れられそうにないので、空を眺めてのんびり現実逃避することにした。


 でもさ、尻尾や翼がはえてるからって、前世の青黒い肌をしていた魔王に比べれば、まだマシかなー?

 マシなのかなー?

後書き



 いつものように思いつくまま、勢いとテケトウで執筆していきます~。

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