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勇者アルム復活す

---ミッドガズオルム城


 大陸の大国ミッドガズオルム。

 その巨城、魔王の侵略を退ける事数度。

 権威と権力の象徴たる城である。


 勇者アルムはその城内で国王と面会していた。


 「おお勇者アルムよ、死んでしまうとは情けない」


 「申し訳ありません陛下」


 「其方にもう一度機会を与えよう」


 「有難うございます。次こそは期待に応えて見せます!」




 厳かな雰囲気を身にまとうこの国の国王ホルスは柔和な笑みを見せる。

 

 「うむ、まあこのやり取りは形式的なものだ。そう気負うことは無いぞ勇者殿」


 と、目の前の若者を労った。


 国王は目の前の若者、勇者アルムを見る。

 数々の試練を潜り抜け精悍さを持つ青年に成長したが、まだ年は16歳。

 あどけなさも残るこの少年とも青年とも区別がつきかねる若者にどれだけの重責を負わせているのか。


 死の苦痛を味わって尚立ち向かおうとする孫程の年の勇者の勇気に国王はある種尊敬の念さえ覚えるのである。






 勇者アルムは"復活の儀"を済ませた。


 国王に片膝をついて頭を下げていたアルムは立ち上がる。

 ロボットのバリアーで傷ついた傷跡はどこにも無い。


 「油断して居たことは確かです。僕はどこか相手を見くびっておりました……次こそは奴等を駆逐します!」


 




 「いいえ、アルムは悪くありません、勇者をサポート出来なかった私達が悪かったんです!」


 王と勇者アルム、文官や兵士達しか居なかった玉座の間に勇者アルムの仲間達が現れた。

 

 勇者アルムの幼馴染であり魔王討伐の旅を共にする少女ミリア。

 彼女が現れた途端玉座の間の空気が和らいだ。



 「それは違うぞミリア。僕が一人で何とかできると判断したから一人で行ったんだ」

 

 「でも一人でいかなきゃならなかったのは私が食あたりで寝込んだからだし……」


 「俺達もついていくべきだったんだ」

 「すまない、勇者を補佐するのは仲間である我々の役目であったのに」


 ミリアの他に二人居た仲間達がフォローする。



 「いや、ミリアが心配だったから看病のための付き添いを頼んだのは僕だ。君達のせいじゃない」


 その場で「いや私が悪い」「僕の責任だ」と、過失の取り合いが始まりそうになったのを国王が止める。


 

 「もういい、済んだ事だ。しかし次こそはあの"日の丸の悪魔"を倒せるな? 近隣の街からは何時あの悪魔が襲ってくるかと不安の声が上がっているのだ」



 日の丸の悪魔。


 全身がダークグリーンの巨人、その巨大な魔法具の両肩には白い四角に太陽を思わせる赤い丸が映えた。 

 その印象的な意匠からエルフの国グリーンロウに突如現れた魔術師二人組が操る巨人は市井の人々には日の丸の悪魔と呼ばれ始めていた。



 凶悪無残。

 人面獣心。

 悪逆非道。

 人の皮を被ったモンスター。



 冒険者ギルドを突如として襲撃し冒険者が無残に惨殺された事件は街の人々を恐怖に陥れていたのだ。

 

 それだけではない。

 防衛戦力を担っていた冒険者ギルドが失われた事で街の外の怪物が我が物顔で跳梁跋扈し、街は見るも無残な地獄と化した。


 



 「各地では魔王の手下の討伐に加え新たな任務まで、アルム、おぬしには苦労を掛け済まぬな」


 「いいえ王様。勇者として、一人の人間として悪を見過ごす事は出来ません。僕は勇者の名に恥じぬよう全力を尽くすだけです」



 「それにアルムや街の人達が言っていた巨人も魔王の手下かもしれないわよね」

 「ああ、それは俺も気になっていた。今まで魔物が人間の金貨を盗むなど聞いたことも無いが……」

 「さりとてただの人間でも無いでしょう、冒険者ギルドの猛者数十人をたった二人で皆殺しにしたのですから」


 「いずれにせよ、私達4人が力を合わせれば楽勝よ!」


 「「「おおっ!」」」



 勇者アルム。

 戦士ミリア。

 賢者ダリウム。

 魔物使いナリナン。


 4人の冒険者達は魔王討伐の命を受けこのミッドガズオルム大陸の様々な強敵を討伐してきた猛者であった。


 その4人が力を合わせればどんな強敵でも倒せぬ敵は居ない。

 

 「冒険者ギルドの仕事としてではなく、ミッドガズオルム王として命ずる。勇者アルムよ、謎の巨人"日の丸の悪魔"を征伐して参れ」



 「はい、お任せ下さい」


 勇者アルムを先頭に4人は縦列じゅうれつとなって玉座の間を出発した。



 ザッザッザ。


 勇者達が階段を下りる音を聞きながら国王は確信する。

 あの者達ならあの日の丸の悪魔を倒してくれると。


 「頼むぞ勇者よ、この世界の闇をお前が拭い去ってくれると信じているぞ」




 こうして、正式に国家の敵となった鈴木宇田とキャットは異世界において冒険者達と"勇者のパーティー"に討伐対象としてつけ狙われる身となるのであった。


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