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ほろ苦いハロウィン

作者: 恋音

「ハロウィンパーティー行かへん?」

友達に誘われ、軽い気持ちで行くことになった。乗り気ではなかった。でも、他にすることもないし、とりあえず行くことにした。期待はしていなかった。彼に会うまでは。


背が高くてサッカー選手みたいだった。イケメン社会人って感じだった。大人な男性が好みの私は、気づいた瞬間にはもう話しかけていた。「写真いいですか?」友達に撮ってもらったこの写真は、今でも私の宝物だ。ここで終わりたくない、終わらせたくない。「写真送りたいけんLINE教えてくれませんか?」と言うと、快く教えてくれた。しつこすぎてもダメだと思って、一旦彼のもとを離れた。


「那奈にはあのイケメンおるから、私そろそろ帰ろっかな」そう言って友達は帰ろうとした。待って、と言った時にはもう遅く、私は1人その場に残ることにした。ポツンと1人たたずんでいると、「さっきの子やんな?」と話しかけられた。彼だった。「けん、て言うてたから九州の子?」「はい」普段はおしゃべりな私も、こんな素敵な男性の前では一言返すので精一杯だ。話しこむうちに、彼が実は私より1歳年上の大学生であること、彼の父親の出身地が私と同じ長崎であること、彼も私と一緒で大学で英語を学んでいることなどが分かり、一気に親近感がわいた。ずっと一緒にいたいと思った。


朝まで2人で話し込んだ。パーティー会場はもう人も少なくなっていた。赤ずきんのコスプレ姿のまま、私は彼と一緒に帰った。彼の優しさに包まれた。幸せだった。「また俺と会ってくれる?」「うん」


1週間後、また彼と会うことになった。その次の週も、そのまた次の週も。彼の愛に包まれた。幸せだった。3回目のデートで告白ってよく言うよね?そう思った私は、このまま友達以上恋人未満の関係になることが怖くて、そっと彼に言った。「那奈のこと好き?」彼はすかさず答えた。「どういう意味で?」泣きそうになった。彼は続けた。「友達としては好きやで。」私は全てを受け入れた。


それからも私たちは毎週会い続けた。70年代の洋楽が大好きな彼は、色んなお気に入りの曲を聴かせてくれた。2人で映画も観た。料理も作ってくれた。


クリスマスにはワッフルを買ってきてくれた。2人でモグモグ。こんな幸せがいつまでも続けばいいのに。そう思った。「これで今年会うのは最後やな、早いな」「うん」


その後年明けまで私は実家のある長崎に帰っていた。「長崎どう?」帰省してすぐに彼はLINEしてくれた。幸せを噛み締めた。毎日LINEしてた。でも年末のある日、突然返信が来なくなった。きっと、忙しいんだろう。年が明けた。明けましておめでとうの一言もなかった。寂しかった。


「大阪に戻ってきたよ!」また既読無視だ。どうしたんだろう。「ねぇ、何で返事してくれんと?」すると、彼から電話がかかってきた。「もしもし、ずっと言おうと思ってたんやけど、俺、年末に好きな人できてん」…悔しかった。悲しかった。私が帰省していた間に、彼のそばにいれなかった間に…。そういえば彼は年末、同窓会に行くとのことだった。同級生と燃え上がったのだろう。私の知らない彼をいっぱい知っていて、一緒にいると落ち着けるような、そんな子がいたのだろう。


「俺、この映画好きやねん!」そう言って2人でレンタルビデオ屋で借りたDVD。あれはもう1ヵ月前のことか。酔っ払って眠くて結局あの時は観なかった。2人で観なかったし、もう2人で観ることなどないだろう。1人ぼっちになった私。学校の帰り道に寄ったレンタルビデオ屋でふと、そのDVDを見つけた。観始めて5分で観るのをやめた。悲しすぎた。1人で観るのは。だから2人で観よう。その彼と?いえ、これから出会う人と。私のそばにずっといてくれる人と。何があっても、どこにも行かない人と。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  少ない望みにかけた女性の意気込みはすごいです。 [一言]  初めから正気はなかったのかもしれません。心変わりしない異性を見つけられる確率は、ほぼゼロといってもいいと思います。
2016/01/08 07:27 退会済み
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