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三択

活動報告の方に本来16話になるはずだったマネーロンダリング回を入れました。

興味がある方はご覧ください。




 「あのー先輩」


 「……」


 「先輩」


 「……」


 「先輩ったら返事するっす!」


 「……」


 「社長」


 「何だ?」


 「……その肩書気に入ってるんすね……」


 「まぁな」


 「会社名も鈴木カンパニーっすもんね」


 「俺が創業者だからな」


 「名刺とかすげー喜んで作ったし。嬉しかったんすね」


 「別にいいだろ! 男は誰しも社長になりたいもんなんだよっ。お前だって取締役にしてやったじゃん」

 

 「先輩の言うマネーモンダミングで活動実態のない会社を作っただけじゃないっすか。本当の社長じゃないっす」


 「マネーロンダリングな。俺は国に認められた本当の社長だしお前は常務取締役だよ。ちゃんと登記してるからな」


 まぁ行政に届け出た活動実態とは"ちょっと"違う事を仕事にしている事は内緒だが。


 俺達は異世界から地球に持ち帰った金を地球で使える金に変換するために会社を作った。

 出所の妖しい金を綺麗なお金に変える必要があったからだ。


 そして、俺やキャットは勤めていた会社を辞めた。

 新しい会社を立ち上げ、そこに資金をプールした。

 今では俺達は高給取りの経営者という立場になっている。



 



 そして、俺達は職場である異世界で過ごす事が多くなった。






 「かゆい所はございませんか? 鈴木様」


 エルフの姫、ニーナが俺の背中をスポンジで擦る。

 熱い湯が背を流れるのを感じる。




 「うむ、気持ちいいぞ」


 「それは良かったです」





 「先輩、あのー!」


 「何だよキャット、いまいい所なんだ」


 「ここ風呂場っすよね?」


 「そうだな、王族専用の浴室だ」


 「広くていいっすね」


 「だろ? ドワーフを雇って改装させたんだ。旅館の温泉並みの広さはあるぞ」


 「で……でですねぇ」


 「うん」


 「自分、今使ってますよね」


 「ああ、お前にも使う権利があるからな。俺の部下のお前も王族扱いだ」


 「……おいコラ! 寝ぼけんなよおっさん!」


 「な、なんだその言いぐさは! 俺は社長だぞ!」


 「何で自分が入ってるのに先輩も入ってるんすか!? しかもお姫さんまで!」


 「ニーナ、説明してやれ」


 「はい、キャット様。それは宇田様がこの国の宰相だからです、そ、そして私は、宇田様の奴隷だからです……」


 「開いた口がふさがらないっす。おっさんの欲望丸出しっす」


 「ふふふ、どうだ。お前が知らない間に姫も随分と従順になっただろう?」


 「宇田様はこの国に無くてはならない御方です、その御方に全てを差し出すのは王家として当然の行いだと私は考えます」


 「自分と先輩が一緒に風呂に入る理由の説明になってないんすけど」


 「そりゃお前あれだ。お前は俺の部下だろ、つまり宰相の部下だ。ただの部下が宰相と一緒に風呂に入れるんだ、むしろ有難く思え」


 「自分、上がるっす」


 キャットは手で胸とあそこを隠しながら立った。


 

 「ちょい待てぃ!」


 「なんすか」


 「こないだのお礼、まだなんだけど」

 

 「うぅ、覚えてたんすか」


 

 「さぁ、こっちへ来い」

 

 俺はキャットを抱き寄せて正面に据える。

 二つの大きな物が湯にデデンと浮かんでいた。

 凄い、浮力って凄い。


 


 「一発やらせろって言われるかと思ったっす」


 「ふ、ふふ。俺もさすがにそこまで厚顔無恥じゃない」


 「おっぱい揉むのはアリなんすか……」


 「俺もダメ元で言ってみたんだ」



 「あ、あのですねぇ。命の恩人ってだけでこんな事許すと思うんすか?」


 「んん?」


 「あ、いやいいっす。何でもないっす」



 では……


 「ふおお!」


 俺は、両手を大きな物体に合わせ、揉みまくった。


 グニグニ

 モミモミ

  

 「しゅごいっ! お○ぱいって凄い!」


 「あんたよくそこまで品性を捨てれますね!」


 「ここは日本じゃない、異世界だ。そして俺はこの国のトップだ! フリーダムワールドで俺は自由になるっ! 何人も俺の前を遮る者は許さないのだ!」








 「流石余の見込んだ男だ」


 何時の間にか、浴槽の隅っこに誰かが居た。

 誰もいるはずの無い場所に人がいる、それは予想以上に俺を驚かせた。



 「うおおおお! ビビッタァ!」


 俺は心臓が止まりそうになった。

 エロ動画に集中していたら何時の間にか部屋に入ってきた母親に話しかけられて気が付いた気分だ。



 「誰っすかあんた」

 

 「うむ。余がこの世界の大魔王メリクリウス3世だ」


 「メリ……クリスマス……?」


 「6文字の名前を間違えるなよ」俺はキャットの頭を軽く叩いた。


 

 「ちょっと日本語に慣れてないだけっす。自分アメリカ人なんで」


 「生まれも育ちも日本だろうが」


 「あい……あいむ……アッメーリカ」


 「中学一年生程度の英語も使えんのか」




 

 「我が夫よ、面白い側室を持っておるのだな」


 「へっ? 何言ってるんだお前」


 「先日約束したではないか」


 「何をぉ?」


 「余と契りを交わし、夫となって魔王軍を支えてくれると」


 「本当にぃ? そんな約束本当にしたぁ?」



 「先輩てめー! 人のおっぱい揉んでおいて他でそんな約束を!?」


 「いや、約束したのはただ○ンだけだ。夫になるとは結婚するとかそんな話はしていない」


 「鈴木宇田よ、一つ聞きたいのだが」


 「何だ」


 「地球人と言うのは結婚もしない相手とも交尾をするのか?」


 「……う、うーん……」


 「嘆かわしい事だな、風紀が乱れている」


 いきなり他人の家に侵入して風呂に入ってる奴に言われたくないが、一理あると思った。

 でもまさか交尾しようと言い出す女からそんな常識が飛び出してくるとも思わなかった。

 


 「ところであんた! どっから入ってきたっすか、不法侵入っすよ」


 「余が自分を宇田の場所へ転送しただけだ、転送魔法は余の得意とするところであるのでな」


 「そういえばそんな事言ってたな」

 

 「しかし、丁度良いところに来た。お互い着物を纏わぬ状態、交尾をするのに丁度良い。さぁ、余と悦楽の契りを交わそうぞ」


 大魔王メリクリウスは俺の方へ湯を掻き分けて寄ってくる。

 近づいてくるにつれ、彼女の体が露になる。

 豊満なキャットの体も良いが、均整の取れたメリクリウスのカラダも素晴らしい。

 

 俺の交感神経が刺激され、心拍数が上昇し、発汗作用が強くなる。

 要するにメリクリウスの体を見て興奮してきた。


 

 「ちょっとぉ! 先輩こいつどーするんすか」


 「え?」


 「え?って……まさかあんた……」


 「いやぁ、約束破るのって良くないよね?」


 「うむ、一旦交わされた契約は履行するのが世のならいだぞ」


 役得である。

 金が手に入り、良い女も寄ってきた。

 まさに俺の人生の全盛期なのではないだろうか。

 

 「余はもうお前の物だ、メリクルと呼ぶが良い」

 

 据え膳食わぬは男の恥よ。

 メリクルの腰を抱き、引き寄せる。

 びっくりするぐらい軽く、柔らかかった。


 大魔王がどうかはちょっと疑わしい。

 確かに勇者達とは違う力を持っているようだが、本当はただのメンヘラかもしれないし。

 しかし、例え頭が逝っちゃってる少女だろうが本当の大魔王だろうが今はどうでもよかった。


 可愛い子が自分から迫ってきているのだ。

 今、拒む理由は無い。


 「余を愛するがいい、余もお前も愛そう」


 メリクルは俺に抱き着き、俺もメリクルの頭を抱いて引き寄せた。




 「いやいやいやいやこの場でおっぱじめるなアホ!」

 

 キャットが割って入ってきて、俺達を無理やり引き剥がす。




 「宇田よ、さっきからこの女は何だ? 無礼ではないか、追い出すがよい」


 「この泥棒猫! 先輩を横取りするな!」


 キャットはメリクルの首を引っ張って完全に俺から引き剥がした。


 「グッ、グググ。き、貴様っ」


 「ふてぇ野郎っす! 先輩には自分が先に唾つけてたっす、横取りは許さんっす!」


 「許さん! 下郎がっ!」


 「キィ!」


 キャットファイトが始まる。

 バシャバシャと湯を打ち立て、飛沫が飛び散る。


 うーん。

 俺の体を二人の美少女が取りあう。

 実に良い光景だ。


 


 「この、野蛮人が!」

 「腐れビッチ! どっか行けっす」


 ……しかし、このメリクルという女は何者なのだろう。

 大魔王と名乗ってたから強いのかと思えば、そうでもないみたいだ。


 基本スーツを着てないキャットとそんなに変わらんぞ。

 むしろ、体格差からくる力の差で若干押され気味だ。



 

 「あ、暑……こんな場所でこれ以上激しい運動したらぶっ倒れるっす」


 先に手を引いたのはキャットだった。


 「ふ、ふふ! 諦めたな、余の勝ちだ!」


 勝ち誇るメリクル。


 「そんなわけねーっす。ここは先輩に決めさせるっす」


 突然俺に振ってきた。


 「お、俺ぇ?」



 「どうするんすか。訳の分からない不法侵入者のビッチと、可愛い部下のキャットちゃん、先輩が選ぶっす!」


 「それは妙案だな。勿論余が選ばれるに違いないが」


 二人は左右に分かれて俺を直視する。

 右の湯に進めばキャット、左に進めばメリクル。


 

 「さぁ、こちらへ来るのだ」


 「こっちっすよ」


 「あ、あの……ご主人様。私の方にも……」


 ニーナも完全に裸になって俺を誘っていた。


 

 三択になった。




 う、うーん。

 これは困ったぞ。

 

 ジーっと三人が見つめてくる。

 

 4pとか興味ない?

 と聞いてみたいが、とてもそんな発言が許されそうな空気では無い。


 やはり、ここはキャットだろうか。

 誰が良いという意味ではなく、誰を選べば一番俺のダメージが少ないか、だ。

 

 ニーナは既に精神的な支配下に置いている。

 王を軟禁し、国民が人質のようなものだ。

 それに、最近この国は銀行強盗特需で潤っている。

 加えて俺は命の恩人だ、清純で義理堅いニーナは色んな意味で俺に依存し始めている。


 だから、この場で断ったとしても大したダメージにはならない。


 メリクリウス。

 そもそもこいつは訳が分からない。

 正体不明だ。


 自分の事を大魔王だとか言う不思議ちゃんだ。

 しかし、あんまり敵になりそうな雰囲気は無い。

 こいつもある意味安全だ。



 キャット。

 こいつは面倒くさい。

 アメリカ人女性らしく嫉妬深い。

 男女同権とか言いながら同じシャワーを浴びるとセクハラだとかぬかしやがる。


 裸を見られてビービー言う癖にボディタッチはノリ次第でOKだったりする。

 ぶっちゃけどこに地雷が埋まっているか分からん。


 そして、今は俺の右腕だ。

 実務で使える女だ。

 頭はパーだが探索機の操縦はまぁまぁだ。

 

 だから他の二人と違って怒らせると不味いのだ。


 

 しかし、それだけではない。



 プカーン


 プカーン



 浮いているのだ、アレが。

 二つの大きな物体。

 俺はアレに木星ジュピターというニックネームを付けている。

 

 二つの木星は俺を誘っていた。

 木星の巨大な質量は重力を持っていた。

 重力に魂を引かれた俺は自然と木星へ向かい始めていた。


 あそこに行けば、俺は"木星帰りの男"になれる。

 

 湯に浸かり過ぎてのぼせかけていた俺はそんな事を考えていた。


 


 



 「さぁ、こっちに来るっす」


 フラフラフラフラ、俺はゆっくりとキャットの方に進む。


 「それで本当に良いのか? 我が夫よ……」


 殺気。

 見ると、メリクルの目が怪しく光っていた。


 「余はこの世界の王ぞ……その余を愚弄するのであれば……」


 なんだか今までと雰囲気が違う。

 とても怒っているようだ。



 その時である。


 「ひ、姫様! ニーナ姫様! 外に、外に! た、大変でございますぅ~~~~~!」


 侍女が浴室に駆け込んできた。


 「何事ですか? 今、大切なところなのです」


 「申し訳ありません、しかし……しかし大変なのです! このグリーンロウに、迷いの森の結界があるこの国にモンスターが突然現れて!」


 侍女はスゥハァと呼吸を整えて続ける。


 「モンスターがこの国を包囲しているのでございますぅぅ!」


 「そ、そんな!? 空を飛ぶモンスター以外はここ数百年はほとんど現れる事は無かったのに、一体どうして」




 「余の力の一端、見るが良いぞ」



 メリクルは目を赤く光らせて不敵に嗤う。


 うーん。

 どうやらこいつの仕業らしい。


 俺は耳に掛けていた翻訳機兼端末を視覚モードに切り替え、

 国の上空を旋回させている空撮ドローンの視界を共有した。


 空を飛んでいるドローンカメラの映像が俺の網膜に移り込む。

 浴室からでも、外の様子を見る事が出来るのだ。

 ドローンとつながっている限り、どこに居ようがドローンのカメラ範囲内の視界は確保出来る。


 そして俺は発見した。

 この国を囲っている周囲の"迷いの森"

 その深く暗い森から現れる多数の異形の存在達を。


 巨大な獣のような怪物、

 一つ目の巨人、

 ライオンだか蛇だかが合体したようなキメラっぽいの、

 緑色の体をし、牙を生やした人型の化け物。

 ゲームに出てくるスライムみたいな形をしたでかい奴。


 それ以外にも雑多な種類の大小数千はいそうなモンスターの集団がこの小さな国をぐるりと囲み、徐々にその範囲を狭めて来ていた。


 これ以上進軍してくればひとたまりもあるまい。


 



 「げぇ! こ、こりゃぁ偉いこっちゃ」


 俺は急いでメリクルの方へ行った。

 

 「おいメリクル、あいつらはお前の手下か?」


 「そうだ、フフフ。余の力を思い知ったか。余は大魔王、強力なモンスターを配下にもっておる」


 「今すぐあいつらを退け」


 「余に恐れをなしたか? なれば――」


 「そうじゃねーよ、この国の周囲に自動砲台を敷き詰めてるんだ。これ以上モンスターなんかがこの国に近づいたら自動砲台に蜂の巣にされるぞ!! お前の部下、全員死んじまうぞ」


 「え、え?」


 メリクルはキョトンとした顔をしていた。



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