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プロローグ1

僕は夢を見た。

起きてもはっきりと覚えている。


――――――――――――――――


「そろそろ起きな、今日も仕事だよ!」

「ああ、分かってるよ!」

夢の余韻に浸っていた俺に大きな声が降ってくる。

名残惜しさを感じながらその少年はのっそりと起き上がり、まだ日の昇っていない空を窓から見上げながら身支度を初めた。


少年は簡単に着替え、顔を洗うとドタドタと音を立てながら部屋を出る。

一番端の部屋から出てきた少年は彼の部屋の物と同じようなドアがいくつも並んでいる廊下を走る。

「うるさいぞアン!」

「アンって呼ぶなっつってんだろ!アンドリューだ、アンドリューって呼べって!」

朝の早い時間に騒ぐ少年に苛立った男の声に叫び返しつつアンドリューと名乗った少年は廊下の突き当たりの階段をまたドタドタと下りる。


「アンドリュー、急いで野菜だけ準備しておくれ」

「分かったよ母さん、急いで終わらせる」

少年は慣れた手つきで包丁を扱い、野菜の下ごしらえを始めた。


場面は変わって昼下がり。

「アン、今日も手伝いご苦労さん、おかげで旨い酒が飲めるよ」

「うっせ、おっさんもこんな宿で昼間っから酒飲んでないで働いたらどうなんだ?」

「こらアンドリュー、こんなんでもお客だよ。言葉遣いに気を付けな」

「おうおう、女将さんも辛辣だなぁ」

彼の家は宿らしい。

「あ、アン!お前もうすぐ14の誕生日だったよな!なんか用意しとくからな!」

「期待せず待っとくよ、飲んだくれ!」

客と軽口を交わすとそのまま宿の玄関口から飛び出した。

「ホント口の減らないガキだな……」


――――――――――――――――


「なんだか妙に頭に残る夢だったなぁ……名前までハッキリ思い出せるし」

僕は通学路を進みながら呟く。

(映画とか、漫画とかで見るような木造の家だったなぁ……まぁいいか。切り替えて今日も学校頑張ろ)

さて僕の自己紹介をしとこう。

水川みなかわ はるか

女みたいな名前だがれっきとした17歳男子だ。

先週から高校2年になった。

友達はそこそこいるし、彼女だっていたこともある、今はいないけど。


「お、遥じゃん。おっはよ!」

校門のところで1人の女子が声をかけてくる。

三枝みえだ 卯月うづき

よくオタクの男子から三枝さいぐさと呼ばれるが三枝みえだだ。

ボブカットが似合う、僕が最近気になっている相手だ。

高校に入って1年の時隣の席になり仲良くなった相手だ。

明るい性格、そして何といっても笑顔が可愛い……

「何?寝ぼけてんの?」

「あ、ごめん、ボーっとしてた、おはよ」

「シャキッとしな、まぁ私も眠いんだけどね」

そういって卯月はニコっと笑う。


教室まで卯月と話しながら歩いていると今度は男子が声をかけてくる。

「卯月さん、おはよう!」

「おはよ伊吹君」

国沢くにさわ 伊吹いぶき

最近卯月に見え見えなほどアタックしているやつだ。

確かに顔はかっこいい、国沢のことを好きな女子も多いと聞く。

それは認めるがそのしつこさに卯月は若干引いているようだ。

僕の希望的観測かもしれないけど、卯月が素っ気ないのはそういう理由だと思う。


「伊吹って呼びすてでいいのに、まぁいいか。これからそう呼んでくれるのを待ってるよ」

こう言うことを平気で言うあたり好きになれないんだよなぁ。


少し並んで歩いて教室の前でふと国沢が立ち止まる。

「水川、今日放課後時間あるか?」

「ん?まぁ部活も休みだしいいけど」

僕も水川もバスケ部に入っている。

僕らは2人ともレギュラーだが国沢のほうが上手い、悔しいけど。

「でもなんで?」

いつもは卯月と一緒にいるからって話すことすら嫌そうにしているのに。

「ちょっとな、話がある。まぁその時話すさ。じゃあ卯月さん、またね!」

そういって国沢は自分のクラスの方へ小走りで去っていった。

「伊吹君、なんだろうね?」

「さあ……」

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