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姫を汚す


 「ふふふ、まさかこの部屋が俺の物になるとはなぁ」


 豪華なベッドに家具。

 魔法か何かで灯りつけているのだろうか、蝋燭の火とは違うぼんやりとした光りが部屋を薄暗く照らしていた。

 田舎みたいな小国とはいえ、王族の寝室はそれなりに立派だった。

 地球の物とは若干勝手が違うが家具や内装も洋風に近い。



 勝利の将軍が敗戦国の施設を接収するのは世の常である。

 俺はエルフ達を制圧後、この小さな国の王女の寝室でくつろいでいた。

 

 そして俺の前には敗軍の将と言うには可愛らし過ぎる少女が居た。



 「待たせたなニーナ姫」


 「……はい、お待ちしていました勇者様」


 今日は大変な一日だった。

 ドラゴンを倒し、仲間を殺され、恩知らずな未開の部族を制圧した。


 なので俺は疲れを癒すため、王女を寝室に待たせ、異世界の風呂を借りてリフレッシュしてきたのだ。


 今、この場には湯上りの俺とニーナ姫しか居ない。



 「そうだ、俺は勇者だ。地球と言う場所からお前達を助けに来てやったんだ、偉いんだぞ」


 「はい、その通りです……」


 「それなのになんだ? お前達野蛮なエルフは俺の部下……仲間の一人を殺し、あまつさえ俺ともう一人も殺そうとした」


 「大変申し訳ありませんでしダ、本当に申し訳なく思っておりmます」


 どうも翻訳機の調子が悪いな。

 耳掛けタイプはロボットに搭載している物よりも性能が悪い。




 「まぁいい。成敗は済んだ、それにニーナ姫、お前は最初から俺達に好意的だったし最後まで戦いに反対していたしな。お前は悪くない、お前だけは助けてやろう」


 「あ、有難うございます……勇者様の寛大なるご処置、感謝に堪えません……しかし出来れば私の父も――」


 「だがな、この国の国王、あれはダメだ」


 「お、お父様は、国王は勇者様に対する認識を間違っていたのです、至らなかった点は私も謝罪いたします」


 「お前の父親である国王は大臣と同調し積極的に俺達を殺そうとした、大臣達にそそのかされたと言い訳していたが戦いが終わった後に言っても俺は聞く耳を持たない。一番責任が重いのは国王だ」



 ちなみに国王は城近くにあるこの国唯一の牢屋に幽閉してある。



 「勇者様お願いします、お父様も許してあげてください」


 「ダメだ、奴は死刑だ。この勇者を殺そうとしたのだからな」




 「お願いします、私に出来る事ならなんでもしますから!」


 「ん? 何でも? 何でもするって言ったのか?」


 「はい」


 「じゃあ、傷ついた俺の心をニーナに癒してもらおうかなあ」



 俺は猫なで声で語りかけ、その少女の華奢な肩に手をかける。

 ブロンドの長い髪に白い肌、まさしくお姫様だ。

 部下のキャットもなかなかの美人だが、このエルフの姫ニーナからは育ちから出る気品が備わっている。

 実は一目見た時から心を奪われていたのだ。



 「は、はい喜んで。ではどうすれば」


 「……お前を抱かせてもらおうかな」


 「はい」


 ニーナは両手を広げて抱擁してきた。

 ……俺はニーナに抱かれた、ハグされた。

 

 「……あのさ」


 「あ、すいません私が勇者様に抱かれるのでしたね。ではどうぞ」ニーナは両手を開く。


 天然ボケである。

 




 「そういう意味じゃねーよ。子供じゃないんだ、分かるだろう?」


 「あの、私……○×▼は知識では知っているのですが実際には……」


 「知らないから何なんだよ!? 俺の心がどうなってもいいのか?」


 「いえ、そんな事はありません……でも……」


 「こりゃ国王に責任を取ってもらう他ないな」


 「!!?? ……や、やります、やらせてください」


 「そうか、じゃあ脱いでからベッドに横になれ」


 「え、ぬ、脱ぐのですか?」


 「脱がないと出来ないだろう、それとも俺が手伝ってやろうか」


 「自分で出来ます、うぅ……」


 エルフの国のお姫様はゆっくりと身に着けていたドレスを脱ぐ。

 純白のドレスが除かれた後にはまた白い肌が覗いた。

 

 今日初めて知り合った美少女とその日の内にベッドインである。

 無茶苦茶興奮する。


 姫は顔を赤らめ、羞恥に震える手で自分の下着に手を掛け自らぎ取り、一糸まとわない体になる。


 「ぬ、脱ぎました」


 「じゃあ横になって」

 

 ニーナがベッドに横たわる。

 不安そうな表情で俺を見つめ、体が硬くこわばっているのが傍目からも分かる。


 負い目があるとは言え自分の体を差し出す事を決断した高潔さは見上げたものだ。

 この姫だけはまともなのかもしれない。




 「ふふふ、俺達がもっと親密になればこの国にとって良い事だと思うぞ」

 「は、はい……勇者様、宜しくお願い致します」


 「この金塊も、そして姫、お前も……」俺は戦利品の金塊を手に取って眺める。


 もう俺の物だ。

 そう言おうとして、俺は固まった。


 ん?

 んん?


 目の前の鉱物に俺は強い疑問を持った。

 

 これ、金じゃない。

 限りなく金に近いけど金じゃないかも。

 美しすぎるのだ。


 「ちょ、ちょっと待ってね姫」

 

 俺は携帯式鉱石鑑定機を取り出して鉱物を入れた。


 ……これ、やっぱり金じゃない。

 金に似た何かだ。


 金の元素記号はAuである。

 鑑定機によるとこの鉱物は判別不能であった。

 

 「嘘だろ!?」

 「あ、あの。勇者様?」


 俺は姫を放って次から次へと片っ端から金塊の鑑定に明け暮れた。

 結果……


 ほぼ全て、9割以上の鉱物が金では無い事が分かった。


 

 「まじかよ……」


 全身から力が抜けていく。

 部下を死なせてまで手に入れた金がただの未知の鉱物だったなんて……


 いや、未知の鉱物という時点で大発見なのだ。

 地球に持ち帰れば研究対象として莫大な価値を持つだろう。


 だがしかし、金に換える目的には使えない。

 未知の鉱物を仮に地球に持って帰って換金しようとした場合、あっという間にお縄になってしまう。


 異世界からこっそり地球に持ち帰って金に換えるには金がベストなのだ。


 幸い、幾ばくかの金はある。

 だが、これでは足りない……



 「いやまだだ、まだ何とかなる」


 いや、落胆するにはまだ早い。

 この世界には金がある事は分かったのだ。

 そして、俺にはそれを掘るだけの人的資源がある。

 エルフ奴隷という格好の人手が。


 

 「ニーナ姫、良いことを思いついたぞ。この国が俺に謝罪する方法をな」

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